おやじパンクス、恋をする。#212
「それにしても、なんであいつ、いなくなったりしたんだろうな」
タカの焼酎お湯割りを作りながら、俺は言った。
「葬式終わってそのままドロンなんだろ? あん時は元気そうに見えたけどな」とボン。
「そうなんだよ、梶さんの事も受け入れてる感じだったしよ」
「姉ちゃんに会えなくて、寂しくねえのかな」タカが乙女チックな事を言い出して、だけど、まあ確かにな。
「でも彼女の方にも全然連絡ねえし、こっちからかけても出ねえし……」
「シスコンだっつうんだよ、いい大人が気持ち悪い」
いや涼介、お前が大人を語る資格はねえと思うぞ。
……まあ、そんなこんなでおっさん四人、ああでもないこうでもないと雄大の失踪理由を考えてみたものの、正解を知ってる人間がいねえんだ、どんだけ想像したってそれは想像でしかない。
俺らは無駄に歳を食ってる分、頭のどっかでそのことを知っていて、それでも酒を飲みながらああだこうだと話すことを続けた挙句、結局全員が酔っ払っていつもの宴会になっちまった。
ほんと、酒っつうのは偉大な発明だぜ。
タカとボンは明日も仕事だっつって終電で帰り、うだうだと残っていた涼介も二時前に眠てえと言って帰っていった。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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