見出し画像

ラグビーと本(後編)

RUGGERSオリジナルコラム
「ラグビーと本」

筆:廣瀬俊朗
1981年生まれ、大阪府吹田市出身
元ラグビー日本代表キャプテン
株式会社HiRAKU 代表取締役
NPO法人 Doooooooo 理事

※前編はコチラ

~本に学ぶリーダー論~

 ラグビーでは、平尾誠二さんの本が好きで、「理不尽に勝つ」というフレーズを気に入っていた。世の中もラグビーもたくさんの理不尽な環境がある。それをとやかくいうのではなく、どう立ち向かうのかどうか。普通に勝っても面白くない。理不尽に立ち向かうことこそが楽しくてやりがいがある、というようなことだったと記憶している。他には、定石通りのプレーをしたら、「つまらないなー」と同志社大学の岡仁詩先生に言われた、というエピソードも良く覚えている。「もっと遊んでラグビーをやってみたら?」ということだったと思う。平尾さんの本は、既成概念とか正解を探すようなラグビーは、ワクワクするラグビーの姿ではないということを教えてくれた。また、彼は神戸製鋼で、選手主体で色々と改革をしている様子も格好良かった。僕も北野高校在学時、自分たちで考えるラグビーをしていたが、とても勇気付けられた。

 僕自身がキャプテンをやることが多くなってからは、リーダーシップの本を読む機会も増えた。とても感銘を受けたのは、「人を動かす」というカーネギーの本である。とにかく相手側に立つ、全部を否定しない、そして重要感を持たせるという部分がなるほどと思わせてくれた。リーダーはどうしてもこちらの都合で物事を捉えて、こちらの都合で伝えてしまうことが多い。きちんと相手と向き合って、物事を進めていくやり方に大変感銘を受けた。
 僕が小さい頃に、母親が僕に対して接する方法にとても類似していて、母親もなかなかやるなと感心した。そのことも踏まえて、僕が人と接するときは、皆と同じ立場になり、色々なことを聞くというスタンスが出来上がった。このスタンスは、あらゆる世代でキャプテンをやらせてもらったが非常に役立った。年上の人からはその人が持っているトレーニングの仕方を教えてもらい、僕は僕の立場から色々と意見を言わせてもらった。後輩と何かをやるときは、僕がやることに巻き込むことが多かったが、相手も嫌々ではなく、自分の意思でジョインしてくれていた。幸せな選手生活を送ることができた。
 引退してから、色々なプロジェクトを進めているが、この考え方はラグビー以外でも非常に有効であった。「皆のことが本当にこのチームで必要である」、「ちょっとした衝突はお互いの想いがあるから」、「何かアイデアを出してくれたときは一度取り入れよう」などと前向きに捉えていくことで、メンバーのロイヤリティーも高まって、上手くいくことが多かった。

 今、コロナ禍で人間関係やリーダーシップに、注目がより集まっている。平野啓一郎さんと対談の機会があったので、本を読んでみた。「分人」というコンセプトもとても面白かった。色々な自分が出てきて良いし、相手も色々な顔があることを再認識できた。特に、ありのままの自分を出せる人といることが、自分のことを好きになれる瞬間になる。だから、その人と過ごしたいという感情が湧いてくる、という言葉はなるほどと思った。皆自分の好きな部分を見ていたいのだなと。他には、恋愛という言葉を深堀する中で、時間軸として愛の方が長いと書かれていた。これからも様々なことにチャレンジしていくつもりであるが、そのことに対してきちんと愛を持って接していこうと、気持ちを新たにすることができた。
 まだまだ家には、読みたい本がたくさんある。そこから学んで自分の人生なり、スポーツにどう活かせるのかと考えるととてもワクワクしてきたので、ここで一旦筆を止めて、読みたい本に没頭することにする。

文中に出てきた本

日本ラグビー選手会公式
選手とつながる無料ラグビーアプリ「RUGGERS」
ダウンロードはコチラから。
https://ruggers.jp

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?