ようやく

どこまでもついてくる月、流れの速い雲、音のなる葉っぱ、丸い地球
あの頃不思議に思っていたことが、何となくでそりゃそうじゃん。に変わっちゃったことを、たまに寂しく思ったりする。

裸足で走るほうが速いもん。
でもそれじゃいつか血まみれになって走れなくなってしまうこと、あの頃は知らなかった。
世界は今日も回っているってそれすらもいつか忘れる日が来る。星の見えない街で空を見上げるようになる。私が死んでも世界は回るって、そんなありきたりな言葉で何が救えるんだ。君が死んでしまっても、何も変わらずに世界が、今日が、続いていくことの方がずっと、ずっとずっと怖くて辛い。
まだこれからなんだ。やっと始まったとこなんだ。もうダメだと思ったとこから、自分の力じゃ無理だったけど、天使の梯子は降りてくる。何一つ忘れたくない。そう思える日々をようやく手に入れた。いつか好きじゃなくなってしまっても、きっと、なんにも価値がなかったなんて思ったりしないよ。

忘れたい言葉。
育て方間違えたって。どうしてそんな風になっちゃったのって。昔はこんなんじゃなかったのにって。それからずっと人生は復讐で、私は私を作ったお前のことを生涯許しはしないと、私自身に誓ったんだっけ。こんなになっちゃってごめんね、と、私がずっと謝りたいのは、何もかも信じてたあの頃の私に対してであって、迷惑をかけた世界のことでも、私を呪っている全てでもない。戦う私を抱きしめるのは、いつか生きるのを喜べるようになった私でありますように。

大人はわかってくれないけれど、大人しか頼れないことがあったよ。大人は信じてくれないけれど、大人しか信じられないことがあったよ。生きていくことは醜くなることだと、大人になるのは穢れていくことだと、そう思わずにいられなかったこと、自分のせいにしなくていいよ。
どんな大人になりたい?
そんなこと考えたくもなかった。今だってそれは変わらない。大人も世界も怖くって、逃げ出したいことばかりだけど、私は今がなんとなく好きで、世界に少し期待する。

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