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アンタークティカの小さな冒険家たち

人間が住んでいる場所よりもずうっと南のほうに、アンタークティカという国がありました。そこは人間の国よりもずうっと寒いところで、ほとんどの場所が雪や氷におおわれていました。

アンタークティカには、大きな島が1つと、小さな島がたくさんありました。島やそのまわりの海には、ペンギンの仲間や、アザラシの仲間や、クジラの仲間や、そのほかにもいろいろな生き物が住んでいました。

このお話の主人公アディは、アンタークティカに住んでいるアデリーペンギンです。

アディの家はアンタークティカの大きな島にありました。アディは好奇心旺盛で、いつも島のあちこちを探検していました。天気がいい日は泳いで近くの島まで遊びにいくこともありました。一人でいくこともあれば、友だちと一緒にいくこともあります。人なつっこい性格なので友だちはたくさんいました。特に仲がよかったのは、コウテイペンギンのネロ君と、マカロニペンギンのジョヴァンニ君です。

ネロ君はアディの家のすぐ近くに住んでいました。アディより少し年上ですが、小さい頃からいつも一緒に遊んでいました。兄貴肌で責任感があり、それに体も大きいので、アディや他の友だちに頼りにされていました。

ジョヴァンニ君はアディと同い年で、少し離れた島に住んでいます。ジョヴァンニ君がアディの家に遊びにくることもあるし、アディがジョヴァンニ君の家に遊びにいくこともありました。

三人はよく一緒に遊んでいました。ある日、三人で遊んでいるときに、ネロ君がジョヴァンニ君に言いました。

「なあ、ジョヴァンニ。何かおもしろい話はないのかい」

ジョヴァンニ君は三人の中で一番物知りでした。ジョヴァンニ君の家の近くには、ときどき船で人間の観光客がやってきます。ジョヴァンニ君はいつもその船に乗り込んで、こっそり人間の話を聞いているのです。そして、おもしろい話を聞いたときはいつもアディたちに教えてくれました。

「そうだ、ネロ君。おもしろい話があるよ。このあいだ人間が話していたんだ。地球の裏がわにはアンタークティカみたいな国があるそうだよ。ここと同じくらい寒くて、ここと同じくらい雪と氷がたくさんあるらしいんだ」

アディは知らないところに行くのが大好きでした。島の反対側に人間の基地があると聞いたときも、すぐに見にいきました。少し離れた島にヒゲペンギンというペンギンが住んでいると聞いたときも、すぐに泳いで会いにいきました。そのような情報は、たいていジョヴァンニ君が教えてくれます。だから、今日のジョヴァンニ君の話を聞いたときも、アディはすぐにこう言いました。

「じゃあ、みんなで行ってみようよ」

ジョヴァンニ君は少し困ったような顔で答えました。

「それがねえ、ものすごく遠くて、とても泳いで行ける距離じゃないみたいなんだ」

「へえ。遠いって、どれくらい遠いのかな」

「その人間は『2万キロ』とか言ってたけど、それがどれくらいの距離なのか見当もつかないよ」

「ふうん。そうだ、ジョナサン君に聞けば何かわかるかもしれないよ。ジョナサン君はずいぶん遠くまで飛んでいくって、前に言ってたから」

ジョナサン君は、キョクアジサシという種類の渡り鳥です。毎年夏になるとアンタークティカのアディたちが住んでいる場所の近くにやってきます。そして数か月間そこで暮らすと、またどこかへ飛んでいってしまいます。

ジョナサン君がアンタークティカにいる間は、よくアディたちと遊んだりしていました。今はちょうどジョナサン君が来ている時期なので、三人はすぐにジョナサン君のところに向かいました。

(続く)

めかぶは飲み物です。