初任給と永遠
初任給を使ってお世話になった人にプレゼントを渡す。
親に何かを買ってあげる。
というのに、ものすごく憧れていた。
バイトの初お給料を初任給としてカウントしないのであれば、わたしの初任給はポスターアートを買ってもらったときだ。
思いのほかに大きな金額を得て、喜びを通り越してポカンとしてしまったのだけれど、その時期にはもう、わたしの周りにかつてお世話になった人たちはいなくなっていた。
であるならば、自分のスキルアップのために必要なものを買おう、と。
そう思って、当時手が届かなかった画材を買い集め、描き比べて、集めて、集めて、そして、一瞬で初任給がなくなってしまった。
最低限の生活費を除けば、初任給のほとんどが画材に変わり、なんだったら食費に回すだけのお金がなくなってしまうほどだった。
机とベッドだけの空間に、大量の画材たち。
画材は消耗品だ。使えば当然減って、いずれはなくなってしまう。
初任給で買ったものとして、なにか残るものを買えばよかったと後悔してもときすでに遅し。
初任給で買った色鉛筆も油絵具も、いずれは消えてしまう。
大量の画材たち。
いつかはなくなってしまう、大量の画材たち。
一人暮らししている部屋の中で、己のひとりぼっちを強調されたような気がした。
ここから先は
1,240字
お読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは画材購入費として活用させていただき、さらなる研鑽を積んでいきます。