第4回 ドレミってイタリア語だったんだ
📚[📖楽典]音名
📚[🛡音楽史]西洋音楽史、グレゴリオ聖歌
📚[👤人物]グイード・ダレッツォ
今回はドレミという言葉について、ちょっと考えてみることにするよ。
もちろん、これまで僕の教室でもドレミなんて言葉は何度も出てきたし、わざわざ勉強なんてしなくても言葉くらいは知ってるっていう人も多いと思う。でも、ちょっと待ってほしいんだ。前回、転調というのが出てきたけど、そうすると「ドの音」も変わっちゃうんだよね? じゃあ「ドの音」「レの音」なんて言っても、何の音なのかわからなくなっちゃう。
まぁ、その話はちょっと置いといて、まずは、どうして「ドレミファソラシド」なんて言うようになったのか、そこから説明していくね。
音階ができていったのが西暦1000年から1600年くらいの間だっていうのは第1回でも出てきたね。これにはいろんな説があるから、正確なことはよくわかっていないんだけど、もともと昔の音階は、今みたいに「ドレミファソラシド」全部の音がそろってはいなかったみたいなんだ。だから半音なんて言葉も無かった。音楽がどんどん複雑に、そして豊かな音楽性が生み出されていくにつれて、音楽家さんたちは新しい音が欲しくなって、そして今のピアノみたいに黒鍵も混じった音階が完成させていったんだ。
ということは、西暦1000年頃の音階には黒鍵なんて無かった、ということになるよね。どういう音を「黒鍵の音」と呼ぶのかにもよるんだけど、今みたいに1オクターブに12個の鍵盤があるなんてことは無かったみたいなんだ。そして、その頃の音楽の先生に、グイード・ダレッツォさんという人がイタリアにいて、この人が「ドレミファソラシド」という言葉を作ったんだよ。
教会で歌う歌を「讃美歌(さんびか)」、そしてこの讃美歌を歌う人たちを「聖歌隊(せいかたい)」って言うんだけど、音楽の勉強が難しくて、聖歌隊には歌を覚えるのが苦手な人が多かったみたいなんだ。そこでダレッツォさんは、音階を表す言葉を作って、勉強をわかりやすくしようと、ある讃美歌のそれぞれの行に書かれた最初の発音を音階の呼び名として使い始めたんだ。
勘のいい人ならば気付いたんじゃないのかな。その頃の音階には今のような黒鍵がなくて、だから「♯」とか「♭」なんてものも必要なかった。当然、転調なんてこともできないよね。だから「ドレミファソラシド」だけで十分だったんだよ。
時代がずっと新しくなると、さっきの説明のように、次第に半音にあたる音が増えていって、鍵盤の数も増えていった。転調という技法が生まれて、こうなってくると「ドレミファソラシド」 という言葉がどんどんあいまいになってきちゃった。そこで、転調しても音の変わらない音の呼び名が必要になってきたんだ。
ここで大事な言葉が出てくるよ。転調すると呼び名の変わる言い方を「階名(かいめい)」、転調しても音の変わらない呼び方を「音名(おんめい)」と言う。音楽を勉強するときは、ほとんどの場合は音名を使うことが多いんだ。でも言葉だけでは階名と音名の区別が付きにくいよね。そこで、音名を使うときはアルファベット文字を使うのが一般的になっているんだ。
具体的には「CDEFGABC」を使う。これは英語式で、ドイツ語式だと「CDEFGAHC」と書いて、それぞれ「ツェー、デー、エー、エフ、ゲー、アー、ハー、ツェー」と読む…んだけど、これは今は頭のすみっこのほうに置いといていいよ。僕の教室では、しばらくの間は音名を使うときは英語式を使って「シー、ディー、イー、エフ、ジー、エー、ビー、シー」と読むことにするからね。
ちなみに第2回の最初のほうで出てきた、楽器によっては書いてあるという「C」という文字はこれのこと。この「C」が書かれた鍵盤の音は「真ん中のド」とも呼ばれていて、「真ん中」を意味する英語の「center」の頭文字と言われることもあるみたいだよ。
話を戻すけれど、そんなわけで「C」の半音高い音は「C♯(シーシャープ)」、「B」の半音低い音は「B♭(ビーフラット)」と書くね。ドレミに慣れている人はちょっと戸惑うかもしれないけど、これは慣れておいたほうがいいから、がんばって覚えよう。
もちろん出てくるよ。
ここでもうひとつ大事なことが出てくるんだけど、前回、「嬰ヘ長調」の音階を紹介したときに「ドレミファソラシドに聴こえる人と聴こえない人がいる」と説明したよね。世の中には転調したらドレミの音が変わって聴こえる人と、変わらずに聴こえる人とがいるんだ。
どんなに転調しても「C」が「ド」に聴こえることを「絶対音感(ぜったいおんかん)」と言って、そうでない人のことを「相対音感(そうたいおんかん)」と言うんだ。そして、どんなに転調しても「C」を「ド」と呼ぶことを「固定ド(こていど)」、転調すると「ド」の位置も変わる呼び方を「移動ド(いどうど)」と言うよ。
ちなみに、厳密にはもうひとつ「機能ド(きのうど)」というものもあるんだけど、これはもう少しあとになってから出てくるので、今は覚えなくてもいいよ。
とにかく、これから先、僕の教室で「ドレミ」って言ったら「移動ド」、「階名」としての呼び方だと思ってね。
今回の授業はここまで。次回はいよいよ楽譜の読み方を勉強するよ。でも大丈夫、次回はまだ「ドレミ」の階名で勉強するから、しっかりついてきてね。
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