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【2020年プロ野球】埼玉西武ライオンズの7月を振り返る【梅雨の山賊、長き沈黙】

6月19日にようやく開幕を迎えたプロ野球。すでに7月と8月が終了し、シーズンの3分の1程が終了。そんな埼玉西武ライオンズの7月の戦いを見てざっくりと簡単に解説や展望、課題等を書かせていただく。

7月はオリックスとの5試合、ロッテとの6連戦×2=12試合(内中止1試合)、楽天との6連戦(内中止1試合)、ソフトバンクとの4試合を行い25試合を消化。11勝14敗1分で8月を終えた。

ここまでの試合を超ざっくり振り返りながら埼玉西武ライオンズの2020年の課題や展望なども記載する。

骨牙しか打たん!

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中村剛也・栗山巧しか打たん!

西武が誇る2人の同級生レジェンド中村・栗山。この2人の顕著な活躍が7月のチームを支えていた。

中村は7月月間打率こそ.265ながらも、OPS.903を記録し放った安打の半分以上が長打と安定した活躍を披露。

対する栗山も、6月ほどの活躍には陰りが見えたが、それでも月間打率.309、OPS.886、月間チーム2位の打点を挙げるなど勝負強い活躍を見せた。

打点や本塁打こそ山川が目立つ成績を残したが、前後を打つ森や外崎の不調が続き、歩かされる機会も多く打率も低調なものとなってしまった。

中村・栗山はリーグトップの成績ではないものの、毎試合コンスタントに安打を放ち、勝負どころでは2人揃って打点を挙げることもあるなどチームを牽引する活躍を見せた。

しかしこの2人はベテランである。6・7月のような活躍ができる保証はないし、いつまでも2人任せの打線でいるわけにもいかない。森・山川・外崎らをはじめとする、新世代の爆発が3連覇を目指す西武ライオンズには不可欠である。

盤石の豪腕コンビと綻びを見せた鉄腕

開幕から西武の『リリーフ』が圧巻の活躍を見せている。

これまでリリーフには尽く泣かされてきた西武ライオンズ。支配的な投球が可能なリリーフを複数枚揃える他球団のピッチングに蹂躙されるだけだった西武ライオンズについに怪物リリーフが揃った。

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平良海馬

今季15試合に登板し、ERA1.88、K/9 11.30、WHIP0.77、被打率は驚異の.067と圧巻のスタッツを残している。楽天戦で1度炎上したものの、日本人6人目となる160km/hを計測。抜群の安定感と制圧力で西武ライオンズ7回の男として君臨。

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リード・ギャレット

平良と同じく今季160km/hを計測しているギャレット。15試合に登板しリーグ2位タイの10ホールドを記録。ERAは0.59、K/9 10.57、WHIP0.85、K/BB3.50、被打率.167と圧巻のスタッツ。8回の男として支配的な投球を見せている。

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増田達至

平良・ギャレットという新星豪腕リリーバーが目立って入るが、彼らが霞むほどの成績を残しているのが増田。13試合に登板しERAは0.69、奪三振数こそ少ないものの、被打率は0.93、K/BB8.00、WHIPは驚異の0.38と安定感抜群。登板したら確実に試合を閉める抜群のクローズ力で9回に立ちはだかっている。

暴力リリーフを揃えるソフトバンクホークスと遜色ない活躍を見せる3人に加えて、小川や森脇も安定感ある投球を見せ、田村や伊藤もビハインド登板が多いが、十分な活躍を見せている。

ただその一方で、昨年大車輪の活躍を見せた鉄腕の活躍に綻びが出始めている。今季平良の台頭とギャレットの加入によって負担が軽減され、回途中などややポリバレントな起用がされている平井。その平井が7月はERA6点台で2度の敗戦投手となってしまっている。

理由としてはおそらく対左打者への攻め方に問題があったと考えられる。対左は対右と比べて1割以上高い被打率となっており、7月敗戦投手となった19日楽天戦と28日ソフトバンク戦を見るに、左打者へはスライダーとストレートの2ピッチとなっている点に問題があったと考えられる。対右であれば外へ逃げていくスライダーとサイドハンドからのシュート気味のストレートは有効であるかもしれないが、対左となるとそもそもサイドアングルはボールが見やすく、ストレートは左方向へ合わせれば安打になりやすく、スライダーはどうしても中に入って来る軌道となるため、空振りが奪いにくくなっているように感じる。

