人材紹介会社が生産性を上げたいなら社員を大切にしよう
こんにちは、RtoRの井川です。
今日は、人材紹介界隈でエージェントビジネスをさせていただいている中で、普段からとてもモヤモヤすることであり、勿体ないなと思うことを書きたいと思います。
そのモヤモヤとは、「なぜ、人材紹介会社の中には社員を大切に扱えない経営者が散見されるのか?」ということです。
人材紹介会社の経営において、「働く人」が重要な成否を分けることは誰の目から見ても明らかなことです。特に、ホワイトカラーの中途採用領域を両面で支援するスタイルの会社では、個の力が売上にも大きくかかわってきます。
今後、エージェントビジネスが厳しさを増していく中で、社員を大切に扱えない人材紹介会社は優秀な人材を採用することも、定着させることも難しく、結果的にエージェントビジネスにおける成功を得ることはできないのではないかと考えます。
「すぐにクビにする会社、脅す会社」
社員を大切に扱っていない典型的な人材紹介会社としては、下記のような会社が挙げられます。
・入社後3カ月で初決定できなければクビ
・1カ月間KPI目標を連続で未達成だとクビ
・未達成だと容赦なく降格
・すぐに降格や解雇をちらつかせてくるマネジメントスタイル
・プロセスを見ずに結果だけを見て毎日詰めてくる
などなど、言いだしたらキリがありませんが、このようなことをする管理職や社長も、「クビを3人で出したら自分もクビ」くらいの覚悟でやっているかというと全くそうではありません。人を何だと思って雇用しているのか?と憤慨したくなります。搾取することしか頭にない愚かな経営者です。
人材紹介会社を経営する以上、適性がないコンサルタントに退職を促し、適切な職業に就くことを勧めること自体は必要な取り組みだと思います。
成果の出ない赤字社員をいつまでも置いておくと、会社全体が赤字になりいつかは倒産してしまいます。経営者にとって会社を伸ばすことも大きなミッションですが、「会社を守ること」はもっと大きなミッションです。会社がなくなってしまっては元も子もありません。
しかしながら、一律に「〇〇ができなかったらクビ」といったマネジメントスタイルは、自分がそれ以外の指標で判断できる能力を有していないと宣言しているようなものです。
人材紹介コンサルタントにも様々な適性や能力があり、その個々の適性や能力に則りマネジメントすることで、その社員のパフォーマンスを最大化することができるのだと思います。
「社員を監視する上司、約束を守らない社長」
私にご相談に来られる方々は、多くは人材紹介会社で働く人たちです。人材紹介の業界は一部の大手企業を除いては、その多くが中小企業で構成されています。
そのため、社長の価値観や上司のマネジメントスタイルが合わずに転職を検討される方が多い業界ではないかと思います。
例えばこの1年間で下記のような転職理由がありました。
・社長がスケジュールを全て確認し介入してくる(一定レベル以上のコンサルタントに、「誰に会っていたのか?」「そのアポは訪問する必要があったのか?」など、重箱の隅をつつくようなマネジメント)
・リモートワークが使えると聞いて入社したが、実態としてはほとんど使えない。使ったら白い目で見られる
・スカウトサイトを不正に利用することを強要してくる
・賞与やインセンティブがあると聞いて入社したが、実態はほぼ出ていない
・とにかく疑い深い
このように、すぐにクビにする訳ではないものの、とにかく粘着質で性悪説なマネジメントをする会社もあります。
一定の感受性を持っている社員は、「あれ、この会社ちょっとおかしくないか?」ということに数カ月もあれば気づきます。
そのような社員は一定期間働いてくれるかもしれませんが、基本的にロイヤリティは低いのでいずれ市場価値が高まれば転職していきます。
性悪説でマネジメントを行うことで短期的には業績を上げるができるかもしれませんが、中長期的には成長を阻害する要因になると思います。
特に、人材紹介ビジネスにおいては、個々のコンサルタントの力量が売上を大きく左右します。業績を上げているコンサルタントも最初から好業績だったわけではありません。それまでに大きなコストを割いて育てているわけです。
コンサルタントを採用するコストや労力(募集費用やエージェントフィー、人事や面接官の労働力や給料など)、更には入社後にかかる教育コスト(管理職や周囲のメンバーが割く労力やコスト、管理職の給料が一番高い!当然育成対象の社員にも給料が発生する)を金額換算するととても大きな支出になります。採用しない方が儲かった!となります。
そのコストをかけて育てた社員をいとも簡単に辞めさせたり、ぞんざいに扱ったりすることで、折角育った他の社員もそのような社長のスタンスを見て絶望し辞めていきます。
苦労して採用したコンサルタントも辞めてしまい、徒労に終わった管理職も辞めてしまい、それを見ていた社員も希望を持てず辞めてしまい、結局年中採用活動を行い、採用数の割にはいつまで経っても大きくならないエージェントもあります。
「優秀な人材は働きやすい環境を求める」
今後、就業人口が減少する中で、優秀な人材の獲得や定着はどの企業にとっても大きな課題となります。
もちろん、給料が高ければいい、フルリモートワークでとにかく自由であればいい、KPI管理も目標管理もしなくていい、という訳ではないでしょう。
しかしながら、最低限社員を信じ、社員の働きやすさと生産性をしっかりと検討し、裁量ある働き方を与えることで、優秀な人材も生き生きと働き、その姿を見てまた優秀な人材が入社してくるという流れが作れるものと思います。
人材紹介の成果は個人にとってもボラティリティの高い仕事だと思います。
高い成果を上げた人を評価するのは簡単ですが、成果を上げることに苦しんでいる社員をいかに見捨てずに寄り添って成果を出させるか。その瞬間、その行為自体は「赤字行為」か、もしれませんが、そのようなスタンスであることを見た、その他の社員も安心して働いてくれるでしょう。
いざ自分が業績に苦しみだすと「ああなるんだ」と思うと、いつも業績のことばかり気になり一喜一憂してしまいます。そのような心理状態は長くは続きません。
生産性を高める上で、苦労して採用し育成した人材が、長く働きたいと思う環境を作ることは、新たな人材の採用よりも重要で効果的な取り組みです。
「だめなら採用すればいい」という価値観から脱却し、「人が辞めない組織作り」をすれば自ずと業績が上がると思うのは私だけでしょうか?
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