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オススメ本『東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』

学生時代、数学が致命的にできなかった。
国公立大学の受験を目指していた高校時代、大学入試センター試験の1か月前の模擬試験で代数幾何の結果が100点満点中5点だった。
担任から速攻で呼び出しをくらい、「お前、もう数学は諦めろ」と引導を渡された。
マークシートの数学の問題は、最初の問題が解けないと、後の問題も解けない仕組みになっている。つまり、5点というのは、鉛筆を転がして当てるような「まぐれ当たり」の1問か2問が正解だっただけで、まあ、0点と意味はほぼ等しい。致命的に数学、特に代数幾何がダメだった。
いまだに思う。「ベクトルのあの矢印って何だよ。不真面目か」と。

数学の苦手意識は、小学校高学年の頃からその片鱗を見せていた。
小学校のテストで初めて過去最低得点を大幅に更新したのは算数だった。
図形が特にダメで、頭の中で図をひっくり返したり、逆さまにしたりするのは、私がシルク・ド・ソレイユで空中ブランコに成功するくらい不可能だ。今でも、右と左がよく分からないし、地図が読めない。

そもそも、学校で習う数学に何の意味があるのか、さっぱり分からない。
微分積分が何になる。二次方程式がなんになる。
今も、数学は鳥肌が立つほど嫌いだけれど、ちゃんと仕事にもついて生きていけてる。それより、国語や英語の方がずっと私の人生の役に立っている。

そんな数学嫌いの私が、ネットでこんな本を見つけた。

どこかのネットニュースで、紹介されていた。
文系一直線のライター郷和貴さんが聞き手となり、「渋滞学」という分野を確立した東京大学教授の西成活裕先生に、中学数学を一から教わるという内容。
裏には「R16指定 中学生は決して読まないでください。5〜6時間で中学数学が終わってしまう『禁断の書』ついに発刊!」とある。

数学を学び直す本は今までもたくさん売られていて、書店で見かけたことがあった。触手が伸びたことは一度もなかった。
この本は、会話形式であること(この方法はベストセラーの「嫌われる勇気」でも使われていて、とてもわかりやすかった)、表紙のイラストがゆるいこと、「R16指定」「中学生は決して読まないでください」というちょっと笑えるキャッチコピーが、ツボにはまって、手に取った。

文系人間なら一度は思う「数学が何の役に立つのか」という聞き手の郷さんの質問に、西成先生は答える。

役に立たないのではなく、役に立てようとしていない。
数学の大きな目的は、日常の「困りごと」をクリアするために進化してきた。
先の見えない現代で、「論理的思考力」=「思考体力」を満遍なく鍛える必要があるし、そのために数学は最適なツール。

これ、マジで学校で教えて欲しかった。
「何で数学を勉強するの?」って、世の中の多くの学生さんは思っているのではないだろうか。私のように数学が嫌いなまま学校を出た人を加えると、世の中の大半の人はそう思っていると思う。

数学はああでもない、こうでもないって考え続ける力をつけるために学ぶ。
そうだったのか!

西成先生によると、「思考体力」とは、

①自己駆動力(思考のエンジン。「知りたい」「解決したい」という思い)
②多段思考力(粘り強く考え続ける力)
③疑い力(自分の判断や答えを疑う力)
④大局力(物事全体を俯瞰して眺められる力)
⑤場合分け力(複雑な課題、選択肢を正しく評価する力)
⑥ジャンプ力(ひらめき)

私は、どれも見事にない。そして、なくて今、苦しんでいるものばかりだ。
文章を書きたいと思っても、すぐ飽きてしまって、書く内容を考え続ける力がない。これだと思うと「おいおい、それは違うぞ」と誰かに指摘されるまで、イノシシのように突っ走ってしまって、大抵、失敗する。全体を見渡すことができなくて、自分の考えが全くの筋違いだと気づかない。複雑なことや、難しいこと、面倒なことは避けて通りたい。
ひらめくことなど、ほとんどない。
考えの薄っぺらさが原因の失敗なら、数限りなくある。
こんなことなら、ちゃんと数学、やっとけばよかった。
数学を毛嫌いして、今日ほど後悔したことはなかった。

本は、西成先生の話力と聞き手の郷さんの質問力で進む。
先生は、野球から星野源まで使って、中学数学を解説してくれる。
それでも、数学嫌いの私には「え? 今何ておっしゃいました??」と頭が真っ白になりそうになるところもある。
「思考体力アップ!」と唱えながら、もう一度、文章を読み返し、自分なりに考える。
「お! わかった!」と思う瞬間がある。わかるって気持ちがいい。

気がつけば、2時間くらい、本と格闘していた。
いつもなら、30分もしないうちに、眠気が来るのに、全然こない。もっと知りたくなる。わかりたくなる。

さっき最後の章を読み終えた。
これで急に数学ができるようになったとは思えないけれど、もう数字を見ただけで逃げ出したくなるようなことは、なくなった。
数学の問題を見たら「どれどれ、ちょっと貸してみな」って言えるくらいには、数学へのハードルが下がった(中学数学に限る)
それから「考えるのって、楽しいのかも」って少し思い始めたところだ。

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