Nozomi

写真と言葉とときめくもの。それから心に浮かんだ、どこかの誰かに聞いてほしいこと。いつか…

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写真と言葉とときめくもの。それから心に浮かんだ、どこかの誰かに聞いてほしいこと。いつか誰かの心に響くエッセイを書く人になるのが夢。 (icon photo by https://www.instagram.com/co_kot/)

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最近の記事

それでも世界は回っていて。

2年前の今日は、死んでしまいたいと思ったほど絶望した日だった。 でも、2年経った今日はとても穏やかで幸せな一日だった。 向こう数年は近づくまいと思っていた土地に立っても、意外なほどに心は穏やかだった。 そこには、様々な国の、様々な年齢の人が、それぞれ思い思いにすごしていて。あたりまえだけど、それぞれの人生が、時間が流れていた。 毎度、過ぎ去ってみないと言えないセリフだけど、それでも世界は回っていて、流れる時間が解決してくれることはとても多いのだと。 あと2年後の今日

    • 意味を知らない言葉を旅する

      「やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける。」 古今和歌集の仮名序が好きだ。 2年ほど前から和歌に興味を持ち始め万葉集や古今和歌集を読み始めた。 学生の頃古文は得意ではなかったので正直原文を読んだだけではあまり意味はわかっていない。 ただ、和歌を読み上げたときの、言葉の響きの美しさに惹かれている。 わずかな知っている言葉から、古の世界の景色や人々の想いに心を馳せてみる。その瞬間がとても楽しい。 思えばこれは、小学生の頃図書館で、少し背伸びをして活字

      • 心と身体のかけっこ

        桜が咲いたのが嬉しくて。今年もまた薄紅色の花びらを追いかけてはしゃぎ回りすぎてしまったみたいだ。 桜が散ったら急に戻ってきた冷たい空気に身体が悲鳴を上げてしまった。 寒いのが苦手で寒いと言うだけでし心がしょぼんとしてしまうのだけれど、その反動か毎年春が来ると、心が身体を引っ張って駆け出してしまう。 桜が一番好きな花というだけあって、いつも桜が咲くとカメラを持って駆け回りその姿を少しでも残そうと必死になる。 だから、桜が散るといつも引きずり回された身体が悲鳴を上げて座り

        • また春が来るから

          そう思うとなんだか全てが大丈夫に感じてしまうのは私だけだろうか。 冬至は過ぎても冬の絶望感から抜け出せないのに、節分が近づいてくると急に春が来るって感じ始める。 春が来るって思うと、それだけでなんだか全部大丈夫って思えてきてしまうから春ってすごい。 冬に向かっていくときは段々と短くなっていく日の長さと、闇い冬の気配になんだか全てが絶望に感じてしまうのに。 朝起きた時がこの前より少し明るかった。そんな小さな春の気配だけでなんだかとても嬉しい。 実際は冬至の頃より寒さは

        それでも世界は回っていて。

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          6本

        記事

          人生は運ゲーだというけれど

          結局人生を決めるのは運なのかもしれない。 そう長く生きているわけではないけれど、四半世紀くらいの人生の中で 幾度か自分の力ではどうしようもない不運に見舞われるとそう思うようにもなる。 努力は確かに大切だけれど、必ず報われるとは思わない。 良い運も巡ってくるけれど、それを掴んで大成功にまで持っていくのはとても大変だ。 そんな中で、幾度目かの不運が一段落した今ふと大切だと思ったこと。 それは「どうしようもない不運に見舞われた時、どこまで自分自身を手放さずにいてあげられる

          人生は運ゲーだというけれど

          季節はいつの間にか巡っていて。

          親友と箱根に行ってきた。 久しぶりの温泉女子旅。 お昼に新宿を出て、午後の光にさされながらロマンスカーに揺られる。 扉が開くと、東京よりいくらかひんやりとした空気に包まれた。 「うわー!なんか観光地っぽい!!」 そんな当たり前のことを馬鹿みたいに連呼してはしゃぎながら、箱根湯本をぶらぶら歩く。 秋色に斑に染まった山と、キラキラ光を反射する川、観光客で賑わう古い橋。なんだかふっと身体が軽くなった気がした。 お昼を食べて、観光もそこそこにお宿へ。 すぐに服を脱ぎ捨て、浴衣

          季節はいつの間にか巡っていて。

          季節は音からやってくる

          昨夜眠ろうとしたら窓の外から「リンリンリン」と虫の音が聞こえてきた。 「あ、秋がやってきたんだ」 まるでご先祖様たちが「今年はお家にいてね」って泣いているような肌寒いお盆が終わって、夏空が帰ってきた。あぁ、また暑い夏が始まるなと思っていたけれど、どうやら季節は一歩先に進んでいたらしい。 思えば季節の始まりは音からやってくるような気がする。 ゴロゴロという雷の音に夏が近づいたことを感じ、ミーンミンミンという蝉の鳴き声で夏を確信する。 同じ蝉でもヒグラシの鳴き声が聞こえ

          季節は音からやってくる

          ゆで卵を剥くのが下手くそすぎる話

          ものすごくどうでもいいのだが、私はゆで卵を作るのが苦手だ。 さっき魯肉飯に入れるゆで卵を作ろうとしたら見事に失敗して無残な姿の卵が爆誕した。 いや、ひどすぎるやろ。 これはあれだ。よく聞く水を入れた容器でシャカシャカすると殻がツルンとむけるというのを試したら、力余って白身が飛んでいった(ごめんなさい。ちゃんと美味しく食べました) そんなゆで卵の殻を剥くのが下手くそな私。 昨日密かに驚愕した出来事があった。 日曜らしくのんびり起きた私達夫婦は時計をみて「まだ間に合う!

