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焼きそばを焼く人

私が住んでいるのは140世帯程の中規模マンションです。住人の親睦を兼ねて毎年夏に納涼祭が催されます。畳一枚分くらいありそうな大きな鉄板をレンタルして300人分(もっと多いかも)の焼きそばを作り、100円で振舞われます。他にも生ビールやおでん、フランクフルトや焼き鳥等、ほとんどが100円で購入出来るので、参加率はかなり高いようです。マンションの中庭に敷物を敷いてテーブルが設置されますが、すぐに席がいっぱいになります。なので食べ物を購入して自分の家で食べる人も多いです。

このマンションに引っ越してきてちょうど一年経った頃に、初めて納涼祭に参加しました。娘はまだ赤ちゃんで、息子は3歳の頃のことです。小さな子供も楽しめるように、ヨーヨー釣りや的当てなどもあり、息子は大はしゃぎでした。まだ数人しか顔見知りがいない時でしたが、大きな鉄板で焼きそばを焼いている人に夫は釘付けになっていました。焼きそば好きの夫は、たまに作ってくれることがありましたが

一度でいいからこんな大きな鉄板で焼いてみたいと思っていた

のだそうです。すぐに役員さんと打ち解けて「じゃあ、焼いてみる?」とお誘いを受けた夫は、喜んで参加し、結局終了まで鉄板の前に立ち続けていました。おまけに役員さん達だけの打ち上げにもちゃっかり参加させてもらい、家族を放っておいて深夜のご帰宅です。

その後すぐに夫は役員さんになり、以来一度も欠かすことなく納涼祭の花形?の焼きそば担当を20年以上も続けています。焼きそばを焼きたい一心だけで役員の座に居座り続けている奇特な人なのです。

7年程前には、焼きそばを焼いている姿を見せたいからと義母を呼んだこともありました。ねじり鉢巻きをして首からタオルを下げ、生ビールをあおりながら汗だくで鉄板の前に立つ息子の雄姿?を、義母は焼きそばを頬張りながら嬉しそうに見ていました。アイドルさながら時々義母や娘に手を振る夫は、よっぽど楽しかったのですね。娘は冷たく一瞥した後は他人のフリをしていましたが、お義母さんが嬉しそうで良かったです。


昨年はコロナで中止となり、夫は活躍の場がなくなり本当に残念そうでした。そして、もっと残念なことが私達を待ち受けていたのです。


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「えーっ、また焼きそば⁉もう飽きたよ~」

近所に住んでいる息子と娘が、夕ご飯を食べに来た時とうとう悲鳴を上げました。今年に入ってからは、ほぼ毎回焼きそば攻撃です。飽きる事はないのかと神経を疑いますが「一日三食、味を変えて焼きそばでもいいくらいだ」と宣います。確かに毎回麺の太さや種類を変え、具材もバラエティー豊かに豪華にして、無駄にお金をかけてはいます。に、しても、です。物事には限度というものがありますよね。


息子と娘がもう見るのもイヤと言い出したので、今は私一人が犠牲になり?週末に焼きそばをいただいています。ゴールデンウイーク中は朝から焼きそばの日もあったので、合計10回は食べたと思います。さすがに飽き飽きしてきました💦

納涼祭で腕が振るえなかったことの反動 だと、息子は分析しています。


夫にとって、年に一度あの大きな鉄板で一心不乱に焼きそばを焼くことが、これほど重要な場だったとは思ってもみませんでした。究極のストレス発散法だったのかもしれません。ビールを浴びるほど飲みながら好きなことが出来て、大量の汗と共にいろんなものがデトックスされ身も心もスッキリしていたことに間違いなさそうです。

冗談で、定年後は屋台の焼きそば屋さんになったら?と言うと、

「いや、俺の焼きそばはいろいろこだわりがあり、麺が焦げるまで焼き続けるので体力を使うから無理だ。やるならパスタ屋だな」と、ニヤリ。

そういえば、以前は焼きそばではなく、ペペロンチーノに凝りまくっていた時期もありました。パスタも焼きそばも、もう一生分くらい食べさせてもらった気がします(^▽^;)


早くコロナが収束して、安心して生活出来る日常が戻ることを願うと共に、納涼祭が復活することを願わずにはいられません。



最後までお読みいただきありがとうございました(#^^#)


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