おやじパンクス、恋をする。#043
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
「問題? 問題って、なんだよ」
「まあ、いいじゃない。とにかく結果オーライだったってこと。キミはなんていうか、あたしというより、この子を救ったんだ」
「はあ? 何言ってんだ? 何で俺がコイツを救わなきゃなんねえんだよ」
「だから、キミがどう思っていたかは別としてね、あのままこの子が私とヤッちゃってたら、他でもない、この子自身が後悔することになっただろうなってこと」
彼女は含み笑いをして、ねえ、とバカに向かって笑いかける。
バカは苦笑いを浮かべている。クソ、何笑ってんだこの野郎。彼女の話もよく分かんねえ。
「パパの女に手を出した。そういうこと?」
ボンの言葉に、バカはギクリとした顔をした。え、ちょっと待てよ。どういうこと?
「なんだよ、どういうことだよ」とタカ。ああ、今回ばかりは俺も同じ気分だ。
「ああ、そうか。彼女の男は、こいつの親父なんだもんな」と涼介が納得したように言う。
「ええ? そうなの?」堪らず聞く俺。
「だから、物事はもうちょっと複雑なのよ」と彼女。「察しなさいよ」
いや、察っせっつたってさあ、なんていうかさあ。
「とにかく、あんたも今日は帰りなさい。あの人には黙っておくから」
まるで母親みてえな口調で彼女は言って、バカはバカで、ずっとそう言われることを待ってたみたいにコクンと素直に頷くと、俺らのことをチラチラっと上目遣いで見回して立ち上がり、玄関脇にある扉の中に消えた。たぶん、服を着るんだろう。
「なんか、結局のとこ、よく分かんねえな」涼介が首を傾げる。
「まあ、いいじゃねえかよ。トピックスとしちゃ、初恋の相手との再会ってので十分だ」とボン。
「そうだよ、よかったじゃねえかよ」とタカ。
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