おやじパンクス、恋をする。#183
涼介の様子を見て、俺の頭は状況を理解した。
つまりあれだ、やっぱりこの人らは梶商事の人で、なんで涼介を知っているかというと、あれだよ、ほら、パーティ。
梶商事が新事業のために開催したっていうあのパーティで、黒人ゲートキーパーにボコボコにされた件。あのとき会場には梶商事のメンツが揃っていたという話だった。
「おうコラ、こないだはやってくれたな」
涼介の高く鋭い声があたりに響いて、ああもう、台無し。
梶商事の面々も、あの厳つい梶さんにバッキバキに育てられてきたんだろう、売り言葉に買い言葉、「んだとコラこのガキ」「オヤジの葬式になにしに来やがった」「今度はただじゃおかねえぞ」周囲は一気に騒然とし、ああ絶対この人ら普通のサラリーマンじゃない、と思いながらその怒号を受け止めていると――
「ちょっと何やってんのよ!」
研ぎたてのカミソリみてえな鋭い声がどっかから飛んできて、おおすげえ、辺りは一瞬で静かになった。
カツ、カツ、カツとアスファルト敷の駐車場を歩くハイヒールの音。それは迷いなく近づいてきて、俺の脇を通り抜け、ゴリラのおっさんの前に出ると、喪服の腰に手を当てて仁王立ちになった。
「ちょっと、何騒いでるの!」
魅力的なでっけえケツを俺に向けたまま、彼女は冷たく、ゆっくりと言った。
そう、声の主は、喪服姿もセクシーな俺の女、梶倫子だった。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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