IT企業からユーザー企業のIT部門に転職して3年たっての所感

 私は今から3年前の2017年に、新卒から8年間勤めたIT企業を退職し、現在勤めている小売業企業のIT部門に転職しました。いわゆる社内SE転職というやつです。転職から3年経ち、自分の中での頭の整理という意味も含めて、転職から3年経った今の気持ち、考えを書いていきたいと思います。もちろん、IT企業からの転職を考えている人の参考にもなればと思います。

前職・現職の概要

前職
 独立系SIer 社員1000人超
 IT企業への就職を目指す就活生には悪名名高い?独立系SIerですが、社風はとても緩く、居心地は悪くなかったかと思います。8年間いたうちの6年間くらいは、金融系のシステムの開発に携わっていました。それなりの規模のシステムの一次受け、自社内開発というエンジニアとしては悪くない環境で、下流工程(プログラミング、単体テスト)から上流にかけてを年月をかけて経験できたのは、システム屋のステップとしては良かったのではないかと今では思っています。システム屋といいつつ、ITに関する勉強よりかはシステムに関わる業務の勉強ばかりしていたように思います。

現職
 小売業 社員1000人超 IT部門
 社内SEといっても様々な規模があり、小さな会社の何から何まで一人で担ってる、みたいなイメージをする人も多いかと思いますが、自分はそれなりに大きな会社での社内SEですので、少し違います。IT部門だけでも社員が数十名いますし、インフラ、アプリと、それぞれ専門の人が所属しているイメージです。自分は、主にアプリ面の開発、保守を担当しています。といっても実際の開発はベンダーに任せることになるため、担当範囲は社内のユーザーとの業務調整、要件定義、ベンダーへの発注になります。会社の業務内容は前職とは全く異なる経験のない分野のため、業務知識は皆無からのスタートでした。

IT企業とユーザー企業の違い

 一番の違いは、IT企業の目的は「システムを通してお金を稼ぐこと」ですが、ユーザー企業の目的は「システムにお金を使って効果を出すこと」です。

IT企業がお金を稼ぐロジックは、
 発注者から1億円のお金をもらって、それを8000万円かけてシステムを作り、2000万円の儲けを出す
という形ですが、それが立場が逆転してユーザー企業側になると、
 1億円を払ってシステムを作ってもらい、そのシステムで1億円分以上の効果を出す
というものになります。

 ここでいう効果というのは様々なパターンがありますが、例えば1億円かけてこのシステムを開発すれば、これまでやっていた作業が大幅に削減されて、数年分累積すれば1億円以上分の作業(人件費)が削減できる、といったものです。
 システムの内容(例えば社内の業務を担う基幹システム等)によっては、それで効果を出すという類のものではなく、そもそもそのシステムがないと会社が成り立たない、といったものもあります。こういったものは、会社経営判断のひとつになります。

 ユーザー企業でのIT部門は、社内での扱いとしては人事部や経理部と同様のいわゆる「間接部門」のひとつになります。ですので、直接お金を稼ぐことが使命ではありません。
 会社からすれば、IT部門に使うお金は"投資"の一部になります。会社に利益をもたらすための投資、または会社を円滑に経営するための投資です。IT部門の人間はときに経営者層に投資のためにこれだけのお金が必要なんだ、これだけ投資すればこれだけ会社にプラスになることができるんだ、ということをプレゼンし、社内の予算を割り当てて貰ったりします。

 また、IT企業にいてずっと思っていたことは、何をして利益を上げているのかイマイチ分からない、というのがあります。もちろんシステムを作ってお金を稼いでいるのはその通りなのですが、どんなプロジェクトがあるのか大きな会社だとよく分からないし、そのお金のやりくりも様々です。
 一方、小売業はそのあたりが明確で、目的はただひとつでモノを売ることです。モノを仕入れる、それを売る、売り上げをあげる。全社員が目指すべきものが明確なので、その分かりやすさはいいところだなと思います。

社内SEになるべき人、なるべきではない人

 ITエンジニアとして、社内SEになるというのは、キャリア選択として考える人も多いのではないでしょうか。

 まず、社内SEでなるべきではない人としては、ITエンジニアのしてのスキルを極めたい人です。先述したとおり、社内SEとしての仕事はユーザーとの調整やベンダーへの発注が主になるため、IT企業のようにがつがつ技術を使ってシステムを作っていく形ではなくなります。
 最近は内製化といって、社内システムであっても外部委託ではなく内部の人間で作るべし、という考えが流行っていますが、それでもある程度の規模の会社では現実的にすべてを社内でやるというのは不可能ですし、どうしてもIT技術の本質とは関係ないところの仕事が主になってしまいます(ただし、インフラが専門であれば話は違うかもしれません。これはあくまでアプリ開発が専門の立場としてです)。
 かといって社内SEにとってIT技術が不要かと言えばもちろんそうではなく、開発者としての経験がないとできない部分も多々ありますし、社内のシステム推進として最新の技術を追っていく必要はありますので、そういった形でのITエンジニアとしての楽しみはあります。

 また、社内SEというのは先ほど述べたように間接部門であるため、評価のされ方が非常に難しいというのがあります。どれだけ業績を伸ばすのに貢献したのか、という評価がしづらいのが原因です。
 ですので、社内SEの評価としては、いかにユーザーの要望を適切に聞くことができたか、コストを削減できたか、障害を起こさなかったか、障害対応をうまくできたか、といった内容になります。こういった面も、ITエンジニアとしては満足しづらく、不満に思う人も多いと思います。

 社内SEに向いている人としては、直接システムを使うユーザーと要件定義を通してやりとりができることに楽しみを感じられる人です。
 発注先からお金をもらってシステム開発を行うIT企業と、社内のユーザーから話を聞くIT部門では、やはりユーザーとの距離感が全然違います。ましてや、リアルタイムでシステムを使っている人の話が聞けるというのは、社内SEならではの楽しみがあります。

 また、お金を稼ぐことよりもお金を使って成果を出すことにやりがいを感じられるどうかというのもあります。お金を使って成果を出すというのは、どちらかというと研究職に近い感覚なのではないかと思います。自分の力でお金を稼ぐことに楽しみを感じる、という人にはちょっと物足りないかもしれません。

ユーザー企業に転職して

 今の仕事にある程度満足はしていますが、やはり周囲の人のITエンジニアとしての向上心、意識があまり高くないというのは不満に思うところがあります。

 それは、社内SEとしてユーザーと近い立場が仕事をしていると、どうしてもユーザー本位、業務本位の考えになってしまうというのが原因のひとつなのかなと思っています。また、具体的な作業はやはりベンダー任せになってしまうため、IT技術の(ある程度の知識は必要だけど)深いところまで知っていなくても仕事ができてしまう、というのもあります。

 ITエンジニアとして腐ってしまわないように、意識して新しい知識を吸収していかないなと思っている今日この頃です。

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