ピアノの鍵盤は見たことがある_2019123017320000

第29回 ダブルシャープとダブルフラットと重増音程と重減音程

📚[📖楽典]ナチュラル、ダブルシャープ、ダブルフラット、音程(重増音程、重減音程)、進行、機能ド
📚[🖋記譜法]ナチュラル、ダブルシャープ、ダブルフラット
📚[🎵ソルフェージュ]機能ド

質問_2020030515020000

…という質問が出てきたところで前回は終わったね。
じゃあ、今回はこの質問に答えていくことにするよ。

じつは前回、その答えのひとつは出ていたんだけどね…、

譜例_28_03

 10小節目、11小節目に♭が二重に書かれたものがあるよね。
 この楽譜は、嬰へ長調で書かれていた次の楽譜を、異名同音調の変ト長調で書いたものだったのは覚えているかな。

譜例_28_01

 この楽譜の10小節目、11小節目を見てみると、さっきの楽譜で二重の♭が書かれていたところには♮という記号が書かれているよね。
 この記号は「ナチュラル」と言って、♯で半音上がったり、♭で半音下がったりした音をもとの高さに戻すものなんだ。Dの音に♮が書かれているけど、調号を見るとDの音には♯が書かれている。つまり、この調号の♯を打ち消す役割をしているよ。

 嬰へ長調のDの音には最初から♯が付いている。だから「D♯の音が半音下がった」ということになるよね。嬰へ長調の「ド」にあたる音はF♯の音だからD♯の音は「ラ」にあたる音で、つまりD♮は「ラ♭」にあたる音ということ。

 一方、変ト長調は嬰へ長調の異名同音調で、D♯とE♭は異名同音。D♮の異名同音を書こうとすると「E♭音が半音下がった音」になってしまう。すでに♭で半音下がっているのに、さらに半音下げるってことだよね。つまり全音下げるってことなんだけど、こんなときに使うものが、さっきの二重に♭を書いた「ダブルフラット」という記号なんだ。

譜例_29_02

 この記号は、あくまでも調号で♭の付いている音が半音下がったときに使う記号だということに注意してね。

 ダブルフラットがあるんだから、調号で♯が付いた音をさらに半音上げる「ダブルシャープ」という記号もあるんだけど、それはこんな形をしているよ。

譜例_29_03

 書きにくい記号だから「×」と書くこともあるけど、印刷された楽譜では上のような記号になるからね。
 これもダブルフラットと同じように、調号で♯の付いている音が半音あがるときに使える記号だよ。

 ところで、♯の付いた音がさらに半音上がったり、♭の付いた音がさらに半音下がったりするということは、音程は増音程よりも広くなったり、減音程よりも狭くなったりすることもあるということだよね。
 例えばこんな場合だけど…、

譜例_29_04

 G音とD音ならば完全5度で、調号を見るとG音にもD音にも♯が付いているのでG♯音とD♯音でも完全5度だけど、赤で示したところはG♮音とD音のダブルシャープだから増5度よりもさらに半音広いよね。これを「重増音程(じゅうぞうおんてい)」と呼ぶよ。
 つまりこの音程は「重増5度」ということ。

 同じように、減音程よりもさらに狭い音程を「重減音程(じゅうげんおんてい)」と呼ぶんだ。

 ちなみに、条件によってはさらに音程が広くなったり狭くなったりすることもあって、「重重増音程(じゅうじゅうぞうおんてい)」のように「重」の字を増やしたり、「二重増音程(にじゅうぞうおんてい)」のように言ったりする人もいるけど、定着した呼び方はないんだ。

質問_2020032609120000

 これは難しい質問だね。
 まず、楽譜は第9回でも説明したように、読みやすいことが大切なんだ。だから、例えばEダブルフラットの音をD音と書いたほうが読みやすいと思うならば、そういう書き方もできる場合があるよ。
 でもその一方で、楽譜とは「その音が音楽的にどういう意味を持っていのか」をあらわしたものでもあるんだ。

 第4回で「固定ド」や「移動ド」について勉強したけど、その他に「機能ド」という言葉を紹介したのを覚えているかな。
 「機能ド」とは、主音や属音、導音といった、音階上の音の機能を重視した考え方で、イオニアン旋法でもドリアン旋法でも主音は「ド」と呼ぶというものなんだ。実際に「機能ド」で音名を呼んでいる人はそんなにいないみたいだけど、その代わりに主音を「ⅰ度」、属音は「ⅴ度」のように、数字で呼ぶことはされていて、特に和音を考えたりする分野ではよく使われているよ。数字はローマ数字が使われることが多いね。僕のこの教室では今も書いたように、「ⅰⅱⅲⅳⅴⅵⅶ」という、小文字のローマ数字を使っていくから覚えておいてね。

 話を戻すけれども、例えば今回の最初に提示した変ト長調の『ねこふんじゃった』の楽譜では、ダブルフラットが付いているE音は、その前後にD♭音が書かれているよね。もし、このEダブルフラット音をD♮音として書いてしまうと、D音は♮が付いたり♭が付いたりと、忙しい音符になってしまうし、読みにくくもなっちゃう。
 でもそれだけではなくて、このEダブルフラット音は、直前のD♭音から見て「音階的に上の音」として存在しているんだ。

 最後の11小節目を見てみよう。Eダブルフラット、D♭、Fというように音が動いているよね。音の動きのことを「進行(しんこう)」と言うんだけど、ここには主音のG♭音へと向かう進行が存在していて、並び変えるとD♭、Eダブルフラット、F、G♭という音階の並びになるんだ。移動ドで読むと「ソ、ラ♭、シ、ド」だね。
 機能ドは移動ドをさらに発展させた考え方とも言えて、この場合のラ♭はソに対する導音的な機能を持っていると読むんだよ。だからあくまでもラ♭の音であって、ソ♯の音であってはならない。そして、それを変ト長調で記譜するならばラ♭の音はEダブルフラット音、ソの音はD♭音ということになるんだ。

 今はまだ機能ドの考え方はよくわからないという人が多いかもしれないけど、もう少しあとになると重要になってくるから、少しずつなれていくといいと思うよ。

 というわけで今回はここまで。
 次回はちょっと特別な授業で、第28回で勉強した調号とは少し違ったものを考えていくよ。

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