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書評 2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択渡瀬 裕哉




米国大統領選の投票前に出版された本だが、バイデン当選となった今後を見通すうえで、極めて有効な1冊である。バイデン政権で、対中政策でと乱費政権からの大幅な政策変更はなされないというのが、著者の見方である。

同書で非常に興味深いのが、サンダース現象に見られるように、米国において社会主義・共産主義に対する脅威が薄らいでいる点である。ナチズムに対しては物を言う雰囲気があるものの、旧ソ連の収容所施策については、第二次世界大戦の独ソ戦で、「共闘」した過去もあり、言いづらい雰囲気があるというのが著者の指摘である。中国が台頭するなかで、この点は今後日本においても注意を払うべき点であろうと感じた。

後半は、日本が取るべき役割に割かれているが、やはり中国を軸にした戦略は外せないとの見方だ。著者が提言するのは、「アジア太平洋版NATO」の創設だ。グローバル化した現代では、1国のみで軍事を構築するのは難しく、他国との連携しつつ、やっていくしかないとの指摘。「リアリズム」に基づいた「対中戦略」が求められていると強く感じた次第。

#書評 #日米関係 #中国 #外交