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「宇宙でいちばんあかるい屋根」清原果耶の映画初主演作として、語り継がれそうなファンタジー

思春期の惑いをファンタジー世界に上手く溶け込ませた話だ。演出に気負いがないところに好感が持てる。監督は「新聞記者」の藤井道人。

とは言え、この映画、清原果耶の映画初主演というところが最大の見どころと言っていいだろう。私も、デビューの朝ドラ「朝が来た」から、彼女を見続けているが、成長目まぐるしい中での映画初主演。こちらの予想以上の結果を残している。18歳の彼女が歳相応の役なのだが、実に存在感がある。映画全体を彼女の空気感が引っ張っている感じの作品だ。

とにかく、シーン毎に、様々な表情をする。喜怒哀楽をただ表現するのではなく、微妙な空気を様々に作り出す。その彼女の空気が、他の俳優たちを巻き込んでいる感じが全体にある。プロとしては当たり前のことだが、みんな芝居に身が入っている感じなのである。これは、映画として心地よい。

そんな中で、彼女に影響を与えていく役の桃井かおりは、彼女と芝居をするのを楽しんでいる感じで、役柄そのままに、清原の芝居をする上でのエンジンになっているようだった。二人のシーンが、本当に良い!

調べると、桃井かおりのデビューは20歳の時、18歳の清原に自分のデビュー時を重ねるわけではないだろうが、こんなに友達感覚で芝居をやっている桃井かおりは新鮮だった。桃井かおりにも感じるパワーが、清原に存在するのはよくわかる。

そして、この話、悪い人が出てこない。あくまでも性善説の中のファンタジーである。それが、いやらしく感じないのは清原あってのことだろう。私とは相性が良くない父親役の吉岡秀隆までが、普通によく見えた。母親役の坂井真紀も義母という微妙な役を印象深く演じている。

あと、実の母親役の水野美紀さん。最近は、汚れた役でもなんでも演じて、幅が広がるすぎるくらいだが、久しぶりに美しい役をやっていた。ワンシーンだけのこの役を彼女に配役したのは正解だ。

そして、ラストを締める、もらい役が、書道の先生の山中崇。どっちかというと、癖のある役が多い彼だが、今回はとても善人で、清原を暖かく見守る役としては印象的。こんな優しさが溢れ出るような彼もファンタジーか?

思春期の背伸びした恋心、義母に対する微妙な葛藤、生まれてくる妹への微妙なジェラシー、もちろん将来のこともある。そういう色々なことを背負って、熱が出そうな毎日の中で、桃井との出会いが彼女の未来の励みにもなる。描かれているのは、昔からよく描かれてきた話だが、だからこそ時代を超えて理解できる映画である。そして、現在の清原がそれを演じていることに意味がある。

清原果耶が、このまま女優を長く続けるなら、間違いなくこの初主演映画は語り継がれる作品となるだろう。大人になる鳥羽口の彼女の圧倒的な存在感は、とても愛おしかった。現在のコロナ禍で、疲れている人の心を癒すような作品でもある。

下に貼り付けた、主題歌のPVの中には、本編に出てこなかった、2020年の彼女がいます。ちゃんと大人になった役を演じています。本当にこれからが楽しみな女優さんです。


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