柳田や吉田正尚、中村晃に鈴木大地など左の勝負強い打者が揃うパ・リーグなので、今後左への対応は飛来だけではないが重要になる。そのために平井にはフォークを効果的に使って欲しいと考える。事実7月30日ソフトバンク戦では6点リードにも関わらず平井が試験的なものと思われる登板を敢行。柳田・周東の左打者に対しフォークを2球ずつ使い、2人とも難なく打ち取り今後の対左打者への攻めの活路を見せた。平井がダメとなると平良、ギャレットへの負担増加は必死であるため、なんとか復調を見せて欲しい。

先発とバッテリーはピッチセレクションに課題

リリーフは平井がやや不調だったが、全体的に見ればリーグ屈指のクオリティを保っていた。しかし先発は昨年に引き続き安定さに欠ける試合が続いている。

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ニールを筆頭に若手ドラ1トリオの高橋光成・今井達也・松本航・與座・本田で今季はローテーションを形成している。しかしニールに昨季ほどの安定感はなく、ドラ1の3投手は一度抹消され、7月22日ロッテ戦で好投を披露した高橋光成以外芳しい結果を残せていない。與座がプロ初勝利を挙げるなど好材料もあるものの全体的には弱さが目立っている。このような状態が続くことはリリーフの負担増による疲弊と投手スタッフの破綻にも繋がりかねないため、早急に対策を講じる必要があるだろう。

特に制球力は先発の崩壊を顕著にしており、近々の課題であることは火を見るより明らかである。しかし制球力は昨年安定していたニールを除けば、なかなか一朝一夕で改善できるものとも考えにくい。そうなってきた場合に、対処療法的にはなってしまうが、先発の崩壊を改善する方法としてピッチセレクトの改善を上げたい。

これはバッテリーでの話にはなるが、今季はピッチセレクトにも問題があるように思えてならない。特に問題となっているのはストレートとカーブの使い方である。代表的なものが今井達也である。プレシーズンから150km/h中盤を連発し、出力の上がった姿に期待がかかったが、いまいち成果が伴っていない。元々シュート成分が強く、グニャグニャとしたストレートを投げるが、質としては決して良いとは言えない。質の良くないボールは減らす、ただそれだけの話ではあるがそれにも関わらずストレートを続けて打たれるシーンを今季はよく見る。

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松本航や今井のカーブにも同じことが言える。千賀のカーブ(スラーブ)は質が良い球だがそれほど多く使ってはいない。ましてや松本のスローカーブや今井のカーブになれば基本的には割合として減らし、タイミングや目線を一度外す目的で使うのみがベターだろう。グレインキーほど球速・軌道共に外すか、ストラスバーグのような強度なら別だが。

松本に関してはスライダーやスプリットの精度もイマイチのため、2軍での調整を経た方が良いと思うが、今井はスライダーとチェンジアップは悪くないため、その2球種を中心とした組み立てでの先発登板を一度見てみたいところではある。

とにかく質が悪い球は減らししていくこと、そこを重視してバッテリーで組み立てを見直していくことで多少の改善は見られるのではないだろうか。

優勝が遠のいた7月、雨と気温と共に打線も上がるだろうか

7月は優勝が遠のくような1ヶ月であった。トータルの勝敗数で負け越してしまったことは勿論だが、昨年まで他球団にとって恐ろしいまでの脅威となっていた打線が静まり返っている。

リリーフのクオリティで1点さゲームを押し切って勝つことはできているものの、勝ち試合の7割に勝ちパターンが絡んできており、何試合もそんなゲームを続けていれば、夏場の佳境を迎えた時にリリーフのガス欠で、総崩れを起こすことは容易に想像できる。

だからこそ打線の復活が鍵であることは間違いないだろう。浅村が抜け、秋山も海を渡った山賊打線。おそらく過去2年レベルの破壊力を取り戻すことは難しいと思うが、これまでの打順の型を崩していくなどして、新しい山賊打線を作っていく必要がある。

今の成績を見た感じでは

1番鈴木
2番栗山
3番山川
4番中村
5番外崎
6番森森
7番スパ
8番源田
9番金子or木村

の並びが骨牙の調子が落ちきらないうちは有効なのではないだろうか。先日のソフトバンク戦で森が完全復調の気配プンプンだったため、4番に森である5番中村、今一つ調子の上がってこない外崎を6番に置いて自由に打たせるような打順も良いだろう。

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いずれにせよ、梅雨が明け気温が一気に上昇し夏らしい気候になっていくと思われる8月。気温の上昇とともに打線も調子を上げ、鉄壁リリーフとともに先発が踏ん張り、投打で暴れ回り3連覇を果たす、2020年版「山賊」埼玉西武ライオンズと言えるような試合が見たい。

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