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【山雅2022レビュー】vs鳥取|J3第11節

2022.6.5
J3 第11節

ガイナーレ鳥取
×
松本山雅FC

※本ブログ投稿時点で、第14節まで終了していますが、最新の試合についての内容ではありません。
※第12節以降は観ていない状態でのレビューとなっています。

スタメン

鳥取(緑):4-4-2
山雅(白):4-3-3

試合展開

今回は振り返りません。


試合結果

ガイナーレ鳥取 0

松本山雅FC    0

ハイライト


縦に速く、とは

「目指しているのは、縦に速いサッカー」
「前選択」
「何百本もパスを繋ぎたいというわけではない」

というような、選手や監督のコメントを度々見かける。

縦に速いサッカーとは、具体的にどういうものを指しているのかと考えると、

  1. ボールを奪ったら、カウンターで素早く攻め切る

  2. 後ろの方でパス交換をしつつ、機を見て縦パスを通すことで攻撃のスイッチを入れ、一気に攻め込む

大体この2つだと思う。これらを、今回の山雅と照らし合わせて考える。

①カウンター

まず、カウンターについて。

この試合の山雅は、カウンターを狙っているとは考えづらい人選になっていた

山雅はこの試合で4-3-3を採用していた。
このフォーメーションでカウンターを仕掛けるなら、一番早いのは、ボールを奪ったら、WGやIHがそのまま上がっていく形である。

カウンターを最速で行うことを考えた場合。

そう考えると、WGやIHに起用したい選手は、

WG:スピードがある選手や、ドリブルがうまく、サイドで1対1を仕掛けて突破してくれる選手
IH:ボックストゥボックスの選手や、ドリブルスピードがあってグイグイ運んでいける選手

ということになる。しかし、山雅の人選は、

WG:菊井、榎本
IH:佐藤、安東

であった。それぞれの選手の特徴は、大体の印象だが、

菊井:スピードがあるわけではなく、ドリブルもそこまで得意ではないが、ボールを持った時のアイデアがあり、味方を使うのが上手いタイプ
榎本:味方が上げたクロスをゴールへ叩き込むタイプ
佐藤・安東:パスを受け、ボールをうまく捌いていくタイプ

であり、起用したいタイプとは全員異なっている
強いて言えば、佐藤はドリブルでボールを運んでいくのは上手な選手だが、スピードがそこまであるわけではない。

つまり、人選を見る限りでは、カウンターはそこまで意識していないということになる(逆に、カウンターを意識しているのだとしたら、違和感のある人選になっている)。

この人選がカウンターにおいて悪影響を及ぼしてしまっているシーンがある。
48'54"の、安東がボールを奪ってからのシーンである。
(後半は5-3-2に変更していたが、このシーンが一番分かりやすいと思ったので、紹介する)

安東が菊井にボールを預けた時、菊井・小松と相手DF2人で、一瞬2vs2になっていて、かなりのチャンスである。
菊井の正面には、ドリブルで運んでいけるスペースが広がっている。

しかし、菊井は自ら攻撃をスピードダウンさせてしまう。
当然、相手の戻りが間に合ってしまう。

菊井ではなく横山であれば、ボールを受けたらそのままドリブルで仕掛けていって、カウンターを成立させることができていただろう。
横山は代表活動中で不在だったが、もしチームがカウンターからの得点を期待していたのであれば、例えば外山をWGで起用すれば、横山のような役割をこなせていたかもしれない。(違う気がしてきたので、取り消します)
あるいは、この試合はメンバー外だったが、濱名でもよかったと思う。

②縦パスからのスピードアップ

縦パスで攻撃のスイッチを入れるということについて。

最初に触れた、選手や監督のコメントを振り返る。

「目指しているのは、縦に速いサッカー」
「前選択」
「何百本もパスを繋ぎたいというわけではない」

これらのコメントから推測できるのは、

パスを繋ぐことに関してはあまり考えずに、前へボールを進めていくことを最優先に考え、スピーディーな攻撃をしていきたい」

と考えているのではないか、ということである。


結論から言えば、縦にパスを通していきたいなら、横にもパスを繋いでいかなければいけない


まず大前提として、縦パスは守備側が最も警戒するパスコースである
自分達のゴールに近づいて来られることを避けたいからである。
なので、「縦に速い攻撃をしよう」と意識するだけでは、縦に速い攻撃はできない。

縦パスのコースを生み出すために必要なのは、「複数のパスの選択肢を作る」ということである。
縦パスだけではなく、横、斜めなど、複数の選択肢を作ることで、相手に「どちらをケアすればいいんだ」と迷わせることができ、パスコースが生まれてくる。

