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『冴えない彼女の育て方Fine』を見て思い馳せたこと(後編)

今までの丸戸作品といえば、「過去に因縁のある面倒くさい裏ヒロイン」と「ちょっとだけ優しい世界」というキーワードが頭に浮かぶと思います。(完全に信者の思考だろそれというツッコミは置いておいて)
前編でも何度も言った通り、過去作であれば英梨々や詩羽が「裏ヒロイン」ポジションとしてのキャラクター要素を持っていて、その裏ヒロインのために主人公(倫也)が無茶をし、他のヒロインキャラや周りの登場人物達が無茶をする主人公を暖かく支えることでハッピーエンドへ辿り着く、という『優しい世界』を描くのが丸戸作品の定石ともいえる物語でした。

今作の主人公である倫也にとって『優しい世界』を支えてくれるのは「加藤 恵」というヒロインであり、最後まで倫也が無茶をするのは物語上では”選ばれないヒロイン達”のはずである英梨々と詩羽のためです。
そして恵は最後まで、クリエイターではない”日常の存在”であり、倫也の帰る場所であるサークル活動を守り続ける「優しい世界」の象徴でした。
そういった視点においてもやはり、恵というキャラクターは丸戸作品において”異質”であり”新しい”ヒロインだったのではないかと思います。

そんな恵も物語終盤になるにつれ、「腹黒」で「面倒くさい」魅力的な女の子として成長(?)し、初期の「フラット」要素なんてものは失っていく姿にファンとしては恍惚とした表情をしながらすっかり骨抜きにされてしまうくらい、丸戸ヒロインキャラ属性をどんどんと身につけていきます。
GS3巻での追い詰められてからの激白(わたしのもの宣言)なんかは「ままらぶ」の『涼子さん』と同じキャラ要素を感じますし、”面倒くさい”感じは丸戸ヒロインの正統後継者と言って過言ではないと思います。

改めて「加藤 恵」というヒロインは、ライトノベルという媒体を意識して丁寧にキャラクター性を作り上げていった丸戸・深崎両先生コンビのセンスと、メディアミックスという多くの関係者の力によって生み出された”新時代の丸戸ヒロインの姿”だと劇場版を見届けた今だからこそ強く感じます。
「フラットなヒロインとネタにされながらも実は少し腹黒くて、面倒くさいかわいい女の子」という幅広い層のオタクに刺さるヒロインながらも、コメディな作風でも活きるキャラクター性が絶妙なバランスを取り、そこへ深崎先生の素晴らしいイラストの力やメディア・グッズ展開が加わって、多くのユーザーに愛される作品になれたのだと感慨深く感じながら、心の片隅で冴えカノロスを味わっています。

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