なろう小説レビュー「狩猟騎士の右筆~魔術を使えない文官は世界で唯一の錬金術士?~」

連載中作品ではあるが、例によってネタバレ注意である。

導入

魔の森によって分断され、人々が結界に守られた都市に点在して生きている時代。魔力を扱い魔獣を狩る騎士が特権階級として都市を支配していた。
小都市リューゼリオンの騎士家、大派閥の領袖グリュンダーグの跡取りとして生まれたレキウスはしかし生まれつき魔力を持たず、そのため文官に落とされ家を追放された。
書庫の目録作成という閑職に回されながら、古文書の中に見つけた旧時代の胡散臭い学問「錬金術」の記述に興味を抱き、その研究を密かな楽しみとして過ごしていたレキウス。
そんなある日、自身が右筆を務める幼馴染の王女リーディアから呼び出され、彼女の婚約者候補を探せという奇妙な命令を受ける。

概説

「右筆」とは、地位ある武人に仕えて文書の作成を行う者の職名である。だがその業務内容は本作においてはあまり関係がない。騎士個人専属の文官というか、秘書のようなものの名称として扱われている。
本作は異世界を舞台とした内政チート系の作品である。主人公のレキウスは転生者などではないいわゆる現地主人公だが、騎士の家に生まれながら文官になったという背景からその世界の常識に縛られない発想を持ち、錬金術≒科学的な思考と分析で立ちはだかる謎を解き明かしていく。
舞台設定が特徴的で、まず農業が存在しない狩猟採集社会である。騎士が魔獣を狩って肉とし、魔獣を追い払った地域で平民が野草や果物などを採取するのだ。騎士は特権階級であるにも関わらず都市の統治そのものはほとんど”下っ端”である文官任せなのも面白い。
話の筋としては都市あるいは大陸全土に関わる重大事が次から次へと起きるが、レキウスがやるのは常に魔術に対する科学的アプローチである。周囲の人間が「そういうものだ」と思考停止で認識していたものに対して疑問を持ち、その仕組みを詳らかにしていく過程は見ていて気持ちがいい。
内政チートのご多分にもれず、彼を支える周囲の人間もまたチート級の有能ばかりだ。ヒロインのリーディアをはじめサリアやカインといった優秀な騎士たち、シフィーという魔術的にイレギュラーな存在、錬金術を物資の面から支える商人のレイラ、そしてレキウスに比する頭脳と旧時代への関心を持つラウリスの王女クリスティーヌ。彼らもまたレキウスに振り回されながらそれぞれの持つ能力を活かして活躍している。

問題点

気になる点としては、科学的なアプローチでありながら偶然や運に助けられすぎているのではないかというところである。特に最初の婚約者探しに端を発する結界破綻予想などは少ない情報を基に仮定に仮定を重ねた憶測に過ぎない。メタ的に見れば、予想へと導くために必要最小限の情報源を配置しているように感じられる。RPGのお使いクエストのような感覚だ。現実の科学的発見に偶然のエピソードは多いが、それにしても限度というものがあるだろう。
細かい点として表記ゆれが多いのも気になる。地脈なのか魔脈なのか、測定器なのか測定儀なのか測定環なのか、作者の中では使い分けがあるのかもしれないが読んでいて違いは感じ取れない。

総評

細かい点に目を瞑れば、基本的には面白く読める作品である。ファンタジー要素に理屈を付けるというのは他作品でもやっているが、ここまで科学的なアプローチを行なっているものは珍しい。舞台設定も含めて作者の独特な感性が反映されているのだろう。
現在連載中、根本的な事件の解決には未だ遠く、その分まだまだ楽しめそうといったところであろうか。


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ここでは小説を書くことを志すナニカ。ラノベ漫画アニメゲームを広く薄く囓っている中途半端なオタクでもある。現在は創作論のようなものを投稿しながら裏で小説の執筆に挑戦している模様