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「弱虫ペダル」疾走感がある自転車映画だが、原作を知っているものにはイロイロあるでしょうね。

私も原作、アニメと観てきて、それなりに存在感もあり、評価も高い作品だ。その実写映画化という行為は無謀というしかないのだ。つまり、2時間の長さに原作の良さをどう詰め込むかという問題がある。もちろん、マンガのキャラをいかに残念にしないで演じるかというのもありますよね。その上での映画にして良かったと言わせる感じも必要だろう。いろいろと不安がある中でスクリーンに向かう。

作り手は、それがわかっていて、いろいろ捨てている。マンガ特有の細かい説明みたいなものは全て捨て去って、そんな中で原作とは違う流れを作り、自転車のロードレースをいかに没入感のある映画に仕上げるかという方に焦点を合わせようとしたのだろう。自転車を走らせているシーンには、観客がそれに乗っているライド感みたいなものがある。それはそれでこの映画の魅力となっている。

そして、主役小野田坂道特有の、高速回転のケイデンスの描写もうまく行っていると思う。他の乗り方と違くみえればそれで良い。だが、やはり原作のファンはいろんな違和感を持つだろう。役者のある意味の体型の凸凹感がもっと欲しかったりもする。坂道は、もっと運動ができないタイプに見えて欲しい。今泉には、スカシ感が足りないし、鳴子もギラギラ感みたいのがもう一つだ。

それらは、ポスターや予告を観ていてもうわかっていることで、それをどうまとめるかということなのだろう。結果的にはいろいろと物足りないのだ。必要な箱根学園や京都伏見というライバルを全て削ったために、それを意識してギリギリになるような触感がすべて失われている。その結果が、原作ファンが思いも寄らない、今泉の最後の快走という結果になる。

まあ、原作では県大会のシーンに一年生は加わってこないで、さらりと総北高校の強さが描かれている。そういう意味で、構築し直せるところであり、それを脚本として膨らますことにしたのだろう。レースの駆け引きみたいなものが描ければいいというところか…。

主役がアニメオタクであるというところも、映画ではそれほど意味を持たない。アニメの歌を歌いながら走る意味も映像からは見えてこない。このあたりの演出がすごい表層だけのものであって、やはり原作ファンには寂しい限りである。キャラで言えば、私の好きな巻島はガッカリ。もう少し、なんとかならなかったのか?自転車に格好良く乗れるという部分もあったのだろうが、喋り方だけ真似されても違和感がある。

部長の金城だけは、原作に近い感じもあったが、つい先日「ぐらんぶる」を観てしまっただけに、どうも竜星涼のイメージがそれほど硬質に見えてこないのは減点になってしまった。そういう減点はすごくいっぱいあるんですよ。

ヒロイン、橋本環奈も、自転車オタク的なところをもう少し前に出しても良かったし、もう一つ話の中に馴染んでない感じもする。いわゆる恋愛的な話も少し入れないと、映画が濃くなって行かないということだろう。

そう、自転車レースのウンチクや、皆にロードレーサーに興味を持たせるというところも弱い。ただただ、ライドシーンに拘って、周囲のドラマがそこにシンクロしてこないのだろう。あと、原作にある佐倉周辺の風景も少しは使って欲しかったし、海辺の映画ではない気がする。自転車に乗っているシーンの美しさは追求しているようなので、それゆえのロケ地選定なのだろうが…。

原作では、インターハイを描くことで、そこが最大の見せ場になっている。あえて、そこを避けるのは、第2弾もありの作りなのだろうが、役者も含め、このまま続編を作って欲しいか?というとそうでもない。まあ、今のアニメは、原作の完成度の高さもあり、どこまでそこに寄り添い、それを裏切ルカだ。実写映画として作るのはさらに非常に難しいところ。

小野田が、遅れて、追いついてくるシーンはそれなりにちゃんと描かれていたのは良かったですけどね。

映画を観ながら、自転車の爽快感は味わえたが、ドラマの魅力のギアはあげられなかったというところが、この映画に対する私の評価である。もっと、汗ばんだ映画にしちゃいたい感じもするのですけどね…。


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