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資料作成の参考になるIR資料を探してみた~事例と探し方

ルバートで資料作成講座を担当する大塚です。
本note記事では、ルバートと並行して働く外資系企業でのファイナンス実務経験から、わかりやすいIRの紹介とその探し方をお伝えしたいと思います。
わかりやすいIRを見ることで、業界ごとの効率的・効果的な財務データの見せ方を学ぶことができるため、会社で数字に関わる方々には非常に有益な記事になるかと思います。
なお、過去に書いたファイナンス実務でよく使用するグラフに関しての記事『4つのグラフで予算と実績のギャップを可視化する~ファイナンス(FP&A)実務から~』もご参照ください。

Webで見つけたまとめ記事 – ベンチャー・ネット系企業のIR

Web上で“IR わかりやすい”などと調べると以下のようなサイトが検索結果の上位に出てきます。

• 事業戦略・企画に関わる人は参考にしたい決算説明会資料10選
https://note.com/daiwwmm/n/ndb1f7c215613
• 個人的に気に入ってる決算説明会資料(ネット系企業9社
http://takanoridayo.blog.shinobi.jp/Entry/298/

IRをよく見てみると、ベンチャー企業やネット系企業(SaaS)という切り口でIRが紹介されていました。

実際にベンチャー企業やネット系企業のIRは非常に優れており、例えば最近(2020年12月22日)WealthNavi社(https://www.wealthnavi.com/)のIR資料は非常に分かりやすくまとめられています。
以下はIR資料のリンクと、わかりやすい部分についてのコメントです。

• WealthNavi – 成長可能性に関する説明資料(2020年12月)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/7342/tdnet/1914736/00.pdf

p8 メッセージと連動した強調が使用されている

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p24 スライドが抽象 -> 具体の軸(横軸)で整理されており、矢印を使用した強調が使用されている。

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このように、比較的新しい業界に属する企業のIR資料はわかりやすい傾向があります。


その他の業界のわかりやすいIRの見つけ方

前述した通り、ネット企業やベンチャー企業のわかりやすいIRは比較的に容易に見つけられることが解りました。
しかしながら、KPIの違いから業界毎に財務分析に良く使用する資料は異なります。

例えばグローバルな製造業においては為替差損の影響やビジネス・製品構成の違いを示す必要があります。
また、成熟産業であれば売り上げの伸びよりも利益率に大きな注目が集まることからウォーターフォールを多用します。

ではその他の業界のわかりやすい事例はどのように見つければよいのでしょうか。

わかりやすいIRを見つける他の切り口

事例を紹介した後となりますが、本記事においては“わかりやすいIR”を以下の2つの要件で定義します。 

a. 一人歩きする
→発表者の説明がなく資料単体として書き手の伝えたい意味合いを読み手が誤解なく理解できる
b. すぐに理解できる
→時間をかけて読み解かなくても伝えたい内容が明確に入ってくる

上記の定義・要件をもとに、わかりやすいIRを探す手法として、個人的に以下の2つの切り口をお勧めします。

①ファンドが少数株主として投資しており、上場・開示している企業
②コンサル出身者が創業した企業


ファンド投資先企業(開示企業)

ファンドが比較的大きく投資している/いた企業のIRは比較的わかりやすい傾向があります。理由としては、おそらくプロ経営者が送り込まれていたり投資元から強く開示を求められるためと推測できます。

具体例として、Bain Capitalの投資先一覧(http://www.baincapital.co.jp/result/investment/)にある企業を見てみましょう。

• すかいらーく 2020年度第3四半期 決算説明資料(2020年11月12日)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3197/tdnet/1903364/00.pdf

p3 メッセージにあったグラフ(複数の折れ線グラフ)が使われており矢印による強調と定性で補足情報が追記されている

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• マクロミル 2021/6期 Q1決算説明資料(2020年11月12日)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3978/tdnet/1903485/00.pdf

p7 メッセージが記載されており、ウォーターフォールチャートを使用していることで営業利益減益の要因を容易に理解できる(強調されているとさらに良い)

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• 雪国まいたけ
https://ssl4.eir-parts.net/doc/1375/tdnet/1898169/00.pdf

p30 株主還元が小見出しを使用しMECE感を持ってまとめられている

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コンサル出身者が創業した企業

ファンド投資先以外にも、コンサル出身者が創業に関わった企業のIRも非常にわかりやすい傾向があります。これは、社長や取締役を務めるコンサル出身者が体系的なスライド作成のトレーニングを受けていることに依ると考えられます。
前述のWelthNavi創業者である柴山和久氏や、まとめサイトで紹介されていたラクスル社の松本恭攝氏もコンサル出身者であることからネット系新興上場企業というよりは、コンサル出身者が創業に関わる企業のIRがきれいな傾向がある、という風に考えたほうが良いかもしれません。

その他の事例を以下に2つ列挙します。

• ライフネット生命 2020年度 第2四半期 決算説明資料(2020年11月22日)
https://ir.lifenet-seimei.co.jp/ja/library/earnings/main/0/teaserItems2/0/linkList/0/link/presentation_2Qfy2020_final_ja.pdf

p15 縦軸でKPIを分解しMECE感を持って列挙しており、スライドの左から右に抽象 -> 具体の流れで並べている

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• レアジョブ 2020年3月期 決算説明会(2020年5月14日)
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08881/134ab3d2/379d/4843/87c7/53f4d1373a9a/140120200514413657.pdf

p8 グラフ・数字・文字情報を組み合わせて分かりやすく詳細を記載している

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まとめ

この記事ではわかりやすいIR資料の切り口として、以下の2つを紹介しました。
①ファンドが少数株主として投資しており、上場・開示している企業
②コンサル出身者が創業した企業

各社のスライドは今回紹介したページのみならず、その他のスライドでもわかりやすい表現が多用されています。
特に雪国まいたけのスライドは非常に分かりやすくtwitter等でも話題になりました。

皆さんの所属する業界でファンドがかかわっている企業やコンサル出身者が創業に関わった企業を見つけ、みなさまの業務の参考にしてみてはいかがでしょうか。


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第2回 入門編②2つの比較「ストアカ」をお薦めするスライド
第3回 入門編③図解の基本形「コーチングアプリ」をお薦めするスライド
第4回 基礎編①線グラフの基本 企業の変革を促すスライド
第5回 基礎編②スライド構成と図解 新規事業を提案するスライド
第6回 Before→After OBOG版(前編)~霞が関文学編~
第7回 Before→After OBOG版(後編)~霞が関文学編~
番外編 『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』
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2.ロジカルな図解のつくりかた(後編)
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5.ターゲットを絞り、刺さる資料をつくるコツ
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