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現代の魔女に「働き方」と「ボードゲーム」と「スパイス」について聞いてみた――叶ここさん インタビュー

私たち反社会人サークルは、昨年「食べるボドゲ」こと『ゲーミングスパイス』を作りました。これは、反社会人サークルとスパイスブランドThe_MIXのコラボ作品です。

The_MIXと言われても、多くの方はご存じないと思いますが、実はスパイスを通じて人々の味覚進化を目指すという大きなビジョンを掲げているブランド。この先、反社会人サークルだけではなく、世の中の様々な尖がった存在とコラボしたスパイスを発売していくようです。その一つとして、なんと魔女とコラボしたスパイスを開発中だという。

魔女とは?!

そもそも令和の日本に魔女は存在するのでしょうか?

その謎を解明すべく、我々反社会人サークルはAmazonの奥地ではなくPCに向かって、現代の魔女、叶ここさんにインタビューを試みました。

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叶ここ@cocokanou

スペイン人の政治家付き魔術師を祖父、フィリピン人の祈祷師(マガガリ)を祖母に持つ、正統なる魔術師一族の末裔。
魔女家系の才覚は幼い頃から開花しており、幼少期から独学で魔術を学ぶなど、不思議な世界との関わりを持ち続けてきた。
先祖から受け継いだ驚異的な魔力と自然の力を生かす「ナチュラルマジック」を操り、人生を豊かに生きる方法のひとつとして魔法の世界を人々に伝える使命を担う。

スピリチュアルリーディングで相談者の前世やカルマ、守護霊、ご縁を読み取り、相談者の潜在能力を引き出すことを得意としている。

顧客の中にはアイドル、政治家、経営者、アナウンサー、漫画家、作家、俳優、スポーツ選手など著名人も多数。
本物の「魔女」として、テレビやラジオ、雑誌等のメディアやイベントへもひっぱりだこ。
占い歴13年。鑑定件数はのべ20000人以上。(2019年12月時点)

現代の魔女の生い立ちと、それが稼業になるまで

――早速ですが、どのような子供時代で、どのように育ったのですか?

私、7ヶ月くらいから記憶があるんですよ。その頃にはもうハッキリと自我がありました。ある日お母さんが久しぶりに家に遊びに来た友達と、私を放っておいて、お話をずっとしてたんです。

すごく暇で「今だったら親に気づかれないで家を出ることができるかもしれない」と思ったんです。田舎なので、夏の時期だと風通しを良くするために玄関も開けてたりするんですね。そこで、住んでいた5階の部屋から出て、1階までハイハイで降りたんですよ。

その頃から、親に対して、「こうしたら驚くだろうな」とか、「びっくりするだろうな」とか、人間の裏をかきたい気持ちがありました。お母さんはきっと、私が今いなくなるって絶対に想像していない。でもそういう現実があるかもしれないんだから、ちゃんと注意しておいたほうがいいよ、みたいに思ったんです。

――すごい教育的。

小さい頃から、大人が安全だと思っている部分に対して、ちょっと啓蒙したり、反骨したりと、あんまり可愛くない子供でした。

――世の中そんな単純じゃねーぞ、みたいな。

他人の気持ちが読み取れるということも、小さい頃からありました。

学校の先生や親が本音と建前を使い分けていることもわかりましたし、同級生が「友達になろう」と言ってても、友達という概念をちゃんとわかって使ってないっていうか、本当に仲良くなりたいんじゃなくて、なんとなく友達っていう言葉を使って繋がろうとしているところにすごい違和感がありました。友達ではなく、それは知り合いであり同級生だ、みたいなことを思ったりして、かなりこじらせていました。

――育ったのは日本ですよね?

日本なんですけど、日本人として認識されない。スペイン人とフィリピン人の血が入っているけど、スペインに住んだこともフィリピンに住んだこともない。私っていったい何なんだろう、というアイデンティティの崩壊が幼稚園の頃にありました。自分には見えるものが周りには見えていないということにも、ギャップがあったんですよね。それで社会に迎合できずにいました。

その頃から、占いみたいなことをやってました。カーテンの裏とかにみんなで集まって、ビー玉やおはじきを使って。ビー玉やおはじきは、みんな持ってるじゃないですか。

――家庭の中でも、占いは自然なものだったんですか?

母はソリティアを使って占いをしていました。

タロットもトランプもそうなんですけど、カードゲームは、賭け事の要素と占い的要素が混じってるんですよね。そういう道具を使って、単純にゲームをすることもあれば、占いをすることもありました。

――家庭がそういう環境だったから、自然に友達を占うようになったということでしょうか?

単純に、見えちゃうとか、わかっちゃう、というのもありますけどね。占う前に。

私の小さい頃の特技は、休んだ友達がいたら、休んだ友達が言いそうな言葉を、授業中とか休み時間に言い続けるということでした。「言いそう!」「似てる!」って言われるのが楽しかったですね。

その人の気持ちとか状態をダウンロードして遊ぶみたいな。ボードゲームとかでも、そういうロールプレイがあると思うんですけど、そういう遊びはすごい好きで率先してやってましたね。

――そのようなお話を聞くと、占いとボードゲームの近さを感じますね。

タロットカードって、火水土風って4元素に分かれているんですよね。いわゆる普通の4元素×10までの数字の40枚。それに加えて、トランプにもあるキング、クイーン、ジャックと、ペイジっていう4人目がいて、4元素×その4人の16枚。あとは、皆さんが知ってるいわゆるタロットカード、大アルカナと言われる22枚。死神とか戦車とかですね。それを合わせて78枚。なので、構成上かなりトランプカードに似てるんですよね。ほぼ同じ形です。

――確かに、タロットを元にしたゲームも結構ありますよね。話を生い立ちに戻しますが、おじいさまが魔術師で、といった話は、ご両親から聞かされて育ってるんですよね?

