私なんかに君は救えないって言い訳だった。

「私が、あなたが、どんなに変わったとしても、私はずっとあなたの味方でいるからね。」

 ただ真っ直ぐに君を救いたかった。私も救われたかった。薬じゃなくて、自傷じゃなくて、本当の救いが欲しかった。中学生だった私は、君の救いになれたらいいのに、と、無責任に君の心を背負った。未来なんて1秒先のことも分からないのに。

 別々の場所で私たち、ひとりきりでやっていけるのかな。不安なままさよならをして、私はなんとなく楽しい日々を送ることが出来ていた。が、君は新しい場所で新しい敵をつくってつまらなそうにしていた。苦しそうにも、なっていた。その反動か、ただの憧れか、君は悪い友達(彼女からしたらかけがえのない友達なのかもしれないが)もつくって、気がつけば非行少女になっていた。
校則違反のピアスをして、未成年飲酒、喫煙を見せつけるようにSNSに投稿した。それを指摘されたら君はきまって「僻んでるだけなくせに」「人の人生に口出しするな」と言った。
今の君は、最高にカッコ悪いよ。ショックだった。救われたいならどうしてそう、自分の人生がより難しくなるようなことをするんだ。私が救えていたら変わってたかな、どこかで気づいて止められなかったのかな。君が非行に走り続けるその姿が、悲しくて悲しくて仕方がなかった。けれど、私の中で君への愛が確かに冷たく凍りついたことが、いちばん悲しかった。こんなことで冷める愛で、君を救おうとしてたんだ。そりゃあ、そりゃあ救えないよな。綺麗事ばかり言ってごめんね。私は汚いから。

こんな私と、そんな君で、ある日電話をすることになった。本当は、いつだってできたけど、来週テストだから、締切がもうすぐだから、と、後にあとに伸ばしてきた。怖かった。君が電話越しに煙草なんて吸っていたら、お酒なんて飲んでいたら、お前も飲めと、吸えと言われたら、私は否定する。そうしたら君はどうする?わからなくて怖かった。ただ嫌われたくなかった。
電話の日、君は思った通りお酒を飲んでいた。まるでその事に触れて欲しいみたいに、酔ってきただの、お酒美味しいだのダラダラ言っていた。ここで何も言わなかったのが間違いだった。君はとうとう私にお酒飲んでみなよとかおすすめのタバコ教えてあげるよなどと言ってきて、もう何度電話を切ろうと思ったか、でも切らなかった、馬鹿だったな。それでも私が君の非行を深く聞き出さないのが気に食わないのか、お酒と薬同時に大量摂取したらどうなるんだろう、なんて言い出して、もう愛想笑いも出来なくて、何も言えずに数分たって、その後の話はもうなんにも覚えてない。またね、って言った気がするけど、もう電話はしたくない。いや、直接言うのは怖いから、電話の方がいいかな、タバコもお酒もやめなって、最後にそう言って終わろうかな。

私なんかに君は救えないって言い訳だった。君の今を知ってから、もう会いたくないって、関わりたくないってずっと思ってた。君を守るよりも先に私が汚れないことばかり気にしてた。私はいつも私の事。ごめんね。ごめんね。君のこと止める勇気もなくてごめんなさい。嫌われるのが怖くて、でもそんな人と同じだって思われるのも怖くて、とにかく離れたいと思った。もうすぐ終わりだよ。好きだから何も言わないんじゃなくて、好きだから止めなきゃいけないこと、今更気づいたの。
君は間違ってる。
間違ってる。気がついて。いや、気づかせなくちゃいけない。
そんなことしたって不安は消えないの、今の君が証明してるじゃん。

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