心理的安全性は組織文化の話ではないかもしれない

久しぶりに仕事の話をしよう。組織を守り成長させていくための話だ。
2019年の6月、私はWEBアプリケーションを開発する部署から、フロントエンドエンジニア部にチームリーダーとして異動した。元々いた部署に役職を持って戻ってきた形になる。

私は他2人のチームリーダーと、チームメンバーである4人と業務に携わるようになった。

当時このチーム制は新しい試みであり、同時にチームリーダーという肩書も新しいものであった。簡単に言うならこの制度によって組織が良い方向に進むのであれば、正式に稼働するようになるということだ。

私はメンバーマネジメントやプロジェクトマネジメント、教育手法などをいくつかの書籍で学びつつ、1つの概念を組織に導入することにした。すなわち心理的安全性である。

当時エンジニア組織の課題として、目の前の仕事に手一杯で不必要なことや実現可能性が低いことは実行しない雰囲気があった。営業の方々からは「出来ないって言いすぎ」とよく苦情を言われていた。
私はメンバーと組織の将来を踏まえ、「失敗や挑戦に対する心理的なハードルを下げること」を目標に組織作りをしていくことにした。これによってメンバーの成長も組織の成長も期待していた。

そのために「定期的なフィードバック」「課題に対する解決策の模索」「失敗に対する原因の特定と解決策」などを意識してコミュニケーションするようにした。少し本題から逸れるので具体的な行動はこれくらいにしておく。

結論から言えば上手くいった。
メンバーは困難に見えることにも他の方法を自ら考えるようになったし、失敗しそうになっても前もって私に伝えるようになった。私のチームはいつも賑やかで楽しそうだねと言われるようになった。賑やかなのは置いておくとしても、チームの文化はかなり良い方向に進んでいただろう。新人はスクスクと育ち、前例のないスピードで一人前になった。この組織作りは間違いではなかったと信じていた。

問題はチームが稼働し始めて数月後の秋に起きた。いわゆる炎上である。原因はチームのリソースを遥かに超えた作業がねじ込まれ、締め切りが確定してしまっていたことだ。どのようにしてこの状態になったか振り返っていこう。

作業工数を見積もる際、私ともう1人のベテランで全体の工数を割り出した。実はこの時点でいつもの環境と異なるという不確定要素があった。すでにリソースを超えていたので、私はすぐに案件を管理するディレクタに納品までに出来ること出来ないことを明示し、クライアントと相談していただくよう相談した。

結局いくつかのどうしようもない前提条件で全てを対応することになった。私と見積もりに参加したベテランのエンジニアで、溢れている作業を担当することになった。

すぐにチームの雰囲気は殺伐とし始めた。イライラした声が飛び交い、毎朝行っていたミーティングは無くなった。誰もが余裕を失っていた。挑戦という言葉は消え、誰もが出来る最低ラインをクリアすることに固執し始めた。デスマーチが始まった。

心理的安全性とはたくさんの概念が含まれている。私は挑戦や失敗に対する心理的ハードルを下げ、メンバーも組織も健やかに前に進むことが出来る組織の文化であると認識していた。

ではこの文化が醸成出来ていた、少なくとも醸成し始めていた組織において何故このような事態になってしまったのか。これは案件のせいでもリソースの問題でもない。

私はこの件を通して1つの学びを得た。心理的安全性とはチームの文化ではない。組織を牽引するリーダーの在り方そのものである。
私自身が確固たる意思を持ち、文化を守るために奔走することそのものが、メンバーの心理的な安全性を守る。私が余裕をなくすことは、私自身の心理的安全性を無くし、結果としてチームの心理的安全性を下げる。

全てが終わった後、私は1人のメンバーとミーティングをした。私はこの時退職することが決まっていた。彼は見積もりに参加したベテランのエンジニアであり、次のリーダーだった。何故このような状況に陥ったのか。どうすれば良かったのか。次はどうするか。
恐らく完全な答えは見つからなかった。結局のところリーダーの意思によるのだから。

心理的安全性。素晴らしい概念だと思う。導入したことは決して間違いではなかった。しかし組織の文化は守り続けなければいけない。作って終わりではない。文化は様々な外的要因で容易く失われる。確実に守る意思をリーダーは持ち続け、行動していかねばならない。

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WEB系エンジニアだった。今は無職。 幼少期より読書を続けている。 新しいこと、読書、アート、真夜中の散歩を好む。 日々感じたことを書いていく。

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