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掃除していないせいで全身性感帯になりかけた話

【⚠虫が出てきます】

悲しいことに、部屋に虫が湧いた。らしい。「らしい」というのは、願望で希望で都合の良い夢だ。どう考えても確定で湧いている。たまたま部屋にいたとは考えにくい数が寝ていた私の体をかすめていく。眼鏡をかけてクリアになった視界の先で、先週出さないといけなかった生ゴミが詰まった袋を見た。

「ぶんぶんうるさいなぁ」と自分(+N匹)しかいない部屋で、現実を直視するために言ってみる。……助詞は「しか」で合っているといいなと呑気に思う。

恐ろしいことに夏場に生ゴミを捨て忘れるような怠惰な人間は、虫を殺すことさえ面倒くさがる。不快ではあるが、わざわざ殺すまでもなかった。

しかし、1週間経った今では積極的に虫を殺している。全身性感帯になりかけたからだ。虫によって。

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虫はぶんぶんうるさく、目障りな存在だ。しかし3匹以上だと話が変わってくることを知った。数がいると、私の体を一瞬かすめるだけではなくなる。一瞬が連続して起こる。つまりフェザータッチだ。それも常時、無制限で。はっきり言おう、気持ちいい。虫を湧かせた人間にしか、この敗北感は理解できないだろう。ちなみに3匹以上いるとこの気持ちになる。

快・快・快・快感!!!!!

相手が人だと、手の動きが見えるためどこに快感がもたらされるかわかってしまう。しかし、虫は小さく目に見えない。どこに快感がもたらされるかわからないのだ。しかも虫は24時間動ける。ずーっと触られている。起きているときはもちろん、寝ている間にも私の体はこの快感に蝕まれている。

「私は虫によって全身性感帯になるのか?」と恐ろしい疑問が生まれた。残念ながら、この疑問はまともな人は考えない。なるかもしれないとありえない未来に恐怖した人間しかこの発想は生まれない。

「え、虫によって?」

もう一度考えたが、なりかけてる。

「人間としてまずくないか?」
このままでは虫図鑑を見るだけで発情してしまう人になってしまうし、長年地雷だった触手攻めを受け入れかけている。なんなら今、「虫」の文字をみただけでちょっと興奮してる。

「掃除しよう」私は決意した。

掃除ができる人間だと虫相手に発情しなくて済む。人間的尊厳が守られる。なんて素晴らしいのだ。タイパ最高!私はバルサンを焚き、部屋の隅から天井まで汗をかきながら1日中掃除をした。

おかげさまで、性癖戦線ギリギリのところで食い止めることができた。そして今は虫を見かけるたびに焦って積極的に殺している。

みんなも人間的尊厳を失いたくなければ掃除をしよう。

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