ピアノの鍵盤は見たことがある_2019123017320000

第19回 音部記号を覚えよう

📚[📖楽典]記譜法(ト音記号、ヘ音記号、ハ音記号)
📚[🖋記譜法]五線譜(音部記号)

 前に楽譜の読み書きを紹介したときに、僕はいくつかある記譜法のうち、五線譜のト音譜表というものをあげたのを覚えているかな。左端に大きな「ト音記号」と呼ばれる記号のある、こういう楽譜だね。

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 五線譜にもいろいろあるんだけど、今回は「ヘ音譜表(へおんふひょう)」と「ハ音譜表(はおんふひょう)」について勉強してみようと思うよ。

 ト音譜表にト音記号があったんだから、もう気付いているかもしれないけど、ヘ音譜表には「ヘ音記号(へおんきごう)」が、ハ音譜表には「ハ音記号(はおんきごう)」が書かれているんだ。

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 五線譜というのは基本的にドレミの音階による楽曲を書くためのものだから、これまで通りのドレミ音階や平均律というのは何も変わらないんだけど、じゃあ何のためにこんな楽譜があるのかというと、それは扱う「音域(おんいき)」が違うんだ。
 音域というのは、音階の範囲のことだと思ってくれればいいかな。

 標準的なピアノには88個の鍵盤があるんだけど、たとえばト音譜表はピアノの鍵盤で言えば、「真ん中のド」と呼ばれる音よりも高い、だいたいこのくらいの音域を扱っていたんだ。

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 これに対して、ヘ音譜表やハ音譜表は、だいたいこのくらいの音域を書き表すのに使うよ。

譜例_19_04A

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 ヘ音譜表はト音譜表と合わせて「大譜表(だいふひょう)」として用いることも多いんだ。主にピアノ用の楽譜なんかに使われる書き方だよ。
 この際だから上の図を見ながら、第5回のときと同じような覚え方で、それぞれの「ド」の位置を覚えちゃおう。

 ハ音譜表は、ふだんはこの楽譜を使う楽器は限られているから、そうした楽器に触れる機会がなければ、あんまり見ることはないかもしれないけど、もしもこれからいろんな音楽に触れていきたいとか、曲を書いてみたいって考えているならば、ぜひとも知っておいたほうがいい譜表だよ。
 ト音記号、ヘ音記号、ハ音記号のように、五線譜の左端に書かれる大きな記号は、おおざっぱに、その曲や楽器の扱う音域をあらわしているとも言えるよね。この記号のことを、まとめて「音部記号(おんぶきごう)」と言うんだ。どんな音域の部分を書きあらわしているのかを示す記号だから「音部記号」だね。

 ところで、ふだん「ト音譜表」「ヘ音譜表」「ハ音譜表」と言ったときは、今、紹介したようなすがたをしているんだけど、これはそれぞれ、正しくは「ヴァイオリン記号」「バス記号」「アルト記号」と言うんだ。この名前はとくに覚えなくてもいいんだけど、こんな呼び方があるのには理由があって、じつはこの音部記号と呼ばれる記号は、もともと、特定の音が五線譜のどの位置になるのかを示すものだったんだ。
 「ト音」というのはG音のこと。いよいよ第4回で出てきた音名の出番だよ。覚えているかな? 忘れちゃった人は今すぐ第4回目を復習してね。

 話を戻すけれど、同じように「ヘ音」というのはF音、「ハ音」というのはC音のこと。日本語では音名の「CDEFGABC」それぞれを「ハニホヘトイロハ」と呼ぶんだ。
 ものすごくデザイン化されちゃって、ちょっと見ただけでは元となっている文字がイメージしづらいけど、「ト音記号」とは「G」の文字がデザイン化されたものなんだ。「ヘ音記号」も「F」の文字が、「ハ音記号」も「C」の文字が元になっているよ。
 そして、「ト音記号」はぐるぐるっとまるまった真ん中がG音だよっていう意味だったんだ。

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 「ヘ音記号」も点を2つ打った真ん中の線の位置がF音だっていう意味、「ハ音記号」は左右がひっくり返ったような2つのCの真ん中の線がC音の位置という意味になるんだ。

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 だから楽器や時代によっては、こんな書き方の楽譜もあったりしたんだ。
 全音符の位置は、それぞれ「真ん中のド」をあらわしているよ。

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 でも、今ではこのうち、テノール記号以外はほとんど使われることはないんだ。ハ音記号自体、使う機会は限られているから、しばらくの間は頭のすみっこに覚えておくくらいでもいいかもしれないね。

 だけど、ト音譜表とヘ音譜表、この2つだけはしっかり覚えちゃおう。

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 これからは五線譜がどんどん出てくる予定だし、大譜表を使った説明もあるからね。
 というわけで、今回はここまでだよ。

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