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遊園地

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遊園地が好きなんだ、とても。
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彼女はサヨナラの寂寞を知った、消えゆく遊園地の物語

「次は、豊島園。豊島園です」  黄色の電車にガタンゴトンと揺られ、小さな駅のホームに到着した。窓の外には、ポップなエントランスがもう見えている。  ピッ、とSuicaをかざして改札を抜ける。そのまま歩いていくと、半袖のブラウスにショートパンツ姿のフミが待っているのが見えた。フミ、と声をかけると彼女の丸い目がこっちを向き、大きく微笑んだ。 「ユイ!おはよう!」  手を振って駆け寄ってくるフミに「おはよう!待った?」と聞くと、「ううん、さっき着いたばっかり!」と明るく答える

遊園地と芸術 体験型アートの可能性を考える

白馬の背から、絵画を見る。 *** 遊園地の非日常感は、大人の心さえも捉えて離さない。それは大きな観覧車やジェットコースター、回るティーカップに園内を走る列車。 そして、大人になって訪れる遊園地は子どもの頃にはなかった感傷を呼びおこす。 古びた写真の向こう側、まだ小さかったあの日の追想。 遊具やアトラクションは、その見た目からもテーマパークの世界観を演出している。 カラフル、ファンシー、ファンタジック。デザインが芸術の域まで達したものもある。 東京都の遊園地・としまえん

子供は「おしまい」の寂しさを知った、屋上遊園地の物語

デパートで買い物、なんて言葉さえもレトロに感じてしまう。 これは、在りし日の話。 5、6歳くらいのことだったろうか。 休日に、両親や祖父母がデパートへ連れて行ってくれた。 郊外。よく晴れた日。 祖母はいつも、苺と生クリームのサンドイッチをおやつに買ってくれた。それは私にとって、特別な一日の始まりだった。 買い物よりも遊びのほうが楽しくて仕方ない。そんな子供の私が、屋上へ向かうときのワクワクする気持ちは今もよく思い出せる。 町の公園にはない、大きくてカラフルなアスレチック