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「スイッチ」焦点の定まらぬラブコメディー?坂元裕二の脚本世界を演出は理解できているのか?

まず調べた。脚本家、坂元裕二も、デビュー31年になる。「東京ラブストーリー」は今も語られるドラマで有り、最近では「問題のあるレストラン」や「カルテット」がそれなりに面白かった。他の作家とは、少し違う感じのものが書ける脚本家である。まあ、ベテランになっても何か挑戦してる感じはいいことだと思う。NHKの「テレワークドラマ」もまあ、所詮、できることが決まっているから、異次元的な世界に連れ込むというテイスト。一般の脚本家が提示したら、採用されないだろうというものを作品として作らせる力はすごいと思う。

そして、阿部サダヲ、松たか子主演のドラマ「スイッチ」を観る。検事と弁護士という対立する立場の元夫婦。そのキャラを説明するのに、結構、時間がかかっていく。その辺りは、映画ではないので致し方ないところ。そして、「連続突き飛ばし事件」をめぐる、サスペンスに入っていくのだが、そこは、昨今でもよく問われる。「逮捕されない犯人」という社会の裏が絡んでくる。それを主人公二人が追うが、壁が厚く、その過程で直情的な松たか子の本質が表現され、そこから先は、サスペンスよりは、ラブコメ的な展開が強くなり、ラストは二人が欲望を形で交わすところでエンディング。

まあ、単発のスペシャルドラマということもあるが、どうも構成が複雑すぎるのか、焦点がはっきりしないうちに終わってしまった。

その、二人と新しい恋人として絡む、眞島秀和と中村アンは、必要なのか?と思うのである。全て彼らのシークエンスを消しても形にはなる。その二人を本当のラストにまだ戻してくるのも、いまいちわからない。

あと、松たか子のマンションに巣食う鳩に何の意味があるのだろうか?最後には、ほぼ巣状態にされて、そうなったことを阿部が松に言わずに嘘をつく。この展開も何を意味するのか理解できない。そういう場面が結構、多い。

まあ、突き飛ばす一犯人の石橋静河や、昨今、どのドラマにも同じテイストで登場する岸井ゆきのなどの出番は結構面白かったが、どうも、主演の二人が結果的に光っていないし、なんかシンクロしきれない状況のまま終わっていた。

松と阿部のコンビネーションは悪くないし、最初から、ずーっとお互い好きなのはわかっている。だが、若い頃の二人の回想などを重ねていく、結構重要なカラオケボックスのシーンなども、淡々と語っていくまま、物語の解き明かしにはなるが、本質を示せぬままにラストに流れる。

全てにおいて、ドラマの流れがよくない感じである。主演の二人がそれなりに演じているだけに、見終わった後にフラストレーションが大きかった。多分、脚本家は、二人のラブコメディーを書きたかったのであろう。だが、テレビ的には、リーガルサスペンスみたいなものを強調しないと視聴者の射幸心を煽れないという部分もある。結果的にできたものが中途半端になった?

まあ、テレビドラマは脚本家のものとよく言われるが、結果的に言えば、演出と編集の甘さである。デジタル映像時代の今、テレビドラマも映画作品も、この三つがうまく相乗効果を出さない限り、大きな波動を起こす作品にはなれないという現実を見せられた感があった2時間だった。

ただでさえ、テレビの営業が今まで以上に大変になる時代に、アフターコロナでは、もっと丁寧な仕事が求められているのは確かだと思う。

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