妹は転生者

思えば生まれたときから、妹はどこかおかしかった。

まず、赤ん坊だというのに滅多に泣くことがなかった。泣くのは必要最低限の乳を欲しがるときかおむつを変えて欲しいときで、夜泣きや無駄泣きなどは一切しなかった。

乳離れした後も好き嫌いせず離乳食を口にするし、玩具を与えても時折弄ぶくらいでいつも虚空を見つめて思案顔をしていた。

両親からは手がかからないと喜ばれていたが、私は気味が悪くてあまり妹には近付かなかった。だというのに、成長するごとに妹はやたらと私に懐いて後を付いてくるようになった。私はますます気味が悪くなった。

歳に似合わずとてもハキハキと喋るし、物をねだるときもやたらと論理的に必要を訴える。子供なのに大人みたいだ、と私は気付いた。だから気味が悪いのだと。

そんな妹に「話がある」と呼び出されたのは、忘れもしない聖帝国歴1498年、ヴェンデルギウス領に雪が舞い散るある寒い冬の日のことであった。

「……なんだって?」

私は思わず聞き返した。

「ですから、私はこの世界の人間ではありません。正確には元・異世界人といったところでしょうか。今の私は転生してこの世界の人間として、あなたの妹として生きていますので」

いきなり何を言い出すのか。やはりこの妹はおかしい。成長して美しくなったがこれでは嫁の貰い手がない。

「まてまて、つまり……なんだ? お前は誰か別人の生まれ変わりで、そのことを覚えているということか? それが異世界の人間だと?」

「疑問符は多いですが概ねその認識で間違っていません。ちなみに前世の私は公務員……宮仕えの役人でした」

長年の疑問が解けた瞬間であった、のだろう。だが私の頭には疑いしかなかった。

「……それで、そのことを打ち明けてどうしたい?」

この、子供の頃から打算的であった妹が意味もなくそんな話をするとは思えない。嘘か真かはさておき、目的を知りたかった。

「領地の経営に関わらせてほしいのです、お兄様」

【つづく/800文字】

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ここでは小説を書くことを志すナニカ。ラノベ漫画アニメゲームを広く薄く囓っている中途半端なオタクでもある。現在は創作論のようなものを投稿しながら裏で小説の執筆に挑戦している模様

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