小さい時は、自分が混血だということも知らなかったんですよ。幼稚園でバカにされたりした時に、お母さんが日本人じゃないことを初めて知りました。

複雑だからか、最初はフィリピンの血が入っていることしか教えてもらえていませんでした。スペインの血が入ってることは、小学校に入ってから教えてもらいました。「ええ、そうなの?!」みたいな。

お祖父様が魔術師だということは、たぶん小学校3年生くらいの時に教えてもらいました。でも、お祖母様が「マガガリ」という祈祷師だったことは知りませんでした。メディアの取材で家系の事をいろいろ聞かれるようになったので、その時に母に家系のことを詳しく聞いたんですけど、お祖母様がホーリーマジック(白魔術)を扱うマガガリだったことは最近知ったんです。

お祖父様の話は、伝説がいっぱい残っています。天候を操っていたとか、島の魔術師の大会で競い合ってたとか、お祖母様とのデートの時に雨が降ったりすると、傘はささずに、自分たちの周りだけ雨を晴らして歩いたり、喉が渇いたらヤシの木をぎゅっと曲げて飲んだりとか。そういう話はたくさんあります。

――すごい。お亡くなりになったのはいつ頃ですか?

うちのお母さんは8人兄弟の末っ子なんですけど、お母さんが生まれてからすぐだから……。

――ここさんの親世代だと1960年代生まれくらいでしょうか。とすると1920年代とか30年代生まれくらいなんですかね。

そうですね。

――お母さまは、フィリピンで、魔術師と祈祷師の子供として育ったということでしょうか?

お祖父様がスペイン人です。フィリピンはスペイン領土だったので、スペイン人がフィリピンを統治するために来ていたのですが、お祖父様は政治家付きの魔術師でした。

――ということは、第二次世界大戦もフィリピンで体験してるわけですよね。

そうそう、そのくらいのタイミングに来たと聞きました。

――その時にご活躍をされたりとか?

お祖父様は政治的なサポートとか街づくりに貢献したようです。祖母は家族を白魔術で守ったエピソードとかがありますね。

――なるほど。戦争の時の魔術師や祈祷師の立ち位置が気になりました。

私も具体的には聞いてません。母が生まれてからすぐに、お祖父様は亡くなっているので、母もリアルに見てきたわけではないんです。フィリピンの親戚に聴きまわったらなんか出てくるかもしれないですけど。

――おじいさまの伝説的なエピソードは聞いていたものの、その影響を受けたわけではなく、自分には他人の何かがわかるという能力の実感があるから、占いをするようになったということなんですよね。

自然とですよね。「これが占いだ」と言われる前から、占っていたというか、占いという技術を教わる前から、なんとなく体感としてわかっていたような感覚ですね。

むしろ母からは、魔術的なこととか霊的なことは語ってもいけないし、それでお金を取ったりはしてはいけないよ、って小さい頃からずっと言われてました。

だから私は、ずっと無料で占いをしてたんですよ。お金を取るようになったのって、割と最近で、それまでは語っちゃいけないものだったんですよね。

――ということは、最近までは別のお仕事をされてたんでしょうか?

そうですね。芸術や教育のお仕事をしていました。さっきの話にも関わるんですけど、自分のアイデンティティーが曖昧だったんですね。褒められるのは、歌ったり踊ったり絵を描いたりする時ぐらいだったので、それで食べていきたい、芸術事を続けたいという気持ちがずっとありました。幼少期からやっていた舞台芸術を大学で本格的に学び、大学在学中からNPO法人に所属して、3年間くらい芸術系の学校の授業を請け負っていました。

――その後、占いを仕事にするようになったきっかけは何でしょうか?

芸術事だけで食べていくのはかなり厳しいというのもあるのですが、自分の力をコントロールしたり修業をしないと、私自身がこのままだと死んじゃうんじゃないかなって思ったんですね。

母もお祖父様も、この力をあまり継承させたくなかったんです。お祖父様の魔術書があるんですけど、我々が見ることができないように封印されてるんですね。だから、力があるのにコントロールの方法を知らないまま生きていて、すごい大変でした。見たくないものを見てしまったり、わかりたくないものがわかるとか。力が制御できてないような状態。

そんな自分自身の力を制御したいっていうタイミングと、芸術事だけで食べていくのもしんどいという時期が重なったときに、ある出会いがあって修業を始めるんですね。最終的にはお水だけで生活するとか、結構ストイックな修行をしました。それをやってるうちに、自分の霊力のコントロールはだいぶできるようになってきました。

その一方で、占いは、学生時代からその頃まで、10年近く無料で診ていました。でも、占うという行為自体、自分が見えてるものを伝えるということ自体は何も変わらないのに、状況が良くなっていく人と、悪化する人に分かれるなと思ったんですよ。

よくよく違いを観察してみたら、良くなる人っていうのは、本当に私から受け取ったアドバイスをちゃんと実践して、実行して、自分自身の人生をちゃんと良いものにしている。社会貢献だったり、良い方向に社会の中で循環を産んでるんですね。

