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『わたしは、ダニエル・ブレイク』

最近観た映画で衝撃を受けた作品を紹介します。


『わたしは、ダニエル・ブレイク』

『I, Daniel Blake 』

カンヌ国際映画祭で2016年に受賞されました。


あらすじ

病気で働けなくなった主人公が煩雑な制度に振り回されながらも、人との結び付きを通して前進しようとする姿を描く。

老齢を迎えたベテラン大工であったダニエルは、ある時心臓発作が原因で倒れてしまう。 職を失い、医師からは休職を命じられたため、役所に行き、失業給付金申請の為カウンセラーと面談をするものの、職務可能と判断されてしまい、給付金は下りずにいた。 そんな時にロンドンから引っ越して来たばかりのシングルマザー一家であるケイティ達と出会う。 彼女達も道に迷って面会時間に遅れたために4週間程給付金の交付が降りない事が決まってしまう。

お互いに傷つきながらも家族同様に親睦を深めていくが、ケイティは子供達の為に万引きや売春に手を染めて行く。 ダニエルも給付金交付の矛盾にやきもきしながらの生活を続け、ついに家財道具をほぼ売り払わずにはいられなくなってしまう。 そんな時に不服申し立ての機会が訪れたダニエルであったが心臓発作で帰らぬ人となってしまう。 イギリスの社会保障の複雑さと貧困層の現実をユーモアを交えながら痛烈に批判した作品。

この作品は、

・イギリスの失業者に立ちはだかる制裁処置、官僚的なお役所仕事

・限られた給付で食べ物か、暖かい部屋のいずれかを選択しなければならない人々

・病気にもかかわらず、給付を受けるためにジョブセンターに出頭し、倒れた男性

・制裁処置の為、生活保護を失い、生きていけない人たち、屈辱のあまり自殺する人たち

・フードバンクでの食料の給付(実際にフードバンクで働いている人と利用者が出演している)

・中国のネット仲間から小包でスニーカーを手に入れ、転売して稼ぐ話

・貧しい女性による売春

など、実際にあった話が元になっているそうです。

私はこの作品を観ていて、役所が正直面倒くさいと感じました。

結局なかなか許可が下りないうちに、ダニエルの死が先を越してしまった。

とてもショックでした。

本作を見終わってからもなんだかもやもやして、

イギリスの福祉についていろいろ調べてみました。



FROM THE CRADLE TO THE GRAVE

という言葉を聞いたことはあるでしょうか??

“揺り籠から墓場まで”

という、イギリスを称えるときに使われていた言葉です。

建前では出産も医療も現在、無料ということになっていますが、医療制度は完全に破綻しており、深刻な病気になった場合、貧困層は手術を待っている間に死ぬ、と言われているそうです。

実際にダニエルも同じように帰らぬ人となってしまいました。

人の尊厳まで奪ってしまう社会、日本だけでなく世界

でも同じことが起こっています。

また、富裕層と貧困層の格差問題も気になりました。

イギリスには勝手に建物を壊してはいけないという法律があるみたいです。

ですが、水道、電気等のインフラに大きな問題があるので、住宅、オフィスを購入すると外側の見た目だけは残して、中は総入れ替えに近いくらいリファービッシュを行うんです。

また、ロンドンにはでカウンシルフラットといって第二次大戦後に建てられた低所得者、失業者、生活保護対象者に低額の家賃で貸し出された住宅があります。
見た目は高層マンションぽくて貧困層が住んでいるように見えません。

【写真】カウンシルフラット council flat

イギリスは富裕層向けの住宅地、貧困層が多く住む地域に分かれていますが、ロンドン中心部では、ブロック一つ、あるいは道一つで富裕層地区、貧困層地区とわかれていたりします。

住宅価格の高騰が10年以上続いていて、私営化されてしまったカウンシル・フラットの価格も高騰し、貧困層がさらに不便な場所へと移動を余儀なくされているそうです。

実際にケイティも大家さんに追い出されてしまっていました。

↓監督ケン・ローチ Ken Loachのインタビュー

引用

求職者に立ちふさがる制裁処置今日の職業安定所(ジョブセンター・プラス)は国民を助けるために存在するというよりは、むしろ人の行く手を阻むために障害物を置くのが仕事かのようです。ジョブコーチと呼ばれる人たちは、仕事を一緒に探すのが職務のはずなのに、今や求人情報を伝えることを制約されています。求職者との面談で制裁措置を下さなければならず、十分な件数をクリアできない職員は、「業務改善計画」を課せられます。ジョージ・オーウェル的ですよね?これらはすべて、職業安定所の職員や労働組合のPCSで活動している雇用年金省の役人から聞いたことです。証拠は豊富にあります。制裁制度のせいで、自分の収入では暮らしていけない人たちが出てくるためにフードバンクが必要になるのです。政府はフードバンクの存在に非常に満足しているようで、貧困対策の一環としてイギリスでもてはやされています。一体、どんな国を築こうというのでしょうか?

