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編集者と、読者の力。たった一人のあなたへ

本、とてもよかったです……!
中にはもちろんシリアスなトピックも出てくるのですが、暗いトーンではなく、徳さんのやさしく、真摯な文章がとても響きました。

「母親」や「家族」といった、一見みんな共通のイメージがありそうな大きく言葉が、一つひとつの小さな物語を通じて、解体されていきました。小さな物語を知ることで、救われるような思いを抱く人もきっといるのではないかと感じました(ぼくもその一人です)。

これは、徳さんがそれぞれの物語を一人の書き手として、女性として、母として受け止め、拾い上げ、丁寧に書いたことで読み手に深く伝わるのだと思います(徳さんの受け止める力はものすごいです!)。

日常は尊い一方で脆くて、家族・女性は強くもあり弱くもあり、大切な人は突然いなくなることもある(翠さんのパート、泣けました……)。
本書に登場する方々には、それぞれの幸せや喜び、悩みがあり、それぞれの日常や人生を生きていて、それでも、知らない人の物語だとしても感情移入できるというか、決して他人事に思えないのは、徳さんの文章がなせるものなのでしょう。

母や家族を考えることで、必然的に男性が考えなければいけないことも浮かび上がってくるので、男性にも届くといいなあと思います。

これは、発売されたばかりの自著『それでも、母になる 生理のない私に子どもができて考えた家族のこと』を読んでくれた佐藤くんがくれたメッセージ(※本人に許可を得て掲載しています)。

この言葉が届いた時、私は比喩ではなく、ちょっと泣いた。嬉しくて。ほっとして。プルーフ版を読んでもらったので、第三者から届いたほぼ初めての感想で、発売前で不安だったからこそ、なおさら。その後も何度も繰り返し読んで、著者としての私の心の支えになっている。同時に、自分が伝えたかったことや書いていきたいことが明確にもなった。

佐藤くんは講談社「現代ビジネス」時代の同僚で、記事・本をヒットに導く編集者でもある。編集者の気質とセンスを持ちながら、静かに情熱を燃やし続け、淡々と努力を重ねる佐藤くんの仕事ぶりはこれまでも尊敬の眼差しで見ていたけれど、改めて、コンテンツの力を信じ、言葉の力で著者の心を動かし書かせる編集者としての腕前を垣間見た気もした。

佐藤くんは「丁寧に届けていきましょう」と本書の転載や新しい記事の執筆に、編集者として伴走してくれている。ああ、心強い。

ものを書く人間にとって、編集者の存在は欠かせない。私自身も編集者として本や記事の編集をしているけれど、自分が著者という立場になってみて、その存在の大きさをひしひしと感じた。

この本も担当編集者であるポプラ社の木村やえさんがいなかったら、こうしてかたちになることはなかっただろう。

この本のはじまりは、2年以上前に遡る。前職を離れた5日後に妊娠が発覚したので、“人生の夏休み”だと思って、フリーランスとしてゆるやかに仕事をしつつも、割と自由な時間を過ごしていた私。悪阻を経て安定期に入った頃、自分の身体の事情と妊娠についてハフポストで書いた記事をきっかけに、「母になること、家族をつくること」をテーマに、身近にいる人たちに話を聞いて書きたいと思った。

身重で旅行に行けないという事情はあったにせよ、人生の夏休みとも言える時期に、人に話を聞いて書きたいと思う私は、本当にこの仕事をしていてよかったと思う。

自分自身が知りたい、聞きたい、書きたいと思ったことを、もともとつながりのあった木村さんに相談したところ、乗ってくれて、本としてまとめていけることになった。実績のない無名の書き手である私にチャンスをくれた木村さんとポプラ社には感謝しかない。

いつか本にまとめることは心の片隅で意識しつつも、当時の私は、自身の知りたいをスタート地点に、友人たちに話を聞いて、心を動かされ書きたい衝動に駆られてキーボードを叩く……と純粋な動機に突き動かされていたように思う。半ば勢いで、10万字近い原稿を書き上げていた。

初稿を書き上げ、娘を産んで、木村さんとのやりとりを重ね、いよいよ本としてかたちになることが現実味を帯びてきたとき、私はふと、恐怖を感じた。私の未熟な考えを本として残す価値があるのだろうか。白黒はっきり言い切れない曖昧で複雑で、変化し続ける私や友人たちの、人生や家族のかたちについて書いていくことは、なんと恐れ多いことなのだろう、と。こ、こわい。突然及び腰に。

ここまできたらかたちにしたいと前に進む気持ちとは裏腹に、心を覆ったそんな感情を素直に木村さんに伝えたことがあった。

「それは怖いことですよ。未熟でも不完全でも、現時点での徳さんの考えを書き切ってください。そこに価値があるんです」

木村さんは、揺れる私の感情を受け止めてくれて、価値があると言い切ってくれて、美味しいランチをご馳走してくれて、励ましてくれた。まだかたちになっていないものを「読みたい」と心待ちにしてくれる、書くこと自体を「価値がある」と認めてくれる、その存在にどれだけ支えられたか。