悪くなっちゃう人達って、「話は聞きたい」「占い当たるの?」みたいな興味はあったり、「悩んでる!」「私の話を聞いて!」とは言うんだけれども、アドバイスを全く実行する気がなかったり、話を聞いたはいいけど自分の望んでるアドバイスじゃないからやらない、みたいな。そんな人は、どんどん悪い連鎖を起こしちゃってたんですね。

良くなっている人は、私に対価を払ったわけではないけれども、ちゃんと私から受け取ったアドバイスをきちんと受け取って、成長変化して、世界に富や喜びを還元したりしているんですね。世界に貢献している。

でも悪くなってる人は、アドバイスやエネルギーを与えてもらっても行動や思考を変えない。そうすると、いろんな人から貰ったアドバイスがマイナスエネルギーの借金のような物になってしまって、マイナスな現象が起きてしまうんですね。その現象に直面した時に、過不足ない対価を頂いておくことで、アドバイスを守らなくても悪くなるって事を避けたいと思いました。

――ちゃんと学費を払うことで勉強するみたいな感じですかね。

そうですね。霊的な修行も終わって、自分自身もある程度コントロールできるようになったということもあって、その頃から、私のアドバイスに対価をいただくという形にシフトし始めました。

――確かにそうですよね。無料だと、真面目に聞かない人はたくさんいそうな感じがしますが、そういう人は聞いても聞かなくても悪い方向に行くんですかね。

そういう人もいますけど、こっちが本物のすごい情報を与えたら、見えない負債がすごいことになっちゃうんですよ。

――何も言わないほうがマシなことがあるってことですね。

そうなんですよ。だったらお金を頂いて、過不足なく伝える。そうでなければ、何も言わないということが大事。飲み会の場とかで、「何か見えますか?」と聞かれるんですけど、にこやかにやり過ごすことにしてます。

――話は戻るんですけど、いとことかいらっしゃるんですか? ここさんの他のおじいさまの子孫も、そのような霊的な能力があるのでしょうか。

師匠と、その当時お付き合いしていた彼を連れて、フィリピンの実家に行った時の話なんですけど、フィリピンの田舎で彼がすごい食あたりになっちゃったんです。

我々は修業中、薬を摂取しない生活をしていたので結構慌てましたね。入院することになったんですが、車が来るまでの時間に、私のいとこが彼にヒーリングを行ってくれました。彼の体のいろんな部分に手を当てて、「ウッ」ってゲップをするんです。悪い患部に触れると、「ゲェェ」ってゲップが出てくる。それまで彼女がそういうことができるのは知りませんでした。急にヒーラーになったので驚きましたね。普段は家族や兄弟のお手伝いをしている女の子なので。

ヒーラーとして生活してるのではなくて、必要であればやる。だから公言をせず、お金も取らず、本当に必要なときだけ使う。だから誰がどんな能力を持っているかは緊急時にならないと分かりません。

――実は隠れて能力を持たれている方がいらっしゃるのですね。

いっぱいいると思います。うちの母も占いをできることは公言してないので。

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現代の魔女のロウドウ状況と、私たちロウドウジンへの応用

――次は労働の話をお聞きししたいです。魔女として、どのような仕事をなされていますか? 占いをしているというのはわかるんですけど、占う以外にあるのかなと。

魔女として一番多いお仕事はメディアですね。魔女について語って欲しいとか、儀式について教えて欲しいとか。

私がやっている魔術はナチュラルマジックと言って、自然崇拝の祈りなのですが、ケルト文化で大切にされていたお祈りやお祭りもします。例えばサーウィンやユールというお祭りがあるのですが、今はハロウィンやクリスマスと呼ばれています。元々はケルトのお祭りなんですが、多神教や自然崇拝の北欧のお祭りを一神教のキリスト教が乗っ取っていくのに、元々あったお祭りを吸収していくという歴史的な流れがありました。

なので、そうした元々の多神教の自然崇拝の祈りの本来の形を知って欲しくて、イベントをしたりしています。フレンチのシェフと一緒になって、当時の料理を再現したり、当時どんなまじないや祈りが捧げられていたのかをお伝えするイベントをやっています。

あとは、ほぼ受けてないんですけど、祈祷とかお祈りとかそういったもの。

子育て関係のお仕事もありました。子育て中は睡眠の問題で悩む方も多く、寝かしつけの魔法だったり、子育て中によく寝れるようになるための魔法が知りたいと依頼されました。ワークショップの中で作り上げていくので、参加者全てが違う呪文や魔法になりますね。補ったり解決する部分がそれぞれ違ったりするので。実生活に魔術の力を応用して欲しいという思いがあるので、トラディショナルなものを分かりやすくシンプルにお伝えしています。

あとは、毎日のように祈っています。聖地に祈りを捧げに行ったり。自然崇拝なので自然と触れ合ったり、聖地で祈ることは私の仕事というか、魔女としての活動ですかね。

――魔女の力で子育てをラクにするのはすごい実用的に思えます。いくらでも稼げそうな気がしますね。

実生活への応用としては、会社の福利厚生を提供しているバヅクリという会社があります。例えば筋トレ部とか釣り部とか、チームワークを良くしたりストレスフルなものをなくしていくために、ちょっと面白い福利厚生のサービスを定額で企業さんに提供している会社です。そこに実は魔法部ができまして、ビジネスマンに向けて魔法を伝える機会もあったりします。

――福利厚生だから直接的には仕事には関わらないかもしれないですけど、仕事にも役立つという感じなのでしょうか。

もちろんです。グーグルがマインドフルネスを薦めているのと同じで、メンタルを整えることは仕事にも役に立ちます。「仕事も魔術の1つだ」とアレイスター・クロウリーという有名な魔術師は捉えています。自分自身が何を達成したい、何を叶えたい、どんなふうになりたい、といった願望達成や、メンタルトレーニングの技術をたくさん魔術師は持っているので、そういったものをお伝えすることもできます。願望を叶えられるスキルというか技術です。

それは魔女というより魔術師の領域になってくるんですけど、私は魔術師の知識もあるので、それも含めてお伝えしています。男性には、魔女的な話よりは、魔術師的な話の方が納得いただくことが多いかもしれません。

――魔女と魔術師の違いがあまりよくわかっていなかったのですが、これは単なる性別の問題ではないということでしょうか?

