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「あの頃、文芸坐で」【60】「ええじゃないか」を観て今村昌平に求めるものがなくなっていった頃

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1981年10月2日、文芸地下で「ええじゃないか」を観る。併映の「炎のごとく」は観ていて、二度観たいとは思わなかったということだと思う。それでも鑑賞料金は300円(私は会員だったので安く入れた)。今も、一本300円で観られる映画館があれば、毎日通うだろうなと思いますよね。映画はそういう気軽なものであって欲しい。それは、アフターコロナに思う夢か?

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まずは、当時の他の映画鑑賞を追っていく。9/30には、埼玉の大宮オリンピアで「北斎漫画」と「白日夢」の二本立て。当時は、洋画館ロードショーのものは地方に行くと二本立てて観ることができた。ということで、大宮に見に言ったのだが、なかなか辛い二本立てだったと思う。特に「白日夢」に至っては、愛染恭子という人の裸と演技が見ていて辛かったのを覚えている。「北斎漫画」はタコだけが記憶に残るが、田中裕子の演技で見られたという感じでしたね。

そして、10/1に今のバルト9のところにあった、新宿東映に三浦友和主演「獣たちの熱い眠り」と後で曰く付きとなる「ガキ帝国 悪たれ戦争」の二本立てをロードショーで観る。とは言っても、この当時鑑賞券をプレイガイドで買って1000円ですよ。「獣たち〜」は三浦友和が結婚後、イメージチェンジということで東映出演。村川透監督で松田優作的なものを狙った一本。私の評価はかなり悪かった。三浦の東映作品は「悲しきヒットマン」はよく語られるが、こちらはあまり観られる機会も無く私も内容をよく覚えていない。それよりも、この日は「ガキ帝国 悪たれ戦争」を見たことが重要である。この映画、作品内のハンバーガー屋での猫肉発言で、モスバーガーが激怒したということで、映画館で二度と上映できない封印作品になったままである。これは本当に悲しい話だ。内容は、「ガキ帝国」の女子版といったところ。主演の谷山衣枝の演技がとても印象的な佳作なのだが、ソフトにもなっておらず、観られる機会がない。井筒和幸監督作品としてもすごい重要な作品なわけで、本当に、モスバーガーにはなんとかしてほしいものである。

そして10/2には池袋日勝地下で「野菊の墓」「Dr.スランプ アラレちゃん ハロー!不思議島の巻」「ねらわれた学園」の三本立て。この日、一番観たかったのは澤井信一郎デビュー作「野菊の墓」。松田聖子のアイドル映画ながら、すごいしっかりした映画だった。まさに職人芸と思ったこの日。そして、それを観てからの「ねらわれた学園」には、監督の資質の差が出ていた。大林監督作品に関しては、この当時から受け付けなかったのはよく覚えている。

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では、本題。まずはコラム。「なつかしの戦前名画祭」の顛末記、手違いで上映できなかったり、日本語吹き替えだったり、違う映画だったり、フィルム状態が悪かったりと、その状況まで「なつかし」の状態だったようで、本当に、特に洋画のフィルムに関してはさまざまなことがあったのだなと思わせるお話。デジタルの今では、ここまでひどいことはないが、機材故障などありますし、完全に映画の興行を行うというのは大変なことだと思ったりします。その完璧を目指すのがエンタメの心意気というものでしょう。昨今はデジタルで気は緩んでいる部分は少なからずあると思ったりもします。そして、ミニシアターのパワハラ問題など、問題外です。上映する方も、観る方もみんな、楽しく映画に関わりたいものです。

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そしてプログラム。文芸坐は、「陽のあたらない名画祭」のあとは、ベルイマンワンマンショー。こういう流れは、文化の匂いがしますよね。こういうのがあって、娯楽映画があるのが、映画興行の本来の形だと思います。文芸地下は、東陽一監督二本立てのあと、こちらも「陽のあたらない名画祭」ラインナップをみると、当時としては比較的新しい作品が並んでいる。この中で、私が観ていないで観たい作品は内藤誠監督の「時の娘」かな。シネマプラセットで上映された作品だが、もう、ほとんどの人が忘れている作品でしょうね。オールナイト「日本映画監督大事典」は、円谷英二に続いては勅使河原宏監督。この4作品をオールナイトで続けて観るのはなかなか辛い感じですね。そして、ル・ピリエでは、「なつかしの戦前名画祭2」ということで、映画の教科書のようなラインナップ。こういう作品だけ、常に流し続けるスクリーンも欲しいですよね。本当に、アフターコロナは、文化に触れたい人、学びたい人が増えて、日本人の文化意識の高さがビジネスにつながる時代が来るといいと思います。

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そして、この日観た映画「ええじゃないか」の話。正直、私の好きな今村昌平映画は「神々の深き欲望」までだ。「復讐するは我にあり」以降は、バイタリティは残っているものの、大味で、どうも完成度という点では褒められない。この「ええじゃないか」も、衣装の派手さや、エキストラの数で、民衆のパワーを示そうとしたのだろうが、映画的には空回り。当時の私の評価もかなり低い。この映画の後、この間亡くなられた、坂本スミ子さんが出演された「楢山節考」と「うなぎ」でカンヌのパルムドールを2度獲ることになるのだが、これらについても、私的にはピンと来なかった。まあ、巨匠のなせる技だったのでしょうな。この項のタイトルにしたように、私が映画を多く観出して、この「ええじゃないか」を観てからは、今村昌平に私自身が興味無くなったことは確かだ。


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