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医者であることは自分への失望の連続である

医者になってからというもの、心底自分に絶望している。

「人を助けたい」「人のためになりたい」そういったモチベーションを持ってこの仕事を選んだし、その思いは今でも変わらない。
しかし時折、このモチベーションの灯火が自分の中で消えかかる瞬間がある。

例えば、翌日も通常業務の当直の夜に起こされ続けた時、病院の救急当番で夜通し軽症患者の対応に追われた時、緊急手術が終わった瞬間に救急科から急患の相談があった時。
人を慈しむ心が霞む瞬間がある。

「こんな時間に起こしてまで報告することか」
「夜中に受診するような状態じゃないだろ」
「どこまで働かせれば気が済むんだ」

平静を装って対応はするが、ドス黒い負の感情が全身を覆っていくのを感じる。

嵐が過ぎ去り、冷静になると頭の中でもう1人の僕が僕に囁く。

「人を助けたい」
「人のためになりたい」
そう言ったはずだよなお前。
この、偽善者め。

僕にとって医者として働くことは、自分への失望の連続である。
こんなにも自分が可愛い人間だったのか。
こんなにも自己中心的な生き物だったのか。
もっと人のことを考えられる人間でありたかった。

それでもここまで培った知識や技術が人の役に立つ時はある。
己の矮小さに絶望し続けながらも、それらを患者に還元することで医者としての自分を保っている。

余裕のない環境が、優しさの泉を枯らしてしまう一因であることも確かだ。
若い世代の医師達が自分に絶望せず、胸を張って働いていけるよう環境を整備していくことも、僕の医者として生きる今後のモチベーションの一つに加えようと思う。

#医者
#絶望