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書評 貧乏はお金持ち 橘玲著

著者の本は割と読んでいるほうだが、これについては未読だった。初版は09年だが、その後も版を重ねて読まれている。個人が「雇われない生き方」の1つの方策として、著者が提唱するのが「マイクロ法人」の設立である。09年は前年にリーマン・ショックがあり、国内においてはいわゆる「派遣切り」が問題化、08年年末から09年年明けにかけて、「年越し派遣村」として、日比谷公園で炊き出しが行われた。出版された背景には、ますます会社に依存することが難しくなり、どのように会社に依存しない生き方、同書では「フリーエージェント化する社会」での個人の生き方について、その背景なども踏まえて、「マイクロ法人」の設立を提唱している。

アマゾンのレビューを見ると、「用語などの説明が多過ぎる」といった類の感想が多かったのだが、筆者によれば当初はノウハウ本を目指していたものの、それだとかなり専門的な内容に偏ってしまうことや、むしろファイナンシャルリテラシーを知っていれば救われる人たちが多かったことを踏まえて、リーマン・ショックや過去のエンロン事件などマーケットに影響を与えた事件、またCDSや第三者割当増資といったファイナンスの世界では知られている物の、一般的にはなじみのない用語について、事例を示しながら、やや詳細に説明に時間を割いたとのこと。

本業でこうしたファイナンスの部分に関わっている自分としても、この本はなかなかまとまっていて、恥ずかしながら改めてその意味合いを再認識することができた。これからの生き方の本としても、ファイナンスに関する基本的なことを知るためにも、非常に有用な本なので、個人的にはかなりおススメの1冊である。

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