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おやじパンクス、恋をする。#034

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

 なんだよ、なんだよ、なんだよ!

 なんであの野郎があそこにいるんだよ、そんでなんで裸なんだよ、クソ、クソ、クソ。

 俺はもうなんていうか剥かれたライチくらいに「露わ」って感じの感情に襲われた。

 白くて柔らかくてプルプルした俺の感情。そのひどく無防備な感じに、もうひとりの俺はどこかで危機感を覚えた。

 俺、こんな風に怒りでわけ分かんなくなるタイプの人間だっけ?

 だけどその直後、あのバカの後ろから彼女が現れて、そんであのバカが振り返って彼女の身体に覆いかぶさるように重なった時、俺の怒りの感情は途端に固まって、ずしりと重くなった。

 キンキンに引っ張った状態のパチンコっていうか、パチンコってあのジャンジャンガラガラのパチンコじゃなくて、Y字のフレームにゴムが張ってあるアレな。

 仕込まれるのはパチンコ玉じゃなくて、パチンコ玉以上に小さく圧縮された俺の怒りだ。

 ゴムが解放されればいますぐにあの男の脳髄にまっすぐ突き刺さるくらいの臨戦態勢。

 俺はもう、自分の状態に危機感なんて覚えられなくなっていた。

 カーテンの隙間で繰り広げられるあのバカと彼女との絡み、それもなんていうか、ドラマとか映画とかで見るそういうシーンとは違ってもっと生々しい感じの、逆に演技じみて見えるその絡み、もっと具体的に言や、あのバカが彼女の着ているシャツの裾から手を突っ込みながら彼女の唇に吸い付いているその状態が、俺の怒りをますます固くした。

 それが起こった時、涼介タカボンがどうしてたか、正直あまり覚えてねえ。

 そもそも弾かれるのを今か今かと待っていた俺は、やがて訪れたあるキッカケによって、ついに発射された。

 俺はハッキリ見た。

 あのバカの身体を押し戻し、唇を拭うようにしながら何かを言った彼女を。そして、あのバカがその太い腕を振ってその頬を張ったのを。

 ……そして、窓際に向かってよろけた彼女が、レストランから自分の部屋を覗く俺たちに気付いて、ハッと目を見開いたのを。

 次の瞬間、彼女は呆然とした表情のまま、カーテンを引いた。


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LOVE IS [NOT] DEAD. 目次へ

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