そうですね。まず伝わる形式が違います。魔女は地域だったり、私のように家族、血だったり、ガウンと呼ばれる13人くらいの小さなコミュニティで伝わっていく。そして、書物は残さず口伝です。だからユタとか、イタコとか、そういったものに近いかもしれない。

魔術師は書物で技術や知識を残していきます。魔女は口伝で書物はありません。魔術師は、グリモワールとか、いろんな魔術書が紀元前から残っているので、それを代々伝えていく。

そして魔術はかなり体系化されていて、魔術は技術だと言われているくらいです。日本では仏教の修行に近いのかもしれないですね。こういう修行をするっていうことが、ある程度決まっている。魔女の修行は書物に残っているのではなくて、あくまでも口伝で知る人にだけにお伝えしていくという形です。

魔女という存在が誤解されていたり、情報がオープンにならないのは、口伝だからだと思います。書物が残っていないので、歴史上どんなものが伝えられたかが残りにくい体系になってます。

――なんとなく魔術師と魔女が男女の対応関係なのかと思っていたのですが、そうではなくて、女性の魔術師もいれば、男性の魔女もいるということなのですね。

そうです。女性に魔女に多いのは、かなり感性と感覚を使うからです。だからユタとかイタコさんに女性が多いじゃないですか。陰陽師とか、お坊さんとかは、知識や技術の世界なので男性が多いですね。

男性性と女性性の適性が出ているのかなっていう感じがします。

――例えば子育てをラクにしたいとか、できるビジネスマンになりたいと思った時に、魔女になることはなかなか難しいけれど、魔術師にはなれそう、という感じなのでしょうか。

技術や知識ですからね。きちんとした修行をすればなれると思います。

――魔術師になるには、適切な技術と修業をこなせば良いのでしょうか?

あと、イニシエーションを受けることですね。それでその魔術教団に参入する。キリスト教だったら洗礼を受けるみたいなことです。

――ちなみに私たちは、一応会社で働いているのですが、あまり真面目に働いていません。できるビジネスマンになりたいわけではなくて、単にラクをしたいんですよね。そういう人が使える魔術はあるんでしょうか。サボるための魔術とか。

なるほど。魔術の基本に、魔術を使わずしてできることに魔術を使うな、というのがあります。サボることは魔術を使わなくても出来るので……。

――そうですよね。でもサボったら怒られるじゃないですか。怒られないための魔術はどうでしょうか。

なるほど。例えばオーラを消すとか、悪い者からの影響を受けなくする呪術みたいなのは、もちろんありますよ。

ただそれは、魔術行うわけですから、何かしらの対価を払うわけです。サボって怒られないために魔術の対価を支払うのは、どうなんだろうかと思いますけどね。

上司に目を付けられて強く攻撃されているのであれば、魔術を使った方が良いこともあるかもしれません。でも、基本は魔術以外ことで解決できるならそれを試しますね。魔術を使う必然が生まれていないのに、わざわざ魔術を繰り出すっていうのはオススメしないかな。

――まあそうですね……。私たちは別にそこまで苦しんでいるわけではないですね。しかしそう考えると、普段仕事をしている中でも、実は魔術を使われているケースもあるって事でしょうか。

どうでしょう。魔術はやっぱり技術ですし、無意識にできることではないですね。ただ、念の力を無意識に使っている人はいますね。例えばデスパシーってあるじゃないですか。死ね死ね死ね死ねみたいな。そういう念。デステレパシー。そういうのを無意識に出している人とかいます。生霊になっちゃってたりとか。恨んだり恨まれたりは無意識のうちにあるかもしれませんね。

ポジティブな意味でもいますよ。見えない力を感じることによって危機を避けたり、良いものを引き寄せたりっていう。術ではないけど、天然自然にそれを選び取っているっていう人はいますよね。

――私は、他人が「死ね死ね死ね死ね」と思っているのか、全く分からないですけど、デスパシーを発している人に近づくと、全ての仕事がうまくいかなくなったりすることがあるってことですよね。

単純にその人が不健康になっちゃったり、実際に亡くなったりとかはあります。デスパシー自体が仕事の妨害に結びついているかは、ケースバイケースだと思います。不健康になったりすることで、仕事で結果が出にくくなるとかはあるかもしれませんね。

負の力を利用してどんどんのし上がってる人もいるので、その人が不幸になるかどうかは、その人気質次第でしょうね。むしろ悪に親和性が高い人は、悪に染まった方がビジネスが上手くいくこともあるでしょう。人生が豊かで幸福かどうかはまた別問題ですが。

