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【層夢】-2021年8月26日深夜の日記

不思議な、どこか蠱惑的な少女に本屋で出会った。
一人称は「私」だが、中性的な雰囲気を漂わせる口調。
彼女にその時どんな言葉をかけられたか、今となっては思い出せない。
彼女が立ち去った後、しばしの間私は放心していたが、そのまま見逃す気にはならなかった。
私は彼女を追いかけ本屋を探した。
すぐに見つかった。いや、私が探そうとする場所にわざと足を運んできたような……
彼女は自分を探そうとしてくれたことがとても嬉しそうだった。
彼女は私の手を引き、本屋を出た。
そして私の手を自分の首の後ろへ回し、自分の手を私の首へ回す。ちょうど肩を組むような形だ。
女性とこんなに密着して外を歩いた経験などない私は狼狽した。しかし彼女は他人の目など意に介さない様子だ。
ここから先の彼女の言葉は先程よりもはっきりと覚えている。
「ムラサキカガミムラサキカガミ、紫髪、君は没個性じゃない」
えらく私を、私自身を褒めてくれる。
……これは私が先日適当にこぼしたツイートの話か?
何故私のツイートを知っている?
「私は、君自身だからさ」
彼女が名乗った名前を聞いて私がひどく納得したことは覚えている。
そうだ、確かにその名前は──

目が覚めた。夢だったのか。
不思議と心地いい夢だった。
窓から陽が差し込んでいる。
私は起き上がってベッドから降り立った。
自分の身体に違和感を覚える。
見下ろし、左右の腕に触れ、頬と首を触り、頭を撫でる。
これは私の身体ではない。自分の姿が他人に変わっている……。
私は直感的に思い出した。
これはさっきの夢で居た本屋で私が読んでいた本の主人公の姿か?
私は手鏡を取り出し、自分の顔を確認しようとした。

目が覚めた。今のも夢だったのか……
時計を見ると深夜1時を指している。
朝になってすらいなかった。

不思議な、しかし今までに体験したことのないくらい優しく、心地いい夢だった。
私は身体に染みついた習慣に従い、今の夢の内容をスマホのメモに書き記した。
詳しく、何故だか詳しく書くことができる。いや、詳しく書いておかねばならないと思ったのだ。

この体験を、日記にも書き残しておこう。

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