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書評 世襲の日本史 本郷和人

同書を読み終わる前日の金曜日に、安倍首相が辞任を表明し、週が明けて、後任は菅官房長官に決まりそうな流れになっている。菅氏は秋田から集団就職で出てきて、夜学に通って、政権の中枢に登り詰めるという、安倍氏や同じ内閣の小泉、河野、梶山、江藤、祖父が吉田茂の麻生の各氏とは違って、「世襲」とは無縁な政治家である。

政界だけでなく、企業に目を転じれば、トヨタも一時期財界総理とも言われた奥田氏が社長務めた時期はあったが、今は創業家の豊田家出身の社長。中小企業に目を転じると、親子で経営に参画している例は多い。著者の本は今回初めて目にしたが、これまで手にしなかったのは、評価が分かれる点が多かったからだ。歴史を振り返るといっても、井沢元彦辺りの作品と一緒で、著者の「仮説」が幅を利かせている指摘が多く、何となく「敬遠」していた。

それでも、テーマが「世襲」ということで、面白く感じ、読んでみることにした。著者の見るところでは、「地位」よりも「家」に重きを置いてきたのは、日本の歴史の中にあるという。摂関政治から江戸時代までの流れを見ていき、「世襲」が行われ、明治維新において、能力主義が徹底され、優秀な人材が登用され、「世襲」が行われなかったという。「世襲」を切り口にして、日本史を振り返る内容は面白かったが、あくまでも著者の「仮説」の範囲にとどめて、歴史エンタテイメントとして読むのが良いだろうという印象だった。

#書評 #日本史 #世襲