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おやじパンクス、恋をする。#174

 精神をコントロールするとか大袈裟な話じゃねえけど、梶さんと実際に会い、話をし、このおっさん好きだなとすら思った俺でも、梶さんの死に対する印象を自分で自由に決められるような気がした。

 そういう自分が、嫌な大人のようで、ちょっと悲しくなる。

 その夜には通夜が開かれるとの事だったが、俺は、そして他の仲間達も、遠慮することにした。さすがに忙しいだろうと彼女に対する連絡も遠慮してたんだが、開店準備が終わって一服してるところに、彼女から今日二度目の電話がかかってきた。

「マサ、飲み過ぎちゃダメだよ」

 さっき言い忘れたから、とあっけらかんと言う彼女に、俺は思わず笑いそうになり、それから何かひどく切なくなった。

「なあ、無理してんじゃねえの」

 育ての親、あるいはかつての恋人、が死んだんだ。彼女の振る舞いに、そう思うのは自然だろ。

「うーん、どうかな、自覚はないけど。でも、次会うときは、慰めてよね」

「はは、ババアのくせに。まあでも、任せとけよ」

「バカ」

 彼女の後ろでは慌ただしい雑音が聞こえていて、場の忙しさが想像できる。多分、会社の連中も来てるんだろう。

 何しろ、梶さんが一生かけて引っ張ってきた会社だ。世話になった奴らも大勢いるはずだ。

 嵯峨野とかは、どうなんだろうな。まあ、感情云々は関係なく、礼儀として当然参列するんだろうけど。

 と、俺は今更ながらに、雄大のことを考えた。

 そういえばあいつ、大丈夫なんだろうか。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ


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