死に物狂いで助けを求めている人々に対する官僚的な手続きは残忍死に物狂いで助けを求めている人々に国家がどれほどの関心を持って援助をしているか、いかに官僚的な手続きを利用しているか。そこには、明らかな残忍性が見て取れます。政治的な武器として煩雑な手続きを用意して、故意に非能率的にしているのです。「働かないとこうなる。仕事を見つけないなら苦しむしかない」と言っているようなものです。

役所の煩雑な手続きは喜劇的だが、残酷さと悲劇が見えてくる役所の煩雑な手続きにはイライラするし、何とかやり遂げようとする姿は、もはや質の悪いコメディです。明らかにばかげているし、気が狂いそうになる。机を挟んで、もしくは電話越しにやり取りを交わす両者の行間を読み解いてみてください。喜劇的な要素と共に残酷さも見えてきて、最終的には悲劇的な要素が見えてくるでしょう。「貧しい者は自らの貧しさの責めを負うべし」というのは、支配階級の権力を守る言葉です。

自由市場はわたしたちを殺す真のポリティカル・コレクトネスとは自由市場に楯突かないこと、などと言う人がいます。私たちを殺しつつあるのが自由市場なのに、それを指摘するのは「政治的に正しくない」のです。誰も口に出さなくとも、この映画が証明しています。自由市場は私たちを殺す、私たちはそれを変えなければならない、ということを。

不平等の拡大は神の御業ではない不平等が拡大しているのは、神の御業ではなく、経済システムの仕組みがそうなっているからなのです。大企業を経営する人々は安い労働力を求めています。そして、もっとも安価に雇える労働者に仕事を与えます。当然、貧困は増加します。さらに企業は新しいテクノロジーを取り入れるので、人間の仕事はさらに無くなっていきます。それほど多くの労働者は必要ないので、ますます失業者が増えて、格差も広がるのです。

飢えや貧困を利用して労働階級を働かせ、富裕層は私腹を肥やす(本作は)広範な問題を含んでいると思います。古くは救貧法に見られる、貧民に何を与え、何を与えないかという考えにまで遡ります。労働階級は貧困の恐怖に駆り立てられて働き、富裕層はさらに私腹を肥やしていきます。政策を制定する際には、国民がやけになって低い賃金や不安定な職でも受け入れるように、意図的に飢えや貧困を利用してきました。貧民は自らの貧しさの責めを負ってきたのです。こういったことは、ヨーロッパにとどまらず他の国でも見られます。

資本主義下の政府は、労働者階級を今いる場所に留まらせる先進工業諸国ならどこでも、(本作で描いたとの)似た問題に苦しんでいるのではないでしょうか。政治的には、資本主義経済を支持する政府を持つ国々は、労働者階級を今いる場所に留まらせる手段を編み出します。貧しく、助けが必要な人々を痛めつけるシステムがその一例です。(ケン・ローチ監督)
http://www.outsideintokyo.jp/j/interview/kenloach/index.html
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/ken-loach/1000001279
http://www.webdice.jp/dice/detail/5372/

共同所有権、民主的なコントロール、計画的な経済が鍵格差を解消する唯一の方法は、計画的な生産です。家庭内で、食事が終わったら誰かが皿洗いをするように、皆で仕事をシェアするのです。皿洗いは奴隷にやらせて、他の人はただ座って見ている、ということでは駄目なのです。経済も同じで、みんなでシェアしなければいけないのです。生産や移動の手段、銀行など、何でも共同で所有する必要があると思います。共同で所有し、計画を立てるのです。現在のシステムが続く限り、大企業は過剰に生産し続け、化石燃料を燃やし続け、地球の資源を搾取し続けます。結果として、数世代のうちに私達は悲鳴を上げることになるでしょう。環境を守るには計画するしかありませんし、計画するには共同で所有する必要があるのです。ですから私は、共同所有権、民主的なコントロール、計画的な経済が鍵だと思います。地球上で安全に暮らすには、それしかありません。(ケン・ローチ監督)
http://www.webdice.jp/dice/detail/5372/
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/ken-loach/1000001279

紹介したこの作品はNetflixでも観れるので

気になった方はぜひ観てみてください!

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