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人生最大の編集

「子育て」は「編集」に似ているなと思う。といっても、編集者のあり方も親のあり方も人それぞれなので、あくまで私の考え方だけれど。

新卒で出版社に入社して以来、編集者として仕事をしてきて、今はライターとしての執筆に軸足を置いているけれど、ひとつの記事をつくるのにも必ず編集の視点が入るからやっていることはあまり変わらないと思う。さらに、今自分の生活の中心にある子育ても、ある種の編集だな、と。

私にとって、編集とは、惚れ込んだ人の才能および魅力を最大限に引き出し、世の中に伝えていくこと。編集者とは、人(著者)と人(読者・社会)をつなぐ媒介者であると思っている。

たとえば私は編集者としてある人の本をつくるとき、過去にその人が書いた本や今発信しているSNSなどを読んで、イベントなどがあれば会いに行き、会って話をして、いろんなカタチでその人の考え方や言葉、生き方に触れる。そのうえで、その人のことを考え続けて、「これだ!」というテーマを探る。

テーマは著者が明確に持っている場合もあるけれど、そうであっても自分がなぜその人に惹かれるのか、自分や読者(社会)との接点を探りながら、どんなメッセージを伝えていきたいのかを掘り下げていく。そのテーマの源流は、自分が普通に生活をしているなかで、見えてくるもの。同じ著者であっても、著書によって見せ方や伝わるメッセージが変わってくるのは、編集者のフィルターがあるからだと思う。

本にしていく過程で、著者に書いてもらう場合は、著者が創作に安心して集中できるような環境をつくることも編集者の仕事のひとつ。本を書くということは心と身体を費やすことで、書けなくなることもある。書き上げるまで、かたちになるまで、読者に届くまで、編集者は著者の伴走者として、あらゆることを考えて実行していく。ここで大事なのはそのテーマを面白さと著者の才能を信じ切ること。

編集の仕事が面白いのは、人の才能や可能性がぱっと開く瞬間に立ち会えること。著者が、書くことあるいは話をすることで、自分では気づいていなかった才能や可能性がぱっと開くときがある。そのことで、私自身が新しい視点を得て、人生が豊かになることもあるし、届けた先の読者の世界が広がっていったら嬉しいなと思っている。

私は今、1冊の本を編集することはしていないけれど、子育てがそれに近い感覚にある。

子育てにおいても、子どもの人生の主体は子どもだけど、親として伴走して、子どもの才能や可能性がぱっと開く瞬間に立ち会えたらいいな、と。そのために、誰よりも子どもを信じて、子どもの得意や好きを引き出して、才能を伸ばしていく。私が教えられることは限られているから、周りにいるかっこいい大人やすてきな本に出会わせるとか、社会との接点を探りながら、子どもがいきいきできる環境を整えていく。決して簡単なことではないと思うけれど。

娘が産まれて私はいま人生最大の「編集」をしているのかもしれない。


ちなみに私が今、編集ライターとして企画・取材・執筆をする場合、やっぱり一番関心のあるテーマは、家族や子育てのことになる。社会的なテーマを考えるときも親としての視点が必ず入ってくる。20代の頃とは確実に変化した。その意味で、娘は、編集ライターとしての私に新たな視点をもたらしてくれているし、確実に影響を与えている。

ちょうど昨日、家族と仕事をテーマに企画を立てて、娘を連れて取材をしてきた。私自身が葛藤の最中、共感できることやヒントがたくさんあった。これから記事をまとめていく過程で私はまた考えることになるだろう。私にとって、書くことは考えることだから。

子育ても編集で、編集ライターとしての仕事のテーマも家族や子育てが中心になっていき、仕事と家族(育児)の境界線がどんどん溶けていく。むしろ溶かしていきたい。

だからこそ、私は、娘と全力で向き合って、ひとりの働く母として素直にたくさん葛藤してもがけばいい。その思いを企画に落とし込みながら、本を読んだり話を聞いたり、ヒントを得ながら考えをまとめて、同じ悩みを持つ人たちに伝えていけたらいいな。

夫が長期出張中で、娘が保育園に行けなかった3週間、そんなことを考えていた。働きながらのワンオペ育児、ネタにしないとやっていけないよ!w

さて、ようやく体調が回復した娘は、タイミング良く今日から夏休み。結局1ヶ月ほど保育園に行かないことになる。働きながら母ちゃん、がんばった!! 娘も体調が優れないなか、がんばった!! 明日からは実家へ帰りつつ、京都で仕事をがんばる父ちゃんに会いに行くよ!

夏休みと言いつつ、私は原稿も書く。在宅でフリーランスということもあるけれど、仕事と育児の境界線がどんどん曖昧になっていく。大事なのは、仕事か育児かというよりは、限られた24時間を誰とどう過ごし、日々を重ねていくか、だな。

このテーマは引き続き、考え続けようと思う。つまり、また書こうと思う。(自分のなかで整理しながら、整理しきれていないまま、書いています)

読んでくださりありがとうございます。とても嬉しいです。スキのお礼に出てくるのは、私の好きなおやつです。