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『HR』これからの採用が学べる小説

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広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を… もっと読む
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2019年11月の記事一覧

第2話『ギンガムチェックの神様』 【6】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第2話【6】 「あの、どういうことなんですか」 ビルを出て新橋駅方面に歩き始めると、俺はあらためて保科に聞いた。 「なにが」 「いや、先方が怒ってるってさっき」 「ああ」 先ほど俺

第2話『ギンガムチェックの神様』 【4】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第2話【4】 「ほんっとろくなことしないな、あいつ」 「な……」 「鬼頭さんって、高橋さんの後輩なんだっけ」 キャップの男が言う。こいつは確か、保科。 「後輩だなんてやめてよ、あんな

第2話『ギンガムチェックの神様』【3】 /これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第2話【3】 160センチ位か、ぶかぶかのスウェットにスキニーパンツ、汚れたVANSのスニーカー。キャップを後ろ前に被り、そこから肩まで長い黒髪が垂れている。性別不詳と言うか、一瞬女かと思う

第2話『ギンガムチェックの神様』 【2】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第2話【2】 奇妙な空間だった。 広さは30畳程度だろうか。向かって右側の壁に沿って長テーブルが設置され、間隔をあけて3台のPCとチェアが置かれている。左側半分はミーティングスペースのよう

第2話『ギンガムチェックの神様』 【1】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第2話【1】 総武線快速が東京駅に差し掛かってスピードを落としていく。狭い車内に押し込められて一つの生き物のようになっていた人間が、そわそわと身じろぎする。 やがて停車し、扉が開いた。いつ

第1話『イタリアマフィアの爆弾』 【8】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第1話【8】 「なんだよそれ、意味わかんねえ。だいたいお前――」 言いかけた時、デスクの上の携帯電話が震えた。今度は島田のではなく俺のiPhoneだ。 頭が瞬時に切り替わり、反射的に手に取

第1話『イタリアマフィアの爆弾』 【7】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第1話【7】 メールはシンプルな内容で、来月頭、つまり約2週間後の月曜日から研修に行ってこいというものだった。意外だったのはその行き先だ。 「HR特別室?」 初めて聞く名前だった。しかし

『イタリアマフィアの爆弾』第1話【6】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第1話【6】 社に戻ると営業一部はガランとしていた。全員揃えば三十人以上になるオフィスに、営業数名と事務員しか残っていない。皆アポイントに出ているのだろう。 「ただいま戻りました」 口の

『イタリアマフィアの爆弾』 第1話【5】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 SCENE:05 M社の自社ビルを出ると、ランチに出てきたサラリーマンやOLで街は慌ただしかった。有名な牛カツ屋の前には既に十人以上の行列ができている。並んでいる俺と同年代のサラリーマングル

『イタリアマフィアの爆弾』 第1話【4】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 第1話【4】 「え? キャンセル?」 片側に十脚以上のチェアが並んだ広い会議室。俺と向かい合って座っている女性人事は、かけていた黒ぶちメガネをゆっくりはずしながら、「そうです」と言った。