とん汁の芋なに入れる?

「ジャガイモだよ!」

「サトイモよ!」

ミノリとサトコは共通の幼馴染であるハヤトの家のキッチンで言い争っていた。
今日は三家とも親が遅くまでいないので、一緒に夕飯を作って食べようという話になったのである。献立としてとん汁が提案されたまではよかったのだが、そこに入れる芋の種類で意見が分かれたのだ。ハヤトは買い物のため財布を取りに行っていてこの場にはいない。

「いやいや、とん汁って言ったら普通ジャガイモでしょ。むしろそれ以外の芋が入るなんて考えたこともないし」

「そんなの常識に囚われた思考停止ね。味も食感も、とん汁にはサトイモこそふさわしいのよ」

ミノリの一般論に対して、サトコは一歩も引かず持論を展開する。

「中学の給食だってジャガイモだったし、外で食べるときだって……」

「そりゃあ給食や外食はコストの問題があるでしょう。自由に作れる家庭でまでそんな因習に付き合う必要はないわ」

「因習って……」

ミノリは自分が頑固だという自覚はあるが、サトコはそれに輪をかけた頑固者だ。そのうえ自分では理詰めで物事を考えていると思っているから始末に負えない。

「ていうかジャガイモの方が美味しいし! 甘くてホクホクしてるし、サトイモなんてニチャニチャしてて汁物には合わないよ!」

「逆よ! ジャガイモの粉っぽい食感こそ汁物には大敵だわ! サトイモのねっとり感こそ至高!」

お互いに熱が入ってきている。言い負かしてやろうという気持ちと、誰か止めてくれという気持ちがないまぜになっている。

「お前ら何やってんだ?」

と、そこへようやくハヤトが戻ってきた。
これで少なくとも二対一で決着がつくし、もしかしたら「両方とも作ろうぜ」などと気前のいい仲裁案を出してくれるかもしれない。
期待しながら経緯を説明する。

「ジャガイモだよね?」

「サトイモでしょ?」

「いやあ、とん汁にはサツマイモだろ?」

『……はぁ!?』

その日初めてミノリとサトコの息がピッタリと合った。

【つづく/800文字】

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ここでは小説を書くことを志すナニカ。ラノベ漫画アニメゲームを広く薄く囓っている中途半端なオタクでもある。現在は創作論のようなものを投稿しながら裏で小説の執筆に挑戦している模様

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