――できるビジネスマンになるために、魔術や念でポジティブに物事を動かしていくことは全然あると思います。マインドフルネスも意識の高い方はやられていると思うんですけど、私たちは意識が低く、そんなにちゃんと仕事をしたくないのです。人に何かを与えたり、ポジティブに考えることって、色々な書物でもきっと似たようなことが結構語られているでしょうし、それを実践することで良い人生になるのだと思います。しかし一方で、そういうのが苦手な人もいると思うんですよね。例えば先程の、アドバイスをしても聞かない人の話があったと思うのですが、私も素直ではないので、聞かない気がするのです。そういうひねくれた奴は一生うまくいかないものでしょうか。

その話の前に、1つお答えしておくと、魔術師とか聖職者は、全員とは言わないですけど、基本ストイックな人間が多いんですよね。

本物の幸福、本物の不幸とは何かとか、ある意味強欲に心理探求したいっていう人間が多いので、ラクしたいよ!みたいなニュアンスで魔術を使おうっていうメンタルの人はあんまりいないかもしれません。

一方で、魔女は自然なんですね。無理をしたくない魂っていうのも、もちろんあって、それはそれであり方としてナチュラル。ナチュラルマジックと言いましたけど、ナチュラルなものとして、自然に生きていく。よく言いますけど、「そうでありますように」っていうことなんですよね。それが望みであれば「そうでありますように」。だからそのままでどうぞって話になるんですけど。

あなたのなりたい姿に、あなたがなっている。努力した人間は努力したいという力に向かうでしょうし、うまくやり過ごしたいという人は、別に頑張らなくてもいい。頑張らないことが、あなたの中の幸福の項目に当てはまっているのであれば、頑張ってないから不幸ですってことじゃなくて、ただただあなた自身の魂がそのようにありますね、っていうことだと思いますけどね。

ト・ヘン(※)、一者になる。神の領域に行きたがるというのもありますけど、魔女の考え方は基本的に多神教です。ありとあらゆる多様性を尊ぶので、そういうそのダウナーなものも、もちろん尊ぶ存在ですね。あるべきもののひとつの形ということだと思います。

(※)新プラトン主義のプロティノスが唱えた思想で、中世の魔術に影響を与えた考え方の一つ。中世のキリスト教神学にも影響を与えたと言われている。
我々は完全なる存在一者(ト・ヘン)から流出し生み出されたとする思想で、流出の過程を逆に辿ることができれば高次元の一者(世界の純粋なる根元)にたどり着けるという考え。
生命の木を使った魔術の修行にも似たような概念がある。

――原理的にストイックなビジネスマンの方が魔術師との相性が良いのですね。では、企業がそのような魔術師を雇用したいと思ったら、どうしたらいいのでしょうか。ちょっと魔術師雇ってうまいことやろうみたいな。

そういうのは全然ありますよ。私自身もたくさんの経営者の方を占っています。あらゆる業界に潜んでいるんじゃないですか。雇用をするというより、トップの人と組んで、いろんなことを決めていくことのほうが多いかもしれないですね。

――企業が医者を雇うケースは普通にあるじゃないですか。何故魔術師は雇わないのでしょうか。

なぜ雇わないのか……。公には雇わないということじゃないですか。

――海外のドラマとか見てると、結構社長付きの祈祷師的な人が出てきたりするじゃないですか。社長が何か悩んだ時にスピリチュアルなアドバイスをする役割みたいな。日本だとそんなに聞かないですけど。

全然そんなことないですよ。わざわざ富士山の麓まで行って、拝み屋さんのところに行って経営判断をしたり、人事の采配をする経営者の方もいます。もちろん私の相談に来る人もいるし、全然いますよ。

――実際にはいると思うんですけど、日本のドラマの中とかで見ないなという話で。

ちょっと悪者として描かれますよね。『TRICK』とかだとそういう魔術師とか祈祷師とか拝み屋とかはダーティーな描かれ方をしている。

――例えば会社が医者を雇ったら、その医者は経営者だけではなくて、社員も診るじゃないですか。経営者に付いている魔術師とかグル的な存在って、基本経営者にしかアドバイスを与えないので、医者的じゃない感じがするんですよね。産業医だったら社員全員を診るのに、なぜ魔術師は経営者としか向き合わないのか。もっとオープンに産業魔術師みたいな存在を雇うべきではないでしょうか。

でも私は会社によっては、社員さん全員見させていただくこととか全然あります。

――確かに、さっきの福利厚生のサービスはそういう感じですよね、産業医に近い。

さっきのやつはそうですね。社員さん向けのサービスです。

――なるほど。魔法や魔術は、医療と同じように福利厚生として会社と関わっていくことが多くなるかもしれませんね。

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魔女とポリティカル・コレクトネス

――先ほど、血筋とか才能はあまり関係なく、魔術教団に入って洗礼を受ければ、魔術師になれるとお伺いしました。その一方で、男性は魔女にはなれないのでしょうか。

なれますよ。

――ということは今後、保育士のように「魔女」という表現を使わないようになっていくのでしょうか。

「魔女」っていうのはどうしても差別的なニュアンスを感じる方が多いみたいです。私もずっと誤解を受けています。魔女のイメージが多様化している一方で、昔の日本でいう山姥みたいな古い魔女のイメージが残っています。

悪いおばあさんが、牛乳を腐らせるだとか、台風や嵐を連れてくるとか、子供を危険にしてしまうとか、自然現象で起こる悪いことはだいたい魔女のせいにされてたんですね。何かわからない畏敬の怖いものを山姥として捉えたりとか、鬼として捉えたりするような感覚なので、誤解がある。