          ゆで卵を剥くのが下手くそすぎる話

          何者かになりたいという欲の話

          「何者かになりたい」 そんな欲求に最近苛まれている。 今の私を表すもの。 23歳女性。専業主婦。療養中。 少し前まではここに看護師という肩書があった。 まだまだひよっこだったけれど働いていれば日々誰かに必要とされている実感はあった。 毎日先輩に怒られ、家に帰って泣いても、目の前の患者さんは私に存在意義を与えてくれた。 語弊はあるがこのご時世。医療従事者というだけで自分が社会で必要な存在であるのだと感じられた。 (その分のしかかる私生活の制限、祀り上げたかと思え

          何者かになりたいという欲の話

          ねがはくは 花の下にて

          突然短歌を詠んでみた。 人生で初めて作った短歌。 川上弘美さんの「私の好きな季語」に出てきた「春愁」という季語をどうしても使ってみたくなったのだ。  流行り病でままならない世。昨年「来年はきっと」と見上げた桜。 残念ながら今年もまた「来年はきっと」と見上げることになってしまったけれど、いつの日か愁いなく桜を見上げる日を夢見て。

          ねがはくは 花の下にて

          台所には生活が詰まっている

          「台所には生活が詰まっている」 新居で暮らし始めて約1週間。 トマトスープで余ったセロリでふりかけを作っているとき、白ごまがないことに気づいてふとそう思った。 物心ついた頃から母と一緒に台所に立っていた私は、一昨日主婦になった。 新米主婦。でも、母が働き始めた中学生の頃から我が家の夕飯はほとんど私が作っていたので主婦歴は10年以上はあると勝手に思っている。 でも、暮らしていた頃は「なんでこんなにごちゃごちゃしてるんだろう」ってちょっぴり嫌だった実家の台所には生活が、20年

          台所には生活が詰まっている

          倭歌は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける。

           2020年の年始め。私は、さいたまスーパーアリーナの壇上で3万人の観衆の中で仮名序を朗々と唱える白い神様に魅入っていた。真っ白な装束に松明を掲げるその姿はまるで天地を司る人ならざるもののようだった。  ミュージカル「刀剣乱舞」歌合 乱舞狂乱。万葉集や古今和歌集の和歌をベースに刀剣男士たちが繰り広げるエピソードに私は引き込まれた。和歌に興味はあるものの古典の成績はいまいちだった私は、その場では元となった和歌が聞き取れず、意味を理解することもできなかった。しかしオタク心に火が

          倭歌は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける。

          なんにもしないこと、考えないこと

           唐突に毎日やることもなく家にいるようになって気づいたら6週間が過ぎた。  4月から死にものぐるいで働いて、仕事と睡眠と食事だけがすべての毎日を生きてきた。  最初は何もできないこと、ただ布団に埋もれて息をしているだけの毎日に罪悪感と焦燥感で押しつぶされそうだった。  でも、しばらくして、なんにもしないこと、考えないことを身につけた。  いや、なんにも考えないことは今も難しい。でも、考えても今答えが出ないことを考えすぎることをやめた。   真っ黒に埋まったスケジュー

          なんにもしないこと、考えないこと

          お嫁さんになりたかった女の子の夢のおはなし。

          晴れた日はシーツを干して 窓を開けてお掃除して、 疲れたちゃったら日の当たる場所でお気に入りのお茶を。 お昼は何にしようかな たまには内緒でちょっと贅沢をして 夜ご飯は何にしようかな〜って思いながらスーパーをさまよって 家族の帰りを待ちながら夜ご飯を作るの。 寒い日の午後はお家にこもってお菓子でも作って 暑い日にはきらきらの冷たいドリンクでも作りましょうか。 休みの日には一緒にお昼までゴロゴロして。 お昼を食べたらまた一緒にゴロゴロお昼寝。 天気がよかったら海の見えると

          お嫁さんになりたかった女の子の夢のおはなし。

          つらい時こそ想像力を枯らさないで。

          いつから世界はこんなに暗澹として混沌としてしまったのだろう。    たった一枚の写真や、たった数十秒の動画に、毎日何万何十万もの称賛と罵詈雑言が投げつけられる。 自分はこんなに大変なのに、この人は楽しそうにしている。 自分はこんなに忙しいのに、この人はのんびりしているなんて。 自分はこんなにつらいのに、この人は笑っているなんて……… そんな感情が、手のひらの中からつながる世界中に渦巻いているように感じる。 確かに世界はこの数ヶ月で大きく変わってしまった。 世界中を重苦

          つらい時こそ想像力を枯らさないで。

          君の運命のヒトは僕じゃない

          「〇〇がいなくても、もう大丈夫だから。私、強くなったから。」 無理やり作った明るい声で、電話の向こうの彼に言い放ったのはもう半年も前のこと。 ほんとは全然大丈夫じゃなくて、電話の向こうに嗚咽が漏れないように必死だった。 でも、彼と私の未来が重なることはないってわかってしまって。     彼もそれはわかっていたけれど、彼は優しいから、私が一人でも幸せになれるまでそばにいると言ってくれた。 それに甘え続けることを、わたし自身が許せなかった。 もっと違う設定で もっと違う

          君の運命のヒトは僕じゃない