MastodonがTwitterになれないたったひとつの理由

Mastodonとは、Twitterに類似したマイクロブログサービスのためのオープンソースソフトウェアである。
分散SNSと呼ばれるものの一種で、特定の企業だけが運営しているわけではなく、立てられたサーバー同士が繋がってネットワークを構成している。
Mastodonが動くサーバーを立てることさえできれば誰でも自分でサービスを始めることができ、他サーバー群の「連合」ネットワークに参加することができる。サーバーの運営者は企業から個人まで様々だ。
単にマイクロブログとして使いたいだけなら、どこか適当なサーバーを見つけてアカウントを登録すればすぐに始められる。

さて、一時期TwitterでこのMastodonがもてはやされたことがあった。
あれは規約の改定発表だったか、それとも凍結騒ぎだったか。とにかくTwitter社への不信感というものが顕在化したとき、にわかにその名が挙げられはじめた。
Twitterの運営方針は当然ながらTwitter社の一存であり、ときには理不尽な理由でアカウントが凍結されることがありうる、だからより自由なMastodonへ移住しよう、とこういう話である。
しかしながら、この「移住運動」は結局大して実を結ぶことなく終息してしまった。実は私もこの「移住運動」に乗っかってMastodonにアカウントを作ったクチなのだが、未だに主たる生息地はTwitterだし周囲にもMastodonへ完全に移住した人というのはいない。今やTwitterでMastodonの名を聞くこともなくなった。

では、なぜMastodonはTwitterになり代わることができなかったのか。

確かにMastodonの掲げる「脱中央集権」という理念には共感できる。が、それは"そういう"話が好きな一部の人間にとってのことであり、その他大勢の一般大衆にとってはわりとどうでもいいことである。
SNSで重要なのは他者との繋がりである。凍結凍結と騒がれても、大人しくしていれば自分たちには関係のない話だと思えるし、よく槍玉に上がるお節介な機能の数々についても既にある繋がりを捨てて移住するほどの不便ではない。

TwitterにはTwitterの住人がいるが、MastodonにはTwitterの住人はいないのである。

自分一人が移住しても元いたフォロワーはそこにいないし、フォロワー全員と示し合わせて一斉移住というのも現実的ではない。
MastodonではMastodonでの繋がりを新たに構築しなければならない。そんな面倒なことをするくらいなら中央集権だろうがなんだろうがTwitterに居続けた方がよい。そういうことだ。

では、Mastodonは絶対にTwitterの代替にはなれないのか。

この世に絶対ということはない。が、難しい話であろう。
まず単純に、人口に雲泥の差がある。Mastodonでは最大規模を誇るPawooですら60万人程度、小規模のサーバーなら数百人でも多い方だ。それがTwitterとなると億を超えるアクティブユーザーが、Mastodonでいうところの一つのサーバーに集まっていることになる。
代替になるということは、この億単位のユーザーをMastodonが取り込まなければならないということであるが、それにはキャパシティが足りていないだろう。人口100万人の超大規模サーバーが100必要なのだ。
仮に集まったとして、人口100万人のサーバーはそれだけで小さな中央集権となりうる規模だ。分散、脱中央集権という理念を考えるならばもっとバラけていなければならない。が、そうなると今度は中小規模のサーバーが星の数ほど必要になってくる。その分運営者も必要だが、サーバー運営はそこまで簡単ではない。知識とやる気と資金を持った人間がそれだけいるかといえば、まあいないだろう。
そして最大の問題は、一般大衆は分散や脱中央集権に興味がないということである。TwitterからMastodonへ移住するとして、サーバーを選択するときは基本的にメジャーで大きなサーバーを選ぶだろう。実際に、日本ではJPやPawooといったところへユーザーが集中している。

MastodonがMastodonであるためには分散化していなければならないが、Twitterになり代わるには集中化が必要必然となる。
この矛盾をどうにかしない限りMastodonはTwitterにはなれない。

そもそも、Mastodon住人の多くがTwitter化を望んでいないということもある。
人口が増えれば治安が悪くなり、炎上騒動のようなことも日常的に起こるようになるだろう。それを嫌ったからこそMastodonへ移住してきたという人もいるはずだ。そういう人たちはMastodonがTwitter化すればまた新たなSNSを探して移住していくだろう。堂々巡りである。

とはいえ、Mastodonはまだまだ新しいサービスである。Twitterの代替などではなく、別の需要を掘り起こして新たなSNSの一角となる可能性は十分にあるし、ある意味ではもうなっているともいえる。
分散SNSの今後に期待したい。

私のMastodonアカウント
https://mstdn.maud.io/@ruine


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ここでは小説を書くことを志すナニカ。ラノベ漫画アニメゲームを広く薄く囓っている中途半端なオタクでもある。現在は創作論のようなものを投稿しながら裏で小説の執筆に挑戦している模様

コメント1件

MastodonがTwitterに(意図的になら)ないたったひとつの理由、そうなるように作られているから https://github.com/tootsuite/mastodon アーメン
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