(赤のチームが下から上に攻める場合)
複数の選択肢で相手を困らせる。

もちろん、それだけで簡単に縦パスを通せるようになるわけではない。
複数の選択肢の中でも、最も危険だと思われる選択肢を消すように相手は守ってくる。そのため、縦パスのコースは、やはり消されることが多い。

縦パスを優先してケアされる。

そこでさらに必要になってくるのは、「相手を左右に揺さぶる」ということである。
横へのパスを選択すれば、新たな縦パスのコースが現れる。

新たな縦パスのコース

しかし、当然それも相手は消してくる。

パスコースを切りに来る。

そしてまた横へパスをする。これを繰り返すと、相手が対応しきれない瞬間が生まれる

相手が対応できなくなるまで揺さぶる。

その瞬間を見逃さず、縦パスを通すことができれば、攻撃のスイッチを入れることができ、攻撃が一気に加速する。

縦パスが入り、攻撃がスピードアップする。

相手が対応しきれなくなるような瞬間を作り出すためには、早いテンポでどんどんパスを回していかなければいけない
ゆっくり回していても、対応する時間を相手に与えるだけになってしまう。

早くパスを回していくためには、選手たちのポジショニングにこだわっていく必要がある
縦や横にパスを出したいタイミングで、味方がおらず、来てくれるのを待たなければいけない、というような状況では、時間がかかりすぎてしまう。

いてほしい場所に、いいタイミングで味方がおらず、パス回しに時間がかかってしまうと、相手に対応される。

まとめると、

縦パスで攻撃のスイッチ入れたい
→そのために、複数のパスの選択肢を作る
→その上で、相手を左右に揺さぶる
→揺さぶるスピードはなるべく早くする
→そのために、ポジショニングにこだわる

要するに、縦に速い攻撃をしたいなら、パスを繋いでいけるような構造(選手たちの立ち位置)を、チームとして作る必要がある、ということである。


鳥取戦において、揺さぶりがうまくいっていた数少ないシーンを紹介する。

51'53"の場面で、佐藤から菊井へのパスコースは、ボランチの世瀬が消している。
その後、外山や安東がパスの選択肢を作ることで世瀬を動かし、菊井への縦パスのコースが生まれる。
縦パスを機に一気に攻撃が加速し、惜しいシーンを作っていた。


今の山雅は、「縦への攻撃」という意識が強すぎるように感じる。
ただ、繰り返しになるが、守備側の選手たちは、縦を最優先に警戒しながら守っている。
攻撃のチャンスを作るには、相手を揺さぶらなければいけない。
縦に進むためには、パスを繋ぐ構造が必要なのである。

山雅の課題

これまでの試合における、山雅の得点パターンを振り返ってみる。

第1節 vs讃岐 2得点
 セットプレー、セットプレー
第2節 vsYS横浜 2得点
 カウンター、カウンター
第3節 vs鹿児島 1得点
 相手のミス
第4節 vs相模原 4得点
 カウンター、セットプレー、相手のミス、カウンター
第5節 vs宮崎 2得点
 カウンター、セットプレー
第6節 vs岐阜 3得点
 流れの中から、セットプレー、セットプレー
第7節 vs沼津 1得点
 カウンター
第8節 vs北九州 0得点
第9節 vs長野 0得点
第10節 vs今治 2得点
 相手のミス、相手のミス
第11節 vs鳥取 0得点

11試合で、
セットプレー 6
カウンター  6
相手のミス  4
流れの中から 1

この数字を見ただけでも課題は明確である。
また、8•9•11節は無得点だが、いずれも山雅がボールを持つ時間が比較的長い試合だった(と記憶している)。

つまり、ボールを持つ展開になってしまうと、山雅は点を取れない。
流れの中から点を取るためには、やはり縦パスを通すためのチーム作りが必要である。

余談

WGが菊井ではなく横山だったら…という話をしたが、菊井をWGで起用すること自体がおかしいわけではない。

確かに、カウンターを仕掛けたいのであれば、WGに菊井を起用するのは違和感がある。

ただ、例えば、菊井がサイドから中に入ってきて、その菊井に縦パスが入り、攻撃をスピードアップさせる、というような形を作れるのであれば、菊井のWG起用は有効である。

しかし、山雅は縦パスを通していくための構造にこだわっているようには見えない。


カウンターを狙っているとしたら、人選がおかしい。
縦パスからの攻撃を狙っているとしたら、チームとしての構造が甘い。
山雅の目指す「縦に速いサッカー」が完成するのは、まだまだ先になるかもしれない。




最後まで読んでいただきありがとうございました。

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