魔女狩りもありました。キリスト教が北欧に進出する上で、土着の信仰はとても邪魔な物でした。

悪魔って、ヤギの角が生えてて下半身が獣で。みたいなイメージがあるじゃないですか。あれはもともと北欧神話のパンっていう神様なんですね。毛深さは森の豊さを表していたりするのですが、その山の神様を、悪魔はああいうルックスだとしてしまうことによって、邪教にする。異教徒イコール魔女にされてしまった。

特に助産師さんがたくさん犠牲になりました。助産師さんは村とか町の尊敬を集める存在だったんですよね。大切な母子の命を扱う存在ですし、薬草などの生活に大切な知識もありました。

でもキリスト教的には、キリスト教以外の人が尊敬や畏怖の念を持たれることが危険だったんですね。だからあれは魔術だ魔女だ、人間が命を扱うなんてダメだ、みたいな感じで、助産師さんはたくさん犠牲になりました。

そういう知識がある人たちや命を扱う人たちを、キリスト教の政治から反するものとして、「魔女」という言葉で排除していたという背景もあります。そういうイメージがずっと残ってるんだと思います。

――それではやはり名前を変えるべきですよね。「魔女」は、看護婦とか保母さんみたいに、ポリコレ的にも良くない呼び方じゃないですか。

私はそんなに悪いものだと捉えていません。占い師も、なんか良くないみたいに思われることはあるんですけど、私は占い師ということも魔女ということも魔術をあつかうことも占いを扱うことも、全然ネガティブに捉えていません。

――ポリコレ的にというのは、単に性別の問題だけを指していました。保育士は女性が多いかもしれないですけど、男性もいるじゃないですか。魔女も、女性が多いかもしれないけど男性もいるのであれば、「魔女」をもっと中性的な名前にした方がいいんじゃないかと思うのです。

ウィッチっていう言葉には、女性性も男性性もないんですね。一番最初にウィッチっていう言葉が日本で翻訳されたのは、シェイクスピアの『マクベス』です。

その中で、まじないをする人を指して、「異形なる三人の夫人」とか「妖女」「予言をする女」「祈祷をする女」とか、いろんな訳され方をしてたんです。「魔法師」とも訳されていて、全然「女」という要素が無い翻訳もありました。『マクベス』とかシェイクスピアで出てくる魔術を扱う存在が基本的に女性であったことと、悪いまじないを使うことが多かったので、仏教の教典にもある下品の存在である「魔女」という言葉が使われるようになりました。

もともとは性別が入っていない言葉なんですけどね。難しいです。

――やはり日本語訳を変えた方がいいですね。

そうなんですよね。でも適切な名前が思いつかないですね。単純に、「魔女」という日本語ではなくて、「ウィッチ」とか「ウィッカ」って呼べばいいんじゃないですかね。

――そうですね(笑) あと「魔法使い」って言い方もあるじゃないですか。「魔法使い」と「魔術師」は違うのでしょうか?

ほぼ一緒だと思いますけど、厳密にいうとニュアンスが違うと思います。英語ではウィザードとマジシャンっていう言葉の違いですね。魔術にもいろんな種類があります。悪魔や天使を降霊するような物だったり、自然を操る物だったり。魔法使いは火、水、土、風を扱うようなイメージ、魔術師は魔法円を使って天使や悪魔と交信するイメージでしょうか。

海外の人にマジシャンっていうと「それはなに、マジックするの?」みたいな感じで捉えられる時もあって、結構伝わらないのでウィザードと言うことが多いです。ウィザードは、日本語では「魔術師」というより「魔導士」かな。

――確かに、RPGだと「魔導師」という言い方しますよね。

「魔導士」はウィザードに近いかな。ちょっとハイクラスな感じですね。

――いずれにしても、魔女と魔術師で分けると、魔法使いとか魔道士は、魔術師側の人たちなんですね。

そうですね。魔術師と魔導師は近いかな。魔女術はあのウィッチクラフトって言いますね。マジックじゃなくて。

――なるほど。普段その辺の言葉の使い分けを意識したことがありませんでした。

自然と使ってますよね。

――そうですね。ポリコレ的に正しい「魔女」は今後私たちが考えることにしましょう。

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スパイスと人狼と魔女、あるいは次のコラボレーション

――4回も遊んでいただいたということですけど、『ゲーミングスパイス』いかがでしたか?

面白かったです。食べるボードゲームっていう名前で、もうすでにわくわくしてしまいました。

――2つのルールがありますが、人狼のルール(スパイスパイス)で遊んで頂いたのですよね。4回もやることになったのはどうしてなのでしょうか?

私はアナグマというアナログゲームコミュニティに所属しているんですけど、アナグマのメンバーで遊んだんです。アナグマのメンバーは本当にゲームが大好きなので、1時間、2時間でもやりたいぐらいでした。

何が面白かったかって言うと、人狼を当てるために味覚を表現するカードを使っているじゃないですか。カードを使うことによって表現に制限が出てくる。敢えてだと思うんですけど、あんまり味覚を表すようなその言葉がチョイスされていないので、とセンスが問われるんですね。

自身の感性で、こんなスパイスなんじゃないかなって言葉を並べていく中で、その人の新しい味覚表現、語彙とかセンスみたいなのが見えてくる。「この人は人狼じゃないだろうな」ってわかりつつも、並んだ言葉としては的確だったり、私と同じ味が伝わっているはずなのに、選んでいるカードの言葉に違和感があったりする。自分と同じものを食べている人なのに、私だったら選ばないカードを選んだりするので、何をどう感じているのか、って人によって全然違うんだって表面化したのが楽しかったです。普通だったら、辛いは辛い、苦いは苦いで伝わるじゃ無いですか。

