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1年8ヶ月ぶりの日本代表戦を見て(前編)

RUGGERSオリジナルコラム
筆:廣瀬俊朗
1981年生まれ、大阪府吹田市出身
元ラグビー日本代表キャプテン
株式会社HiRAKU 代表取締役
NPO法人 Doooooooo 理事
スクラム・ジャパン・プログラムアンバサダー

 「ラグビーワールドカップ2019」以来、日本代表の約1年8ヶ月ぶりの実戦となるヨーロッパ遠征が終わった。本当に日本代表の試合を待ちわびていたので、日程が決まってから、この日がくるのを楽しみにしていた。一方で、久しぶりの代表戦だったので、どういった試合になるのか予想が難しく、コロナ禍で試合自体が中止になってしまうのではないか、という少し不安な気持ちも入り混じっていた。加えて、日本代表に新しい選手が入っていることや、対戦相手であるブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(BIL)とはこれまで戦ったことがなく、過去の試合と比べられないこともあり、余計にソワソワしていた。

 結果としてはBIL戦、続くアイルランド戦と2連敗だったが、収穫の多い遠征になったのではないかと思う。まず、ワールドカップ以来の代表戦で「スタンダード(標準的なプレーの強度・質)はどうなのか?落ちていないのか?」と少し心配であったが、全体の試合内容としては良いレベルにあった。BIL戦の後半はチャンスが多く作れていたし、次のアイルランド戦では良いトライも生まれた。ボールがどんどん動くことやキックを織り交ぜて、的を絞らない戦いは健在であった。

 2019年のメンバーは変わらずに良いパフォーマンスを見せてくれていたように感じる。
 ジェームス・ムーア選手は、献身的なタックルが最後まで健在であったし、ラインアウトで相手ボールを何度もターンオーバーしていた。リフターとの連携や分析も良かったのではないかと思う。
 それ以外にもガッキー(稲垣啓太選手)、亮土(中村亮土選手)や他にも多くの選手が落ち着いたプレーを見せてくれたと感じる。
 海外で武者修行してきた松島選手、姫野選手は新たな領域に行き着いたのではないか。松島選手は何度もラインブレークしていた。既に風格さえ漂わせているように思えた。姫野選手は力強いボールキャリーをしてトライを取った。ニュージーランドで見せたフィジカルの強さをそのまま見せつけてくれた。過酷なスケジュールの中で試合に出て、見せ場を作った姿を見て思わず唸った。2試合目のアイルランド戦は直前の怪我で欠場になったが、今シーズンの彼のチャレンジは多くの人に勇気を与えてくれたと思うし、本当に素晴らしかった。

 新しく代表に入った選手も色々と躍動してくれたと思う。アイルランド戦ではスターティングメンバーとしてプレーした齋藤直人選手は堂々とプレーしていた。マシレワ選手はアタックで才能を見せて、オフロードからトライを演出した。フィフィタ選手も強さを見せた。坂手選手もスタメンで長い時間プレーしたがスクラムが安定していた。
 昔だったら新しく入った選手がいきなり活躍できること、それ以前にチームに馴染めることは稀であったのではないかと思う。活躍できた理由としては、普段のチームでのスタンダードが上がったこと、トップリーグなどでも世界のトップレベルの選手と試合ができていること、何よりも自分たちが取り組んでいるラグビーに自信を持っていることが大きいと感じた。新しく代表に入ってすぐに躍動出来るための土台が出来ていることを改めて実感できた。

 今回はポジティブなことを触れたので、後半では久しぶりの実戦で感じた課題について書きたいと思う。

~後編に続く~

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