木村さんの一言で、覚悟のようなものを決めた私は、書き切って、無事、校了を迎えることができた。

奇しくも32歳の誕生日に、出来上がった本と対面した時は、やっと会えたとぎゅっと抱きしめたいほどの喜びと、ちゃんと届けていけるだろうかと不安と緊張が押し寄せて、気持ちが昂ぶった(お産の方が感情の揺れが激しかったけれど感覚はちょっと似てるかも)。

発売から3日。私のもとに、手に取ってくださった方、さっそく読んでくださった方からの言葉が届き始めている。そしてそれは、書き上げた時の怖さを木村さんが、世に出る前の不安を佐藤くんが、溶かしてくれたように、私に「書いてよかった」と心から思わせてくれている。

不安や怖さがありながらも、本のかたちになって読み返した時、私はこの本を自分にとって大切な人たちに届けたいと思った。読んでもらいたいと思う人の顔が浮かんだ。かけがえのない人たちに宛てた手紙のようなこの本を受け取ってくれる人がいることが、この上なく嬉しい。

本書には統計もほとんど出てこない。だけど、実際に生きている人たちのエピソードから、様々な家族のかたちがあり得るということを、僕たちは確信すると思う。

書籍編集を担当させてもらった慎泰俊さんが書いてくれたnote。慎さんは本をつくる仕事を通じて、またダボスの若手コミュニティ(Global Sheapers)に誘ってくれるなど、未熟すぎる20代の私の世界を広げてくれた一人。慎さんと出会えたことは私にとってかけがえのないものだと改めて思った。ちなみに慎さんは、民間版の世界銀行を目指す「五常・アンド・カンパニー」の経営者であり、児童養護施設のこどもたちや難民など国内外の機会平等における貧困をなくすための活動を行うLiving in Peaceの創設者でもあり、骨太で誠実な名著を残す著者でもある。知性、志と情熱、行動力、人間性、どれも圧倒的で、日本の歴史に名を刻む人になるだろうと、私は本気で思っている。

煽りもなく、盛りも力みもなく、徳さんの誠実なお人柄がそのまま出たような、とても誠実な「はじめに」でした。

出版ライター業界では知らない人はいない、私も勝手に大尊敬、後に続くものを希望の光で照らしてくれるライターの佐藤友美(さとゆみ)さんが「はじめに」を読んで感想を書いてくださっていていた!胸高まる。

SUSONOのトークイベントに参加してくださった方がその日に本を購入して読んでくれた!「今年読んだ中でNO.1」だなんて…!涙 男性に読んでもらえるのも嬉しい。さっそくAmazonにも星5つのレビューが!涙

「3回泣いた」と熱いメッセージをくれた友人の税所篤快くんは、友人に勧め、かつ近所の名物書店の店長さんに本を渡し営業に行ってくれたそう(感激)。イベント企画も企んでくれていて、情熱の火を灯したあつくんの行動力にはいつも驚かされる(最高)。

発売日に、打ち合わせと称して会って3時間ほどおしゃべりをしていた(笑)、『嫌われる勇気』や『君たちはどう生きるか』などミリオンセラーを連発している編集者・柿内芳文さんには、「じわじわと広がっていく、古びない本だから、初速にとらわれないように」と背中を押してもらった。まだゲラになる前の原稿を読んでもらっていて、柿内さんが「面白い!」と言ってくれたことも支えになっていた。

こんなふうに書き出したらきりがないけれど(それはまた追って)、大切な人や尊敬する人、本を通じて出会った方々が、直接会って、Twitterやメッセージで、伝えてくれる感想に笑みが溢れ、心が踊り、何度も読み返し思い返している。本当に、ありがとうございます。

ハフポストのコラムでも書いたように、私は「家族」や「母」といった普遍的なテーマの、大きな言葉の内側に隠れた小さな物語、「たった一人」の声に耳を傾けて書いていきたいと思っている。

それは同時に、「たった一人」の読者に届けていきたいという思いでもある。読者の数は部数として数字でカウントされるけれど、私にとってより大きな価値があるのは、手に取って読んでくださった方、一人一人の言葉たち。

SNS上でも直接でも、もし感想などいただけましたら、胸に刻んで永久保存させていただきます。

まだまだスタートラインに立ったばかりだけれど、人とのつながりや喜びを運んでくれる本の力を少しずつ実感し始めている。これからどんな景色を見せてくれるのだろう。発売前はあんなにおそれおののいていたのに、ちょっとだけワクワクしている自分がいる。

ここからまた一歩一歩、1冊1冊を、一人一人に、届けていきたいと思います。






読んでくださりありがとうございます。とても嬉しいです。スキのお礼に出てくるのは、私の好きなおやつです。