粉野瑠衣

片隅で書きます。

図書館

 夏休み、と聞くと、図書館を思い出す。  静謐な館内に時折流れる、蝉の大合唱と、窓から差し込む眩い太陽の光。古本の匂い。紙をめくる音。  幼少の頃、徒歩圏内に地…

【短編】2倍の幸せ、あるいは

 ヒラノアキコがどうやら今日はおかしいと気づいたのは、商店街のくじ引きを引いて、「ツイン賞」という栄光に預かった時だった。  カランカランと鐘を鳴らすスタッフに…

【短編】あな

男は嬉々として銃口をつきつける。 その先にはおびえた様子の髭面の男。 「待ってくれ。撃たないでくれ。説明をさせてくれ」と常套句。 「言いたいことはそれだけか?お…

【短編】波打ち際、散る詩

男は海岸にいた。 ただただ、街から急にひらけた砂浜から、ぼんやりと海を見ていた。 男以外の人間はいなかった。 海があった。 ときどき静かに打ち寄せる波を、眺めて…

門前払い

 思い立ってカント入門(石川文康/ちくま新書)を読んだ。  ここ数年、海外の作品(映画やドラマや本等々)に触れる機会が増加し、そのたびに作品たちの根底に脈々と受け…

【短編】サンフラワー

 その街には大きな公園があり、中には噴水のある広場があった。良く晴れた日の午後、噴水が見渡せる前のベンチに老紳士が座って、人が行き交う様子を眺めていた。  よち…