辛いスパイスの時に「三島由紀夫vs」というカードを選んだ人がいたんです。私は言葉だけではこの人と全然話が一致してないと思ったんですけど、ゲームの後で話を聞いたら、「三島由紀夫の切腹をするぐらいの覚悟やパッションを食べ物から感じた」と言われて、「そういうこと!」と思って驚きました。

単純に人狼をするんじゃなくて、言葉を選ぶことによって、より複雑になってる。普通は言葉を制限することによって、わかりやすくなりそうじゃないですか。でもより分かりにくくなるっていうのが新しくて、すごく面白かったですね。

だからアナグマでは結構人狼が勝ってたんですよ。

――私たちのテストプレイでは、人狼はなかなか勝てなかったので、珍しいですね。

多分、語彙力とかが影響していると思うんですけど、ゲームを遊ぶ人間のレベルによって、すごい高度なゲームになると感じました。

――ありがとうございます。ちなみに、人狼は強かったりするんでしょうか?

負けたことないです。

――なるほど! 負けたことがないというのはすごいですね。さすが魔女。それはそういう能力があるので負けないってことでしょうか?

まあ、やっぱり分かりますよね。嘘ついてるとか。マーダーミステリーも含めて、正体隠匿系のゲームは負けたことない。基本、嘘ついているかどうかってのはわかるんです。

――わかっちゃうと面白くない、というのはあったりするんでしょうか?

だからできるだけスイッチ切ります。

――なるべく感じないように、ということでしょうか。

そこで出会ったゲームが面白くなくなっちゃうので、できるだけポカーンとするようにして、ゲームを楽しむモードにしてます。

――しかしそれでも能力を抑えられないとか?

まあ、逆にポカーンとすればするほど、当てちゃう時がありますよね。変に頭で考えるよりも、自分の直感に素直に従っている方が当てちゃう。神経衰弱とかもそうですけど、覚えようとするんじゃなくて、「なんとなく、これ!」みたいな。

――感覚で当てちゃうということですね。例えば、魔女同士が人狼で戦ったらどうなるんでしょうか?

それは面白いかもしれないですね。魔女とか占い師とか集めて、麻雀とかポーカーとか。

――むしろ人狼強いやつを見つけてくれば、実は魔女かもしれないとか。

何かしらあるかもしれないですよね。拝み屋とか神主とかお坊さんだったり。

やっぱりスタンド使いはスタンド使いに惹かれあう的なことは多いですね。たまたま知り合った人が、そういう仕事してたとか、全然あります。

あと貴賓室を借りて、そこに占い師を30人くらい集めて、競馬やったりするんですが。みなさん普通に勝ってますね。8連勝したり3連単出たりとか。

――それは手っ取り早い儲け方ですね。普通にテレビ番組のコンテンツになりそうです。

たまにテレビでやってますよね。うちのメンバーは結構高確率で当てる人が多いので、色々勉強になります。

――人狼でも、そういうスキルが高い人たちを集めるのは面白そうです。一時期人狼のテレビ番組も結構あったじゃないですか。ああいう番組みたいに、占い師と、祈祷師と、神主と、神父を集めて、誰が本当に嘘を見破れるのか?みたいな。全然成立しそうです。

そうですね。PRIDEみたいな。総合格闘技的な。個人的にちょっとやってみようと思います。

――ぜひそれを観戦させてください。

YouTubeの番組とかにするしかないですね。

――『ゲーミングスパイス』がスパイスであることに関して、思うところってありますか? スパイスだから良いとか悪いとか、そういう感想があれば。

私はスパイスが大好きで、自分で育てたりもしています。

魔女とスパイスというのは切っても切り離せないものなんですね。スパイスマジックはたくさんあります。ハーバルマジックもそうですけど、昔は薬として使われていたものですし。

だから私にとってはスパイスというのは親和性がありますけど、デメリットがあるとすれば、刺激物が苦手な人は単純にできないですね。

――子供が遊べないんですよね。大人でも辛いのが苦手な人や、アレルギーがある人もいますし。ちなみに、今回セレクトしたスパイスは、一般的なスパイスが多いと思うのですが、実際にマジックなどの魔女業で使われるものもあるのでしょうか?

いっぱいありますよ。ほとんど使います。ブラックペッパーは魔除けとして使ったりするんですよ。

青い瓶の中に、ブラックペッパーと、ちょっとお塩と、黒い糸をくるくるって巻いてその中に入れて、蓋を閉じとくんですね。魔的なものがいるなとか、家にお化けみたいなのがいるなと思ったら、それをパッと開けると、そこにお化けを閉じ込めることができます。そういうおまじないグッズも作ったりします。

――閉じ込めた後は……?

土に埋めてください。開けたら大変!

――『ゲーミングスパイス』は、スパイスをむやみやたらに混ぜる遊びなので、混ぜた結果、予期していない魔術的な効果が生まれることはありえるでしょうか?

