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LOVE LETTER #7 想い出たちと 手を繋いで

7 t h  L O V E L E T T E R
想 い 出 た ち と  手 を 繋 い で


「 あ し た の ぼ く た ち は  ど こ に い る ん だ ろ う 」

あれから2年が経って。僕は、またこの言葉に辿り着いた。そして、幾度となく頭の中を駆け巡るこの言葉を、僕はただ、
心のいちばん奥で、声にならない声で、叫び続けた。
シアワセだったつい最近の日々たちが、なんだか急にとてつもなく遠い過去のことのように思えたりしちゃって。失ってみて
気づいた重さがずしんとココロを押し潰す。いつも失った後に気づいて後悔して、そんな愚かな自分を憎んだりもするけど、
あの時も今も大切に思うキモチに変わりはない。ただ、今まではあたりまえのようにその幸せは掌の中にあって。
失ってしまったからこそ、求めてしまうのかもしれない。しがみつかずにはいられないのかもしれない。人間って結局、
目に見える揺ぎ無き証拠がなくちゃ不安でたまらないんだ。自分の手の届く場所に、掌の中に、確かな事実がなくちゃ、
生きていけないんだ。
だけど、戻らないものは、仕方ない。失ってしまったものは仕方ない。
想い出にすがりつかずにはいられないよ。失った過去を求めずにはいられないよ。それは、きっと誰だって同じ。
カラダに一度染み付いた「シアワセな日々」は、そう簡単に捨てられるようなものじゃない。想い出にすがりつくことは大切
なこと。愛しき過去のアルバムをめくって涙するのは素敵なこと。
だから、手を繋ぐんだ。今まで作り上げてきた、かけがえなき宝物と云う名の想い出と。想い出は、振り返っていとおしむ
ものでも、何処かに置き去りにしてくるものでもない。一緒に未来へと連れて行くんだ。想い出と一緒に、次の未来を切り
開くんだ。
さあ、想い出と、手を繋ごう。


全てを愛するなんて今はしなくていいよ 
自分を愛する事が出来ればそれでいいよ

今を上手に抱きしめられなくたっていいよ 
歩いた過去を抱きしめられればいいよ

満足なんてしなくたっていい 
手の届く場所にある陰を認められればそれでいいよ

全部受け止めるなんて出来なくていいよ 
時には目の前の光に瞳伏せたっていいよ


まさに絶望の淵、限界の底に立たされ、幕を開けた四月。
でも、そんな毎日にも何とか慣れてきた感じ。まだ、あの頃のようには笑えないけれど、少しずつ、笑えるようになってきた。


戻れたら、って、思うよ。
戻りたい、って、願わずにはいられないよ。


でも、今は、きっと、前に進むことの方が大切だと思うから。
此処で、歩くことをやめたら、過去の幸せだった想い出まで手の中すりぬけていってしまう、きっと。
今までの毎日、必死で生きてきた。その想い出は、未来の自分を苦しめるため作ってきたわけなんかじゃない。宝物のような過去たち。そこに今も輝く光は、「現在」の自分を立ち止まらせるために積み重ねてきたわけなんかじゃないから。


振り返っていとおしむため?
思い返して涙するため?
苦しみながらすがりつくため?


チガウよ。前に、前に進むため。
変だね。いちばん大切なこと忘れてた。

新しい始まりは、これから歩いていく先は、まだ見ぬ未来は、誰だって不安でいっぱいだ。同時に数え切れないくらいの希望の種だって其処には確かに存在しているんだろうけど、種は、芽を出すまで目にみることはできないし、目の前に見えないものを信じて歩いていくのって、そう容易いことじゃない。
だけど、だからこそ、決して容易くない、手探りの毎日にも勇敢に立ち向かっていくために、僕たちは、いままで、精一杯。渾身の力を振り絞って、「幸せな想い出」っていう最高の武器を作り上げてきたんだ。

とはいえ、そう簡単にわりきることができないのもまた僕ら。
だけど、僕はいくよ。少しずつ、前に進んでみようと思う。


此 処 か ら 先 は 一 人 で 歩 く よ


確かに、前に進むことは恐い。闘えば傷を負うし、信じれば涙することもある。
けど、僕はまだ、闘っていたいんだ。
真っ暗闇の中を彷徨っていた数日間は、本当に辛くて、今でも思い出すと痛いけど、最近は、やっとなんだか光に似た何かがようやく見えてきた気がするんだよね。
でもまだまだぼやけてて、それが光なのかどうかさえわからない。


もっと、近づいてみよう


まだ、此処からじゃ見えないから。
だけど、僕は、信じてみることに決めたよ。
かすかに見えた白い光は、絶対に、新しい未来へと続いてるって。
だから、追いかけるんだ。
前に踏み出す事は恐いけど、追いかけなきゃ、終わっちゃう。
此処まで必死で歩いてきたんだ。こんなとこで、終わりに出来ないだろう?
まだまだ、このカラダ、行けるだろう?

時間は確かに一方通行だ。そのときの流れを未来に歩くことは出来るけど、過去へと逆戻ることは出来ない。だけど、心の中で、そっと、あの日の眩しい笑顔を訪れることは、いつだって出来るんだ。
これから、どんなに進んだとしても、今とはずいぶん遠い場所へと行ってしまったとしても、歩いてきた過去は、絶対に消えやしないから。
だけど、これから進む道は、自分で切り開かなくちゃ、みつけられない。


いまなら、まだ間に合うから。

きっと、ぼくは、まだ戦えるから。


可能性の扉が待ちくたびれて、その扉に鍵をかけ閉ざしてしまう前に行かなくちゃ。
「戻れない幸せだった過去」という最大の武器を右手に、流した涙を左手に。


前 ヘ 、 進 メ 。



さあ、深呼吸をして、前へと歩き出す支度を始めよう。

恐いのなら目を瞑ったままでもいい。どうしてもぬぐいされない不安に押し潰されそうならば、さあ、右手を出して。

僕と、手を繋ごう。

君はいつだって、一人じゃない。絶対に。



全てを愛するなんて今はしなくていいよ
自分を愛する事が出来ればそれでいいよ

今を上手に抱きしめられなくたっていいよ
歩いた過去を抱きしめられればいいよ

満足なんてしなくたっていい
手の届く場所にある陰を認められればそれでいいよ

全部受け止めるなんて出来なくていいよ
時には目の前の光に瞳伏せたっていいよ



さあ、もう一度走り出そう。かすかな光へと向かって。
心のいちばん奥で今でも輝き続ける、かけがえなき想い出たちと、手を繋ぐんだ。

そして、そっと瞳を閉じて、3つ数えるんだ。あせらず、ゆっくりとね。


未来を切り開く準備は整った。

もう、恐いものなんてないだろう?

前へ、進もう。

永遠に消えること無い思い出たちと堅く手を結びながら。
心の中に今も生き続ける、あの日の、もう一人の自分と手を繋いだまま。

恐くなんてないさ。
繋いだ手は、そう簡単に離れやしないから。

さあ、僕と、手を繋ごう。手を繋いで、また、走り出すんだ。

限りなき、未来へ。

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