君は僕を嘘つきだと言った

君の目に僕は、どう映っているだろうか。きっと大層、醜く見えるでしょう。僕は頑張れない。

他人の幸せよりも自分の幸せだけを考えた方が、生きることが楽しくなるなんて、誰も教えてくれなかった。誰かに嫌われるのが怖くて、瞬きさえも僕の罪だと怯える毎日が、途端に崩れて消えていく。もう、胸を張って、僕は正しい人間だ、とは言えない。罪悪感なしに笑うことも出来ない。痛みもなんにもわからなくなってしまって、あの日の僕を慰めることすら出来ない。けれど、それでも僕には、僕の明日を手放す勇気はない。
いつの間にか、ナイフに変わった手のひらは優しさを忘れて、僕はなんにも守れなくなってしまった。君は僕を嘘つきだと言った。僕は僕を嘘つきだと言った。僕は僕を許せないことすら許せてしまって、もう全部どうでも良くなった。
誰かのために必死になって、それを幸せだと錯覚していた僕のこと、可哀想だと思うんだ。君は僕に裏切られてしまうよ。もう諦めていいんだよ。君は何も悪くない。誰にも愛されなかったことも、上手く人を愛せなかったことも、全部君のせいじゃない。だから君もはやく目を覚まして。優しさなんて誰の薬にもならない。僕の毒になるだけだったよ。ごめんね。幸せになってしまって、ごめん。いつか報われるかもしれなかった君のこと、諦めてごめん。ごめんごめんごめんごめん。どうせ幸せになったって、いつまでも君が纏わりつくんだ。胸を張れない僕になったこと、恥ずかしくて仕方がないんだ。

嘘じゃないって嘘ついて、君はどんどん遠ざかる。
「僕等わかりあえないのに、どうして隣にいるんだろうね」
なんて、僕はずっと君と分かり合えていたつもりだったよ。だからさ君が正しいね。今僕が証明したんだ。
君はいつか、僕を忘れて大人になるんだね。ずっとここに立ち止まって、君を想い続けていたいよ。果てしない草原で、君の絵を探すんだ。春が来たら風が吹いて、僕ごと攫って消えてくれ。
僕の隣じゃなくていいから、どうか、昔みたいに笑って欲しいんだ。

僕には抱きしめられないから

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