東大理系数学2023を解く 大問1

2023年に実施された東京大学の入試問題のうち数学(理系)の問題について思考を交えながら解き進めていく。

大問1

分野は積分と極限で割とちゃんと難しいのだが、他の大問を見ると合わせたいと思ってしまう。というのも解法の筋道さえ立てられたら、計算量はそこまで多くなく、ミスが発生しづらいからだ。
ではやっていこう。

まず(1)だが、見たら分かる通り積分できない。普通に考えて絶対値のついてる関数は絶対値を外してから積分せざるをえないし、そもそも$${\sin{x^2}}$$の積分なんてできない。
でも、この問題で求められてるのは積分することではなく、この積分を不等式評価することだから、無理に積分することを目指すのではなく、何かしらグラフから評価するか中身の関数を上手く評価するかのどっちかを目指したい。
そして今回、グラフを描くのはどう見ても骨が折れるので、関数を評価していこう。
となると、真っ先に考えるのが次の評価であるが、どう見ても甘い。

しかし、$${|\sin{x^2}|}$$が絡む以上、評価はこれが限界である。故に中身の関数を置換によってもう少し違う形に変えたい。となると、やっぱり1番のネックである$${x^2}$$を置換したい。すると次のようになる。

こう変形した上で中身の関数を評価するのだが、ここで$${|\sin{x}|}$$を評価しようとは思ってほしくない。というのもあくまで置換をしても積分の本質は変わらないから先ほどと同じ$${|\sin{x}|}$$の評価では同じ結論に辿り着くだろうと感覚的に分かっていてほしい。

実際一致する。

となると評価する部分はもう$${\frac{1}{2\sqrt{t}}}$$しかないからここを評価していく。
すると、次のようにして証明したい不等式が出てくる。

ここでのポイントは1つでsinの一山の面積が2になることである。暗記するほどではないが有名事実として知っておくべきだろう。
本当は$${|\sin{t}|}$$の周期が$${\pi}$$であることを述べてから積分区間を$${0→\pi}$$にずらして積分するべきだが、ここではわざわざする必要はないので省略しておく。

続いて(2)だが、どう考えても(1)を利用するだろう。利用する上で$${B_n}$$を$${A_k}$$を使って表すが、ここは難なくできるだろう。ついでに(1)の不等式を使って$${B_n}$$をはさんでおく。

こういった不等式の証明からの極限を求めるタイプの問題は99.9%はさみうちの原理を使うので今回も例に漏れずはさみうちの原理を使う。
手のかかる極限は基本、次の4つでほとんど解けるから、どれかを使う形に寄せていく。
①$${\lim_{x \to \ 0} \frac{sinx}{x}=1}$$の利用
②$${\lim_{x \to \ 0} (1+x)^{\frac{1}{x}}=e}$$の利用
③微分の定義の利用
④はさみうちの原理の利用
それで今回も…と思いきや今回は例外の⑤区分求積法を使う。
たまに使う場面はあるのだが、今回がまさにその「たまに」の場面である。
区分求積を怪しむポイントだが、たくさんの項の和(もしくは積)の形の時にだけ気をつけていればいい。特にΣ,$${n!}$$,$${n^n}$$が出てくると少しだけ警戒すればそれで十分である。(実際出てきても使わないケースだってある。)分かっているとは思うが、積の形が出てきたときには対数を取って和の形にすればいいだけである。
ここは区分求積法を使えばいいと分かっていればそこまで大したものではない。

区分求積法については下手に書きすぎると減点が怖いので式変形だけで済ませたり、「同様に」で済ませている。

これで終わりなのだが、2024年の東大理系数学大問1同様、やれることが決まっている問題だった。だからこそ取りたいが、数Ⅲが苦手だとやっぱり解けないのではないかと個人的には思っている。後続の問題たちを見るにやることの少ないこの問題では点を稼いでおきたいのではないだろうか。

大問2へ続く。

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