ほぼないんじゃないですか。やっぱり術なので、基本ないと思います。

でも『ゲーミングスパイス』に入ってるスパイスは、媚薬効果が高いものも多いので、例えば、自分がゲームの親になった時に、好きな人とか気になってる人の分だけ、スパイスに祈りを込めて食べさせる実験なんかはできそうです。

――婚活パーティみたいな場で、狙った相手を落とすゲームになりますね。

そうですね。そういう使い方も、もしかしたら出来るかなと思います。

――効能みたいなスパイスの知識があると、『ゲーミングスパイス』を遊ぶ上でも、色々な想像力が膨らむかなと思ったんですよね。

そうですね。例えばペッパーだったら火星の守護があるとか、そういうところからカードもセレクトもできると思いますね。

――人狼の上手さでも遊び方は変わってくると思うのですが、スパイスから結び付けられる言葉のバリエーションによっても変わってきそうです。それは普段からスパイスを使っている方のほうが多いんだろうなと思いました。

そうですね。だから料理人と遊んでもいいですね。

――今回『ゲーミングスパイス』を一緒に作ったスパイスブランドThe_MIXと、ここさんがコラボして、新作スパイスを作るとお伺いしました。

「媚薬スパイス」……と呼んでいますが、まだどういう名前になるかまだ決まってません。基本的にはラブマジックのスパイスになります。媚薬というと、セックスドラッグ的なイメージがあると思うんですけど、そういうものを作りたいというよりは、例えば夫婦のセックスレスを解消するとか、妊活中の人たちが妊娠しやすくなるとか、あとは単純にモテるとか。それから、自己肯定感を高めるっていうことも大事。

自己肯定感を上げて自分自身を愛することができる儀式を日々に取り入れて欲しいという思いがあるんですね。自分自身の愛の力をちゃんと蓄えていくことで、人を愛する力を高められる、愛される力を高める、そういうスパイス。

基礎力を高めるって大切なんです。魔術を使って付け焼刃でいっぱいモテちゃったけど、結局、愛する力や自己肯定感が低いと、その恋愛は絶対壊れちゃう。相手を疑ったり、私なんて可愛くないからきっと彼に捨てられる、とか。自己肯定感が低いまま出会いだけがいっぱい来ても、あまりうまくいかないから、そういう使い方はして欲しくないですね。笑ゥセールスマンの喪黒福造みたいな世界になっちゃうので。

でもやっぱり魔術って、扱い方を間違えるとそっち側になっちゃうんですよね。能力に振り回されちゃう。

そうじゃなくて、本当に自分自身のエネルギーを高めることによって、本当の意味での幸福だったり、本当の意味での愛だったりを作っていく。The_MIXとは、まず魔術習慣みたいなものを作っていって、自己肯定感を上げていく作業だったり、自分を愛するって作業だったり、そうした作業をしやすくなる手順だったりを、どんどん伝えていきたいね、ということを話しています。

――その場合、「媚薬スパイス」という名前になるかはわからないということですが、使い方はどのようなものになるのでしょうか?

今は飲用を想定しています。

――それは、自分で飲むのでしょうか。相手に飲ませたりもするのでしょうか。

基本的には自分で飲んで、自己肯定感を高める儀式として取り入れます。でももちろん恋人と一緒に飲んでもいいです。

それに魔女って、お祝いの席で、ホットワインとかサングリアとか、スパイス入りのものをよく飲むんですね。そういうお祝いの場でシェアしてもいいです。

愛っていっても、肉欲とか愛欲だけじゃなくて、広い意味でのラブマジックだと捉えて頂きたいところもあります。だから家族愛とか、みんなでお祝いだね、愛をシェアしたいね、喜びをシェアしたいねっていう場でもちろん飲んでいただきたいです。

その場合の手順表を同梱するのですが、どういう魔法円を入れるかとか、どういうまじないを付与するかによって、種類を分けようかって話をしています。

――なるほど。やっぱり名前は「媚薬スパイス」ではない方がいいですよね。媚薬というのがセールス的にはキャッチーではあると思うのですが、ちょっと誤解を与えるかもしれないですね。

どっちかっていうとセックスドラッグ的な意味合いが強くなるかなと思います。

――非日常のものではなく、日常で使われるスパイスなんですね。

そうですね。やっぱり魔術とか魔法って、一発で効果があるというよりは、日々重ねていくことで強さを増すものなんですね。

神社でも同じです。自分がすごく大事にしている神社も、一回行って効くというよりは、氏神様は産土神様のように何度もお参りしていたりして、縁が強くなる。みんなが勘違いしているのは、パワースポットに行ったらすぐにすごいことが起こる、みたいなイメージです。整体師でも歯医者さんでもそうですけど、通って馴染みになった方がお互いにとって一番良い施術ができるじゃないですか。それは神事もそうなのかなという感じがします。もちろん初回にインパクトのある出会いもあるとは思いますが。

まじないも、そういうふうに重ねていって、慣れていくのが大事です。最初は「こんなものかな?」ぐらいの感じだと思うんですけど、やっていくたびに、自分を愛するってこうなんだとか、自分に対して幸せを祈るってこういうことなんだ、みたいなことがわかってきます。

日本人は、自分を愛する前に誰かに愛されようとして、自分を置いてけぼりにして恋愛をしようとすることがすごく多い気がします。自分を置いてけぼりしないっていうことを習慣化して欲しい。

それが祈りに大事なんですね。自分のエネルギーを整えるっていうことは、魔術師も魔女も、そしてあらゆる聖職者がまず先に自分を整えることをやってきているはずです。それを皆さんにもっとわかりやすくて、ちょっと楽しいツールでやっていただけたらいいなという感じですね。

――手軽でカジュアルな商品として、魔術を楽しめるようになるということですね。発売を楽しみにしております。本日はありがとうございました。

(2020年12月10日 Zoomにて)

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撮影: Nori
取材: @2tar, @noir_k, @Nerd_Arthur
構成: @2tar

インタビューでご紹介させていただいた新作スパイスが発売になりました!

(2021年4月26日 追記)

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