【フースラーメソッド】クソ難解な「うたうこと」を、一度真剣に解読してみる_呼吸法(息を吐く方法その1)_Part1/?

どうも、筆者の賀茂茄子です。

本記事は記事全体で言うと、その2になります。

前回の記事は、まあ無理して読むレベルではないかと思います。前置きだったのでね。一応リンクを貼っておきますが。

ちなみに前回も書きましたが、ブログ管理人は発声に関してプロではありません。今現在頑張って練習しているので、皆さんと一緒に上手くなっていきたいと思っています。

※以下言い切り口調になります。


前回

前回の記事を読んでいない人に向けて

※この項目は、前回の記事を読んだ人は読まなくてOKです。

フースラーメソッドとは、フースラーが執筆した「うたうこと」に記載されている、発声に関する手引書のことである。

発声を学ぶ上で非常に重要な事柄が記載されている一方、日本語訳の不十分さ、原著(英語orドイツ語版)自体の文章構造の難しさにより、理解する前にほとんどの人間が挫折する一品でもある。

そんな難解な「うたうこと」を解説した「F・フースラーは「歌声」を'どのように'書いているか」を、さらにわかりやすくかみ砕いてまとめてみたのが本記事群である。

※特に断りのない限り、「うたうこと(日本語訳)」=原著
「F・フースラーは「歌声」を'どのように'書いているか」=解読本と呼びます。


本記事で言いたいこと

今回の記事では、呼吸法を書く。本当はもっと前置きを書きたいのだが・・・それを書いたって、読む側はつまらないはずだ。

※具体的な方法論を書く中で、逐一フースラーの考え方も記述していきますね。


①フースラーの言う、正しい呼吸の特徴

まずフースラーの説く呼吸法の特徴を、項目にして述べる。
1)吐く息に特に注目する
2)吸う息は人体の反射で自動的に行われるので、意識する必要はない
3)1の方法のみを練習することは非常に大切な事柄だ。
④ただし③の方法だけそれだけをずっと、それだけに注意して練習しても、本当に求める発声にはつながらない
EX)呼気法(呼気器官の覚醒)を身に着けることが、全ての基本になる。

以上だ。またフースラーは

やってはいけない呼吸法

について、これでもか、というほど述べている。こちらもしっかりと理解することも大事である。※別記事でそちらも記述します。

※ちなみに先に言っておきますが、この呼吸法の練習は、歌を歌い続ける限りずっっっっっと練習し続けてください。

1回練習して見につく代物では決してありません。サボるとすぐ衰えるよ?


②フースラーの言う、正しい呼吸を行う方法

タイトルに「呼吸」と書いてはいるのだが、ここからは全て「吐く息」と書かせていただく。その理由は、これからの説明で理解してもらえると信じている。

では、フースラーの言う正しい方法を書く。なお立って行うことが推奨されているので、それにならう。


Ⅰ:まず立つ(原著には書かれていないが、本ブログ管理人は軽く足を広げる方がやりやすいと感じる。)

Ⅱ:背筋を上に伸ばし、次に首筋を伸ばす

※原著には書かれていないが、あまりにも上を向きすぎると、変に力が入るので良くないと管理人は感じる。あくまで伸ばすことを意識する。なお伸ばすことが重要だ。背中に思いっきり力を入れたりするのはNGである。)

Ⅲ:Ⅱの動作を行うと、自動的(←超重要)に下腹が引っ込む動きが起こる。この動きに連動して、息が自動的に吐かれていく。

Ⅳ:背筋(と首筋)を伸ばす動作を続け、頭が高い位置に来ると、自動的(←重要)に骨盤が動く。※動く方向は、太ももの骨を軸に前に行く。またこの時もⅢと同じように、息が自動的に吐かれていく。

Ⅴ:背筋を伸ばすのを緩めると、横隔膜の反射で自動的(←超重要)に息が体の中に入ってくる。※なお吸うのは口で行います。

※非常に下品な表現で申し訳ないが、Ⅳの骨盤の動きは、S〇Xの時に男性がアレを突っ込むときの方向、というのがわかりやすいとブログ管理人は考える。

※後述するが、自動的というのがポイント。意識して下腹を引っ込めたり、骨盤を前に持って行ったり、息を意図的に吸う行為は必要は一切無い

※参考:解読本 P.185および、原著 図48~50


方法は以上。で、この方法がなぜ良いのかというと

●胸郭(肋骨がある部分)の硬さが取れる。

●「喉頭が吊り下げられている筋肉群」と「吐く息を司る筋肉群」が協調し、連結する。これにより非常に良い発声の基盤ができる。

●歌を歌うときに邪魔になりがちな「舌の筋肉」や「舌にある舌骨にくっついている筋肉」達が、歌うときに邪魔してこなくなる

2つ目に関しては現状意味不明かと思うが、ここで述べると本筋から反れるので、別記事で詳しく記載する。

今は声帯をコントロールする筋肉と、息を吐く筋肉が上手い事連結して、いい発声をする準備ができる、と認識すればOKだ。

ここまでがフースラーの言う正しい呼吸法である。

~筆者のメモ(特に読まなくて良いです)~
上に書いた「吐く息を司る筋肉群」は、本当は「呼吸器官」と書くべきなのですが、ややこしいのでこのような表現にしました。呼吸と吐く息の使い分けがめんどくさすぎる・・・。



③②で述べたことを、きちんと説明する

さて、一つ上で書いた②について色々と反論があると思うので、順番に解説しておく。

その1)なぜ吐く息ばかりに注目するの?吸わなくて良いの?

