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【リサーチ旅・山梨】オリンピック通りの女将が教えてくれた、山梨独特の習慣「無尽」

演歌の企画で山梨でロケをすることが決まり、「とりあえず調べてみて」という段階でリサーチを進めることになった。演歌と言えば、夜の街、酒、人・・・。山梨で、これらのキーワードが一本の線で結ばれる場所はどこか。いつものように、理想のゴールを想像してみる。が、すぐに思い浮かばなかった。それでも、効率よく調べるためにまずは辺りを付けたい。

ネットで地道に探すよりも、地元の顔役に聞いた方が早い。甲府の繁華街は路地横丁が幾つも行き交っているのが特徴。まずは、この横丁に一番詳しい人を探すことにした。その日のうちに繋がったのが、「甲府ん!路地横丁楽会」(こうふんろじよこちょうがっかい)という、甲府市街地の路地や横丁にある飲食店を紹介している団体だ。代表者に話を聞くと、最も古い店があり、そこの女将が詳しいから電話を繋いでくれるという。

甲府の路地横丁の一つで、昭和39年に出来た、その名も「オリンピック通り」。この通りで最も歴史ある店が「くさ笛」だ。昇仙峡近くに住む女将が春は山菜、秋はキノコを自ら収穫して作る家庭料理が自慢。店の名前は島崎藤村の『千曲川旅情の歌』の一説が由来だそう。品のいい女将が電話で対応してくれた。

女将から、興味深い話を聞いた。山梨ならではの、酒の席の風習があるという。「無尽(むじん)」。これは、友達同士や同僚同士で集まって飲む時、毎回お金を出し合って積み立て、まとめて旅行に使ったり、メンバーの誰かが物入りになった時に助けたりするための、独特の融資システムだという。持ちつ持たれつ。その「無尽」の起源はなんと、鎌倉時代までさかのぼるという。

現在は、この「無尽」が飲み会の名前に使われたり、山梨の女子会を表す言葉として受け継がれていると聞いた。「無尽」に所属していれば、ピンチの時に助かる場合もある。来月もまた集まろうねと、人の繋がりが強くなる。山梨の生活に根付いた、独特の習慣。

もちろん、この情報はネットで探すこともできたはずだ。それでも、人から人へと繋いでもらい、地元の顔役に直接聞いてみることで、電話先から「無尽」の様子や風景、香り、色、音が伝わってくるような気がした。遠回りなアプローチかもしれないが、こうすることで番組が「もう一歩」面白くなるなら正しいはずだ。私の仕事にはどうしても必要なステップだと思う。


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