まずはこれだ。ほとんどの読者が感じている事だと思う。管理人も最初はそう思った。

日本の音楽教育を初め、歌唱練習において「呼吸」は非常に重要視されている。「しっかりお腹に息を入れろ」「腹式呼吸が全ての基本だ」のようなフレーズは、ほぼすべての人が聞いたことがあるだろう。

ではここで質問。

なぜ(昔の私を含め)皆は歌を歌うとき、吸う息を大事にしているのだろうか?

「胸式呼吸になると体に力が入ってしまうから」「息を吸わないと歌っている途中で途切れるから。」という回答が一般的だろうか。

では追加で質問をしよう。

あなた達は歌を歌うとき、多かれ少なかれ息を吐きながら歌っているはずだ。吸いながら歌唱する人など非常に限られているし、そんな歌唱法を身に着けても特にメリットはない。

ではなぜあなたたちは、歌う時に'息を吐くこと'に注目しないのだろうか?

百歩譲って「吸う息が大事だ」と主張することは良いだろう。私も昔はそれを信じて疑わなかったし。

だが吸うことばかり注目して、吐く息に注目しないのは、明らかに合理的ではない。声が出るのは、いつだって息を吐くタイミングだ。


その1.1)フースラーはなぜ吐く息に注目したの?

ではフースラーはなぜ吐く息に注目し、吸う息は気にしなくていいと言い切った理由を述べる。

それはフースラーが「誰でも絶対に再現できる方法を」模索したからだ。もっと言うと、

人間の体の反射(自動的に起こる現象)を利用した方法

を採用したからだ。だから原著には人体の解剖学めいた解説が死ぬほど載っているのだ。

※フースラーは一貫して、「全ての人は歌う能力がそもそも備わっている。でも現代人はその能力を使う筋肉が衰えているから、練習して呼び覚ましてあげないといけない」と、原著で死ぬほど述べています

※参考:原著 P.9~12など他多数。

一部の致命的な体の欠陥などが無い限り、「背中と首筋」を伸ばすと、お腹の筋肉は「自動的に収縮」する。さらに伸ばしていくと、骨盤が「自動的に前に」出て、さらにお腹の筋肉が「自動的に収縮」する。

これに連動して息が勝手に吐かれていく。この動作は自動で行われるので、胸付近に無駄な力が入らない。つまり

背筋と首筋を伸ばすという「誰でも再現可能」な方法で、胸に力を入れずに息を吐くことができる

と言っているのだ。

※参考:読解本 P.188~199

そしてここからがさらに重要だ。

横隔膜、というワードは聞いたことがあると思う。息をコントロールをする大事な器官の一つだ。横隔膜(正確に言うとそれに付随する緊張筋)は、

肺の中の空気量が「多い」と緊張性が「低い」状態になる
肺の中の空気量が「少ない」と緊張性が「高い」状態になる。

という、これまた自動的に発生する、人体特有の特徴を持つ。

よって息を吐いて「肺の中の空気が少なくなり、緊張性が高くなる」と、「下向きに引っ張る力、つまり息を吸う力」が自動的に高まる

よって背筋や首筋を伸ばしている状態から緩め吐く行為をやめると、

自動的に息が体の中に入ってくる

この吸う力は自動で反射的に行われるので、無駄な力を一切加えずに息を吸うことができる

ということなのだ。

参考: 解読本 P.180~181


再三になるが、この項目における練習は「背筋と首筋を伸ばす」事と「伸びを緩める」事だけだ。

逆に意識して息を吐いたり、息を吸うことはご法度である

歌を歌っている時、どれだけ出しにくい音域でも、どれだけ大きい音を出したいと思ってもどれだけしんどくてもその他あらゆる難しい歌唱法であっても、(少なくとも発声の練習中は)上記の方法から外れてはいけない

それを本当に注意してほしい。と言っても初めは筋肉の癖が表面に出てきてしまうと思う。これを直すには、ひたすら上の方法を練習するしかない

というよりもこの練習は全ての発声の基礎となるので、歌い続ける以上、一生涯にわたって練習しなければならない事柄である。

ブログ管理人は日常生活、例えば日常で歩いている時などでも、この息を吐く練習を意識的に行っている。

ちょうど鬼滅の刃であった、常に全集中の呼吸を続ける、常中のようなイメージだ。ちょっとやりすぎのように感じるかもしれないが、それくらいしないと、衰えた吐く息に関する筋肉群はすぐに衰えてしまい、使い物にならなくなってしまうだろう。



その1.2)え、原著では「息を吐く練習」のみに時間を使ったらだめって書いてなかった・・・?

ここからは原著「うたうこと」を読んだことがある人向けの話だ。といっても最後の結論は重要なので、全員しっかりと読んでいって欲しい。

原著において、以下のような表現がある。

「声を出さない呼吸練習は限定された価値しかないから,それにあまり多くの時間を空費してはいけない。」
しかもこれ、原著ではご零寧に全ての文字に●で強調されている。

で、ここに書いてあることを、以下のように理解する人がいる。

"じゃあ呼吸練習はちょっとだけすればいいんだね!"

当然そんなことはない

声を出さない呼吸練習は、間違いなくしっかりと練習する必要がある。ただしそれだけを、それだけを行っても、あまり意味がないと言っているのだ。

これを比喩表現を使って表すと、大工が「一生家の基礎を固めている」状況であり、「柱を立てて屋根を含めた他のパーツと連結することができていない」状況であると言える。


少し長くなるが解説したいと思う。

先ほどから少し述べているが、フースラーは「全ての人が歌う能力を持っている」一方、「その能力は衰えているので、練習して使い物になるレベルになるまで呼び覚まさないといけない」と主張している。

原始時代、人間は群れで行動をしていた。当然コミュニケーションと取ることは必須であったはずだが、その頃には「言葉」があまり発達していなかった。

そんな中でも人間は、声の「抑揚」「大きさ」「音色」などを巧みに使って、仲間に周囲の危険性を知らせたり、狩りの場所を知らせたり、楽しみや悲しみなどを仲間と共有していた。

そう、これは現代の歌の原型だ。歌は言葉(言語)より先に生まれたのである。

その原始時代に生まれた歌う能力は、現代になっても失われず、遺伝子を通じて全ての人間、ホモ・サピエンスに繋がってきているのである。これはまぎれもない事実だ。

また原始時代の人間は、今の人間よりも遥かに声を操る能力が高かったはずだ。なぜなら言葉が存在しないので、「声を巧みに操れないとコミュニケーションがまともに行えない」からである。


一方現代はどうかというと、「言葉」が発達してきているため、「感情」などを表現する時、言葉(語句)を使えば表現できてしまう。よって

声を操って感情を表現する必要性がかなり薄く、その能力を持ってはいるが、確実に衰えている

のだ。これは50年以上前、フースラーが生きていた時代からそう言われていたのだ。現代に当てはめると、この衰えはさらに加速していると考えられる。

話を戻す。上記のような理由により、衰えた「息を吐く筋肉群」を元の水準に戻すことが歌唱では非常に重要であり、それは並大抵の努力では到達できない、という結論になる。


だから声を出さない息を吐く練習をしっかり行う必要があるのだ。具体的には以下の水準に到達するまで、一生涯にわたって練習し続けることが必要になる。

●喉頭(声帯を動かす筋肉などを含めた、喉全体の事)が、吐くことや吸うことによって邪魔されることなく、自由になる

●懸垂筋としっかりと連動できる。※懸垂筋は、後日解説します。

●息を吐くための筋肉群が、先ほど述べた息を吐くときの運動を、個別ではなく一瞬で実現できる。※これ非常に重要です。体に染み込ませないとダメ。

これが本項目で言いたい主張その1である。


次だ。声を伴わない呼吸練習のみ行うことは大事だが、そればっかりを行うことは駄目である。

それはなぜか。発声に重要な要素として、先ほど述べた「息を吐くための筋肉群」と、「発声器官(声帯やそれを動かす筋肉群など)」、この2つが上手くかみ合って初めて良い音色が奏でられる。

だから息を吐く練習に合わせて、「声を出し、声帯を動かす筋肉を動かす」練習をすることも重要なのだ。※その方法はアンザッツの項で別途解説予定。

というよりももっとシンプルに言うと、

声を出す練習の際は、息を吐く練習を'常に'意識して行う

必要があるのだ。そうやって日々練習をする中で、徐々にではあるが「息を吐く筋肉群」と「発声器官」が発達+連動し、より良い発声につながるのである。

これが私が本項目で主張したい事その2である。


その1.3)実際に声を出すとき、息を原動力としてはいけない

注:ここはかなり難しい話になりますので、次回の記事でしっかりと解説します。

さて、発声の際に「息を吐く筋肉群」を鍛えることは重要である、ということは理解して頂いたかと思う。

ただしとても気を付けなければいけない事がある。歌を歌う時に

吐かれた息は「声帯を動かし」たり、「声帯を動かす筋肉の働きを助け」たり、「振動を増やし」たり、それらの「弾力性を増やし」たり

しない

ということだ。
もうこの時点で「はあ??????????????」

と思った読者も多く要るかと思う。

詳しい話は次回に回すが、現状はこの事だけ覚えていって欲しい。

声を大きくしたい、高い声を出したい、などを思ったとする。だが全ての音には適切な息の量というのがあり、息を多く吐いたからと言って、それらが実現できるわけでは決してない

という事を。

※繰り返しになりますが、次回の記事で詳しく説明します。


次回へ続きます

さて、まだまだ書きたいことはいっぱいありますが、長くなったのでこのへんで。次回も呼吸法について非常に重要な事を書いていこうと思います。

どっかで解説画像作らないとなあ・・・。文字ばっかりだと読むのしんどいし。

ではまた。

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